神経症や精神疾患の防御メカニズム
防御メカニズムは自然な心理的プロセスです。不安や内的・外的危険、ストレス要因から身を守るためにあります。精神的衝突に対する個人の反応と内的・外的ストレス要因を仲介するのが、防御メカニズムです。
神経症と精神疾患は「同一」であることもありますが、それを動かす防御メカニズムは異なります。現実と現実の構築の仕方の関係に違いがあります。例えば、神経症では固執への反応により幻想が生じます。精神疾患では、初めに否定されたものが回復を求め、完璧な代替が生じます。
「表現されない感情が死ぬことはない。生き埋めになり、後に、より醜い状態で姿を現す」
神経症の防御メカニズム
抑制
心は、不安をつくる思考が意識の中に入るのを防ぎます。初めにギアをあげる、もっとも基本的な防御メカニズムです。
置換
不安を伴い、耐えづらい真の欲求を、受け入れやすく、不安の原因でないものに変えるのが置換です。この防御メカニズムで、特定の恐怖症が説明できます。例えば、自分が汚いと感じながらそれが恥ずかしくて口にできない時、嫌悪感や恐怖を代わりにゴキブリに向けることがあります。
同一化を元にした神経症の防御メカニズム
同一化
憧れの人の特性を適用することにより、価値観を高める傾向がこの心理プロセスに含まれます。
投影的同一化
メラニー・クラインはこの防御メカニズムを、コントロールしたり、害したり、処理するため、自分を(一部または完全に)何か他のものに入れようとする幻想だと説明しています。
加害者との同一化
アンナ・フロイトとフェレンツィはこの防御メカニズムについて記しています。不安を引き起こす人の性格を自分にうつします。被害者から加害者になるのです。
投影
自分では認識していない、不安をつくる性格を人や物に投影するメカニズムです。この防御メカニズムは、精神疾患、神経症、倒錯にみられます。
取り込み
フェレンツィは、この防御メカニズムを、本当の自分や自分が本当に信じるものと関係なく、人の性格や信念を適用するものだと説明します。例えば、うつ病の人は、人の態度や思考を適用することがあります。
これらの「健康的」なバージョンは、同一化です。望ましいと思う人の一面を適用します。しかし取り込みは、噛まずに飲み込むようなもので、内なる衝突が生じます。
衝動的変遷を元にした防御メカニズム
反応形成
「受け入れられない」思考を抑圧するメカニズムで、その反対を通し表現しようとします。抑圧されたうつを隠す躁病にこれがみられます。
置換
倒錯を抑圧し、より受け入れやすいものに置き換えるメカニズムです。こうすることにより、禁じられた快楽を密かに満たすことができます。例えば、恋人にふられたけど、感情を抑えられない人が、アレルギー反応を示すなどです。
昇華
受け入れられないものや活動を、より社会的で倫理的なものに変えようとします。
合理化
不安を生み出す合理的な正当化、思考や行動です。合理的、理想的正当化により、真実よりもっともらしい理由をつけます。これは、その影響の体系的な回避ではないという点で次の知性化とは異なります。
知性化
コントロールしようと、衝突や感情を論理的に変化させようとします。つらい出来事の感情的孤独と合理的説明が合わさったものです。
衝動を抑制したり覆う防御メカニズム
隔離
動揺を生む思考や感情をその他から隔離するメカニズムです。こうすることにより、この思考や感情に気づきつつも、連体的には繋がりません。例えば虐待の被害者である子どもは恐怖を感じますが、恐怖と虐待の関係が分かりません。
妥協の形成
修正や偽装された願いや抑圧された考えの意識的なカタチです。夢、症状、芸術的表現の一種として現れます。
帳消し
フロイトは、人がすでに行ったことを、積極的になかったことにすることを帳消しと呼びます。思考や状況がなかったかのように振舞います。
衝動的変形
衝動を反対のものに変形させます。例えば、好きな人が自分の元を去った時、その愛が憎しみへと変形します。愛した人に憎しみを感じます。衝動のカタチは変形しますが、その対象は変わりません。
精神疾患の防御メカニズム
否定
フロイトは、取り消しや拒絶ではなく、この表象とつながる事実の知覚を否定することにより、嫌な表象を消去することだと言います。
分裂
決別や死に関連する不安に対する精神疾患の防御メカニズムです。邪魔にならない事実とは、どこか繋がっている状態です。そうでありながら、現実との接触を失い、ストレスの多い面はすべて拒絶します。また、必要であれば、新しく、より落ち着く、望みやすい事実を再構築することもあります。
イマーゴ分裂
喪失のストレスと闘い、嫌な表象を片脇に置く限定的なメカニズムです。例えば、現実の悪い部分を外部に投影し、それと接触を失わない人のことです。切除した部分は、現実との接触を失うわけではありません。
拒絶
子どもが母親と自分を区別する時に、本来の意味を拒絶することです。これにより子どもは、今ある言語の世界で主語にならず、精神疾患を患いやすくなります。
防御メカニズムは、防御機能のレベルによりお互いに関連性のある様々なグループに分類されます。神経症では、防御メカニズムにより現実と繋がりつつ、耐えられない現実から自分を守ります。
精神疾患では、現実はストレスが多すぎてそれに耐えることができません。そこで、防御メカニズムが働き、望ましく想像できる現実とのみ繋がります。その他の現実とは接触を避けるため、精神的安定をもとめ、不安になります。その結果、幻想を通して、精神的安定を得るのです。