リアル脱出ゲームと心理学
リアル脱出ゲームは、心理学が重要な役割を担う今人気のアクティビティーです。このゲームでは、部屋に閉じ込められたグループが、そこから脱出する鍵を見つけなければなりません。鍵を見つけるためにはヒントを辿っていったりパズルを解いていかなければなりません。そこには時間制限もあります。
このゲームでは心理的プロセスが身体的な活動や周りとの協力といった要素と組み合わさります。また、このような活動は、(少なくともすぐには)一人では解決できない問題を、チームワークが解決してくれることを証明してくれます。さらに、他人を信頼して互いに協力し合うことが私たちには必要であることに気づかせてくれるのです。
リアル脱出ゲームは人々の協力とコミュニケーションを高めてくれます。
リアル脱出ゲームでは何が起こるのか
リアル脱出ゲームは、自らが探偵となって調査していく体験ができる別世界へと私たちを運んでくれます。まず、参加たちはそれぞれの部屋ごとに異なる物語を聞くことから始めます。ほんの数秒で、自分がその物語の主人公になったように感じられます。そしてほとんど気づかないうちに、仲間とともに脱出というミッションを遂行することになるのです。
このようにしてゲームは始まり、60分以内に部屋から出る方法を探し出さなくはいけません。脱出のためのヒントは、テーブルの下、本の中、引き出しの隠し底など、あらゆるところに隠されています。効果的な戦略の一つが、グループ内でタスクを分担することです。そうして見つけたヒントの数々を書き出すと、状況が進展していきます。
リアル脱出ゲームに参加すると、自信を高めて自尊心を育み、自己批判や創造性も促進してくれます。
リアル脱出ゲームは当初、大人用のゲームとして開発されてましたが、今では大人同伴であれば14歳以上の子供でも参加可能です。このように、リアル脱出ゲームは様々な年齢の人々が一緒に楽しめるゲームとなっています。また、子供専用のリアル脱出ゲームも存在しています。
脱出ゲームの起源
脱出ゲームは初め、パソコン用のゲームとして誕生しました。その後、当時のパソコンの画質の低さに変わって、会話ゲームが作られました。このゲームでは静止画像が表示され、状況や登場人物とのやり取りは文章で書かれていました。その後、複数の選択肢が表示され、状況に応じてプレイヤーが決断を下します。どの選択肢を選ぶかで、ゲームの展開が変わっていきました。
このような会話ゲームの多くは、大きな意味で脱出ゲームと言えます。ゲームの中で参加者たちは自分やお姫様の命を守ったり、刑務所を脱出したり、魔物を倒すための選択をしていきます。これらのゲームは時ともに徐々に進歩していったのと同時に、今日のテレビゲームの素晴らしいグラフィックスなどのせいで、ある意味で本来のエッセンスが失われていっているとも言えるでしょう。
しかし、スマートフォンの普及とともに、このようなゲームの形式が再び人気を上げました。実際日本では、2008年に初めてリアル脱出ゲームが行われました。
脱出ゲームと心理学
最初のリアル脱出ゲームは、アッテイラ・ヘルツェグによって、ハンガリーのブタペストで行われました。彼は、パラパークと呼ばれる、制限時間内に参加者グループが脱出方法を見つけるゲームを考案したのです。
そしてアッテイラ・ヘルツェグは、このゲームをデザインする上で、心理学者のミハイ・チクセントミハイのフローを参考にしています。
フローとは、人がその活動に完全に没頭して楽しんでいる時の状態です。人がこの状態にある時、時間が短く感じられ、行動や思考、体が自然と動き続けます。フロー現象は、タスクや活動の難易度と参加者の問題解決力のバランスが取れた時に生じます。
フロー理論によれば、自らの楽しみのために何かをする時、自分の能力と問題とのバランスが取れていると、人は全てが流れるように感じる精神状態に達するといいます。この状態では、時間がとても速く動いていくように感じ、様々なアイディアが自由に頭の中に浮かんできます。
「不可能と思わなければ、より多くのことが可能になる。」
-ヴィンス・ロンバルディ-
リアル脱出ゲームにおけるフロー
リアル脱出ゲームに参加した人の多くは、チクセントミハイのフロー理論が説くように、フローを感じたと言います。また、全てのリアル脱出ゲームは、参加者が楽しい時間を過ごしながら問題に挑戦できる場です。だからこそ、鍵を見つけられるかどうかを問わず、リアル脱出ゲームは楽しいものなのです。
全ての工程(引き出しを開ける鍵を見つけることやパズルを解くこと、鍵を開けることなど)において成功感を感じられるため、ゲーム中に不安感を感じることはなく、課題に挑戦し続けることができるのです。
「成功することの秘訣は、成果を心の中に思い描くことだ。」
-ヘンリー・デイヴィッド・ソロー-
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Heikkinen, Outi and Julia Shumeyko. “Designing an escape room with the Experience Pyramid model.” Haaga-Helia University of Applied Sciences. 2016. https://www.theseus.fi/bitstream/handle/10024/112798/Thesis-Heikkinen-Shumeyko.pdf?sequence=1