テロリズム:なぜ一般人が残虐的な行為を起こすようになるのか
残念ながら、ニュースや新聞などではテロに関する多くの報道がなされています。そして、その数の多さに私たちはテロに対して鈍感になってきており、結果として誤報や興味関心の薄さにつながっています。しかし、テロに対処するのは治安部隊や国家のリーダーだけとは限りません。私たちも自分の身の回りにいる人への接し方によって、テロを防ぐことができるのです。
テロの首謀者は誰か
テロとは何かに対する不安によって引き起こされる現象です。以前は珍しかったものが今や一般的となり、そうなると深刻にとらえられることが少なくなっていきます。
情報不足にも関わらずテロの衝撃的な写真をみることで、多く人はそれが自分とは遠い世界の出来事だと思うようになります。
実際にテロに遭遇した人もいますが、多くの人は自分の街を歩いていて、テロが自分の生活のすぐそばにあるとは考えもせず、それに対する恐怖心も抱きません。テロへの反応は遠い国の犠牲者に対しての哀れみでしかないのです。
このような関心のなさがニュースの誤報と相まって、テロが社会不適合者や貧困層、移民特有のものだという認識をもたらします。
しかし、本当にそうでしょうか?ヨーロッパを例に挙げると、ほとんどのテロリストは貧困層でも社会不適合者でも移民でもなく、社会に順応できているように見える中流階級の人々です。彼らの多くはその国の国民であり、自分の国でテロ行為を起こします。つまり客観的にみると、テロリストと私たちの間には大きな差はないのです。これはとても恐ろしいことです。
そして、このような事実はどのようにしてテロリストは自分の仲間を見つけているのかという疑問につながります。その答えは集会と勧誘にあります。ニュースなどは、テロを計画する人と実行する人がいると報道されますが、実際にはその人達を操っている首謀者がその裏にいるのです。
テロの勧誘方法
まず、テロ組織は勧誘に乗ってくれそうな人を選別します。特に刑務所にいる人や異国で生活している人、パートナーと離れ離れになってしまった人、家族からのプレッシャーを感じている人など、苦しい時間を過ごしている人がその標的になりやすいです。つまり、今まで普通の生活を送っていた人が、なんらかの理由により社会からあぶれてしまったとき、テロリストは勧誘を行います。
そうするに、テロ組織は自分の状況に憤りを感じて、弱っている人間を探しているのです。
そして、彼らは手を差し伸べるように見せかけて近づき、その人たちの苦悩やそうなってしまった理由を探ります。人は弱っていると、自分自身をコントロールできなくなるものです。さらに苦悩の原因を自分で避けることができなり、ストレスもより溜まっていきます。テロ組織はそのような状況に漬け込み、そこから抜け出す方法を提案するのです。
自分をコントロールできず社会から孤立しているという感覚は、身体機能や精神状態に大きな影響を与え、危機感や苦痛が増していきます。そのようなことから弱気になり、自分はもう助からないと思うようになります。
このような状況は回避と呼ばれており、回避状況が長く続くことで、身体の苦痛や認識、感情障害を起こします。そしてこれにより、テロの勧誘を信じやすくなってしまうのです。
アイデンティティの変化
人はこのような状況下に置かれると、自分の置かれた環境をコントールすることへの自信を失ってしまいがちです。その他にも回避状況はアイデンティティの喪失にもつながります。そして、現実社会から切り離されてしまった人は、成長意欲がなくなり、洗脳を受けやすくなります。
上記のプロセスのなかではさらに、嫌悪感や怒り、疑心、回避など強い負の感情を抱くようにもなります。また、そこには屈辱や恐怖心、欲求不満などの感情が介在します。
このような状況に陥った人に対して、テロ組織は組織員としてのアイデンティティや名声、社会的サポートなど、その人の生きる目的を与えます。そして同時に、自分を拒絶した人たちへの暴力を正当化させるイデオロギーを刷り込んでいきます。
未来のテロリストを捕まえる
つまり、負の感情を持った無力な人がテロリストになりやすいのです。そのような人たちは集中力に欠け、欲求がたまっており、短気で攻撃的です。このような人たちを作り出してしまうのは、私たちを取り囲む社会環境や人々なのです。テロ組織はそのような状況を利用して、つらい時間を過ごしている人たちを搾取していきます。そして、彼らはこの状況を悪用することで、心理的または社会的な成果を与えずその人達を見捨てるのです。
自分ではどうしようもなくなってしまった人を見つけると、彼らは手を差し伸べようとしてきます。そして、彼らの過ちを許すことで、自分を排他した社会に対して復讐する機会を与え続けてきます。
したがって、テロは身近な環境から防ぐことができます。社会的なサポートや精神的な支援を行うことで、今後のテロ行為を避けることが可能なのです。