睡眠障害は神経変性疾患にどのように影響するのか?

トロント大学での研究によって、睡眠障害が持つ神経変性疾患への巨大な影響力が明らかになりました。
睡眠障害は神経変性疾患にどのように影響するのか?
Andrés Navarro Romance

によってレビューと承認されています。 心理学者 Andrés Navarro Romance.

によって書かれた Eva Maria Rodríguez

最後の更新: 21 12月, 2022

神経変性疾患とは、中枢神経系のニューロンが機能しなくなったり徐々に死滅したりすることによって様々な神経症状や症候群を引き起こす病気の総称です。

これらの症状は時間とともに悪化していく傾向があり、治癒は不可能です。遺伝的要素や腫瘍、あるいは脳卒中によって発現します。また、これらの病気はアルコールを大量に摂取する人や、特定のウイルスあるいは毒素に冒された人々により多く見られます。

睡眠障害もまた、神経変性疾患の発現に影響を与える要素です。トロント大学の研究によって、レム睡眠障害が神経変性疾患の初期徴候である可能性があることが明らかになりました。

睡眠障害 神経変性疾患 影響

夢を見ている間に全てが起こっている

60年代から、夢はレム睡眠中に起こるものであり、脳幹が夢をコントロールする領域であるということが科学者たちによって主張されてきました。この脳の部位は視床下部と連絡を取り合い、覚醒状態から睡眠状態、またその逆への移行過程を作り出します。

ここでは、グルタミン酸作動性青斑核細胞(レム睡眠とノンレム睡眠間の移行を制御する)が連鎖反応を引き起こします。この細胞は、脳のとある領域:青斑核(SubC)に属していることから、その名がつけられました。この反応はGABAという神経伝達物質の放出を引き起こし、これは同時に視床下部と脳幹での活動レベルを低下させます。実は、GABAニューロンがレム睡眠の制御役を担っており、特に、深い睡眠中に筋肉を麻痺状態にさせます。

これらの細胞が活性化し始めると、レム睡眠へと素早く移行がなされ、脳幹が信号を送ることで、筋肉は弛緩し、手足が動かなくなります。これを念頭において、研究者たちはカタプレキシーナルコプレシー、そしてレム睡眠行動障害といったレム睡眠にまつわる病気の分析へと乗り出しました。

レム睡眠行動障害

レム睡眠行動障害に苦しむ人々は、夢を見ている最中に手足を動かしてしまったり、ベッドから起き上がったりしてしまいます。しゃべったり大声を出したりする患者まで存在するほどです。

医師たちは、患者たちがこの病気によって自分自身にとって、あるいは周囲の人々にとって危険な存在になってしまうことを懸念しています。自分自身や一緒に眠っている相手を傷つけてしまうなどの、好ましくない状況が生まれると、これが診断のための前兆となります。しかし、良い知らせとしては、レム睡眠行動障害は治療可能であるということが挙げられます。

睡眠の段階

睡眠には、いくつかの段階があります:覚醒状態、レム睡眠、ノンレム睡眠です。それぞれの段階が、様々な特徴によって定義づけられています。レム睡眠行動障害について理解するには、この段階の間、一体何が起こっているのかを知ることが重要でしょう。

この段階中は、脳の電子的活動は目覚めている時と似た状態になります。レム睡眠中の脳内ニューロンの働きは覚醒中と同様であるにも関わらず、この間筋肉が一時的に動かなくなります。

ナルコプレシーや睡眠時随伴症、あるいはレム睡眠行動障害といったいくつかの睡眠障害では、睡眠のそれぞれの段階における違いがほとんど存在していません。これらの現象の原因はまだ明らかになっていないのですが、専門家たちは睡眠の段階を区分けするはずの”神経学的な関門”が適切に機能していないのであろう、と考えています。

ほとんどの人が、たとえ鮮明な夢を見ていたとしても身体を動かすことができない一方で、レム睡眠行動障害を抱える人は、筋肉の麻痺が十分でないために、暴力的な夢を見ている間に実際に身体を動かすことができるのです。

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レム睡眠行動障害と神経変性疾患との関連性

研究者たちにより、とても興味深い事実が発見されています:レム睡眠行動障害は、高齢者に発現しやすいいくつかの神経変性疾患との関連性がある、というものです。これらの発見が意味するのは、神経変性過程によってまず最初に影響を受けるのがレム睡眠回路であり、特に、青斑核細胞であるということです。

また、レム睡眠行動障害の人の80%以上が次第にパーキンソン病やレビー小体型認知症といった錐体外路症状を次第に発達させてしまうということも観察されています。

この研究では、睡眠障害が、その15年後に発現する神経変性疾患の初期徴候である可能性がある、と提唱しています。

また、もう一点触れておくべきなのが、パーキンソン病とレビー小体型認知症の両方で、神経内に以上なほどα-シヌクレインが蓄積してしまうことに関連しているという点でしょう。だからこそ、このタンパク質について調べることで、どの神経保護療法を用いれば神経変性疾患が進行するのを防げるかが明らかになるのではないか、と研究者たちは期待しているのです。

また、ガンになりやすい患者たちのケースと同じように、レム睡眠行動障害の診断が、さらに深刻な神経症状が進行し始めてしまう前に神経の健康を保つための予防措置に繋がるのではないか、と専門家たちは主張しています。


このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。