ソロモン王のパラドックス:自分への助言が難しいのはなぜ?

ソロモン王のパラドックスとは基本的に、人は他人の問題について考えている時の方が賢くなれる、ということを指摘している概念です。おそらくあなたも、他人に対して良い助言を与えることの簡単さに反して、自分自身の問題について何をすべきか判断することがいかに困難であるかにはお気付きのことでしょう。かなり多くの人がこの現象を経験します。なぜなら、結局は自らの試練に立ち向かうことの方がよっぽど大変なことだからです。
ソロモン王のパラドックス:自分への助言が難しいのはなぜ?
Valeria Sabater

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Valeria Sabater.

最後の更新: 21 12月, 2022

ソロモン王のパラドックスとは、多くの人に馴染みのある行動を定義づけた概念です。この言葉は、助言を与えることを他人に行う場合、人は特別上手に行うことができるという状態を指しています。誰もが他人と結びつき合うための素晴らしい性質と精神的な豊かさ、そして共感力を持っており、投げかけるべき適切な言葉を見つけ出すのも簡単です。しかしながら、自分自身のこととなるとその能力は働かなくなってしまいます。

つまりソロモン王のパラドックスとは、昔からよく言う「私の最善の助言は他人に与える助言だ」という状態を完璧に言い表したものなのです。現実と向き合ってみましょう。他人の世話を焼き、その人の立場に立って行動することの方が、自分自身に関する責任を負うことよりも簡単ですよね。また、自らの行動に責任を持つことよりも他者の世界について考えることの方がよっぽど面白いことでもあります。

ご覧のように、もしこの現象があなたにとっての最大の問題なのであれば、そしてもし他人の親友にはなれるのに自分自身に対しては最悪の敵になってしまうのであれば、解決策が必要です。実は、この興味深い、けれど非常に多くの人に見られるパラドックスを変えるために役立つストラテジーが存在するのです。

ソロモン王のパラドックス

ソロモン王のパラドックスとはどんなもの?

ソロモン王と聞くと、古代の賢者を思い浮かべる人が多いでしょう。宗教関連の書物によれば、当時の人々はただ彼に助言を求めるためだけにとても長い距離を旅したそうです。彼は独創的で明晰な頭脳を持っていたために大きな成功を収め、名声と賞賛を獲得しました。

ただ、他人にアドバイスをすることに関しては抜群の才能を持っていた彼ですが、彼自身は美徳に欠けた不適切なライフスタイル送っていることでも知られるようになりました。好ましくない判断を下してしまったことは一度や二度のことではありません。また、お金や女性たちには目が無い人物でもありました。そして最も重大な彼の過ちは、唯一の息子の育て方を間違ってしまったことでしょう。そのせいで彼の王国は滅ぼされてしまったのですから。これらのエピソード全てが、ある意味でかの有名なソロモン王のパラドックスの説明になっていると言えます。

なぜ人は他人の問題に向き合っている時の方が自分の問題の時よりも賢くなれるのか?

誰かが困っている時に優しく手を差し出して支えてあげることには、多くの人が慣れています。こういった人々はとても献身的ですし、的確な助言を与えてくれます。事実、提案してくれることや勧めてくれる内容は、その人の積極性を後押しするような理論によって生み出されたものなのです。人生にありがちな試練に一人ぼっちで挑まねばならないような人々にとって、こういった人は非常に頼り甲斐があります。

しかしながら、他人の悩みに対して発揮する知性や優れた論理力などは、自分自身の問題のことになると全て失われてしまうのです。さらに、ソロモン王のパラドックスに苦しむ人々は特段明白な過ちを犯してしまいがちで、それに対してかなり的外れな行動を取ってしまいます。そしてよく、「他人には役に立つアドバイスをしてあげられるのになぜ自分自身はそれに従うことができないのだろう?」と思い悩むのです。

  • カギとなっているのは心理的な距離感です。つまり、助言を求めてくる相手の現実に自分が直接的に関与していない時には、よりはっきりと事態を観察することができ、最適なストラテジーを見つけることができます。
  • 釣り合いの取れた視野から物事を見ることができる一方で相談相手の内的世界に入り込んでいるわけではない状態の頭脳の方が、その問題に対するより多くの選択肢や解決策を見つけ出すことができます。
  • つまり、他の人々が知覚できないようなものを直感的に把握することのできる外部観察者のようなものです。自分自身のためにやらねばならない時を除いて、理想的なアイディアハンターとなることができるのです。

ソロモン王のパラドックスに潜む認知バイアス

友人や家族など、アドバイスを求めてくるくらい近しい存在の人なら、どんな人に対してでも誰もが愛情を感じていますよね。そんな中、ソロモン王のパラドックスの背後にはある認知バイアスが潜んでいます。このバイアスの働きにより、人は特定の物事が自分に直接影響していない時の方が優れた思考力を発揮できるようになるのです。

「挑戦してみるしかないと思う。人生は短いのだから、恐怖心に囚われていたらもったいないよ。だって怖気付いていたら結局は絶好の機会を逃す羽目になるだけだもの。だから考え方を変えてみなよ」、このような提案を他人に対して投げかけるのは簡単です。しかもこれは絶対に効果的と言える、相手をインスパイアできるようなアドバイスですよね。しかしながら、自分が何らかの分岐点に立っている時に自分自身に対して「ほら、勇気を出してやってみよう!」などと言い聞かしても何の効果も得られません。

苦境が自分自身のものである時、頭脳はこのような気軽さや強い決断力とともに動いてはくれないのです。ある問題に対処しなければならないのが自分自身である場合には、その種の効率的な考え方が恐怖心や不安、そして防御メカニズムなどが作り出す網の目に絡め取られてしまいます。そのため、ほとんどの場合自分で自分の助言に従うということが不可能なのです。

ソロモン王のパラドックス

自分自身が抱える試練や問題のために自らの知恵を活用するには?

知恵が求められる状況は頻繁に訪れます。そのため、ソロモン王のアドバイスのいくつかを自分自身のためにも用いることができたらかなり役に立つでしょう。自分で自分の最高のアドバイザーになり、絶対に間違えることのない意思決定者になるためにはどうすれば良いのでしょう?

ミシガン大学のイゴール・グロスマンは、知恵に関する研究における経験が豊富な心理学者です。彼はまた、ソロモン王のパラドックスに精通していることでも知られています。自身の研究の中で彼は、ソロモン王が別の国の賢い王に助言を求めに行く自分自身を想像することができていたならば、かの古代イスラエル王国にはもっと良い運命が待ち受けていたことだろう、と指摘しました。しかしこれはどういう意味なのでしょう?

彼の発言が示唆しているのは、日々の試練への解決策を見つけるためにベストなストラテジーは、その問題が他の誰かの問題だったらどうだろう、としばらくの間想像を巡らせてみることだ、ということなのです。これにより、問題自体から心理的な距離を取ることができます。この有用かつ効果的な力を使うことでアイディアは増幅し、視点が変わり、新たな選択肢を見つけ出せるようになるでしょう。

また、三人称を用いて自分自身に「なぜこの人物はこんな風に感じているのだろう?」「どうすればこの人物の気持ちは晴れるのだろう?」と問いかけてみてください。これらのプロセスが触媒となり、解決策を見つけ出しやすく、そして行動を起こしやすくなるはずです。上記のストラテジーは、必要な時には最大の味方となってくれます。このアドバイスを心に留め、実践してみてくださいね。


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  • Grossmann, I. y Kross, E. (2014). Exploring Solomon’s Paradox: Self-Distancing Eliminates the Self-Other Asymmetry in Wise Reasoning About Close Relationships in Younger and Older Adults.Psychological Science, 25(8), pp. 1571 – 1580.

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