コロナ危機がもたらす7つの精神的影響
医療機関や政府は常にCOVID-19から身を守るための対策に関する情報を発信し続けています。しかしそんな中であまり話題に上がっていないのが、コロナウイルスがもたらす精神的な影響です。社会的孤立や自宅隔離、そして将来への見通しのつかなさといった要因は、確実に私たちのメンタルヘルスに悪影響を与えています。
さらにもう一つ私たちが考慮できていない重要な要因があります。それは、うつ病や不安障害を抱える何千人もの人々が、この状況を自身の病状をさらに悪化させかねない要因であると考えているということです。
したがってこのような孤立せざるを得ない期間の間、そういった人々に「自分は支えられている、ケアされている」と感じてもらえるよう、手を差し伸べたりサポート体制を準備することが必要不可欠であると言えます。
これまでに私たちがこのような状況に直面したことがなかったのは明白です。しかし、それが人類の崩壊を意味するものであってはなりません。実はそれとは正反対に、私たちはコロナウイルスからも、そしてその”副作用”(非理性的な行動や理不尽な恐怖など)からも、自分の身を守るべく行動的でい続けなければならないのです。
各家庭内で、そしてそれぞれの家や部屋の静寂の中で自分の心が自らを裏切ったり、苦しみを強めてしまうことがないように、必ず対応策を取り、助け合うための絆を形成しなければなりません。
そのために、このような危機が及ぼしかねない精神的な影響について知っておくことをお勧めします。
コロナウイルスがもたらす、7つの知っておくべき精神的な影響
科学誌『ランセット』は最近、コロナウイルスがもたらす精神的な影響についての研究を発表しました。この研究を行うにあたり、専門家たちは別の似たような状況(とは言えもちろんインパクトの大きさは同じではないもの)を想定しました。例えばそのうちの一つは、2003年にSARSが大流行した結果カナダのいくつかの都市で行われた隔離生活でした。
当時人々は10日間隔離されましたが、心理学者たちは似たタイプのシチュエーションがもたらす影響を分析するためにその情報を使用しました。この時の情報や現在我々が置かれている状況を観察した結果から、コロナウイルスにより及ぼされるであろう精神的な影響は以下のようなものだと考えられます。
1. 10日間以上の隔離生活が生み出すストレス
コロナウイルスを予防するため、そして症状が軽度な時に療養するために私たちが採用している対策の一つが、自宅隔離を行うことです。
現在多くの国々で実施されている隔離の期間は15日間です。しかし、この研究に携わったキングス・カレッジ・ロンドンのサマンサ・ブルックス博士やレベッカ・ウェブスター博士ら研究者は、10日目以降私たちのメンタルヘルスが脅かされ始めるであろうことを予見できていました。
11日目からストレスや緊張、そして不安が湧いてきます。そのため15日間以上の規制が課された場合、その影響はより複雑で、ほとんどの人にとって対応しきれないものになってしまうでしょう。
2. 感染への恐怖が非理性的なものとなる
コロナウイルスがもたらす精神的影響の中でも特に明白なのが、感染への恐怖です。感染病の流行状態あるいは世界的な大流行が長引くと、人間の脳は非理性的な恐怖を増大させてしまう傾向があります。
これは信頼できる情報が手に入ることとは関係がありませんし、安全対策(手洗いや、90センチ以上人と距離を取ることなど)について警告されていることとも関連していません。私たちは徐々に理不尽な恐怖心を成長させてしまうのです。
口にする食べ物から感染するのかもしれない、あるいはペットが媒介になっているのかもしれない、といった不合理な恐怖もあります。このような極端なシチュエーションは想像するべきではありません。
3. 退屈とフラストレーション
これは分かりやすいでしょう。社会的相互作用が減少して路上を静けさが埋め尽くし、家の中に自らを隔離することを強いられているような状況では、退屈という名の悪魔がすぐさま襲ってくるのは目に見えています。
もちろん皆さんもご存知のようにこれに対処する方法はたくさんあります。とは言え、日々が経過し、先の見えない不安が増幅するにつれてフラストレーションが爆発しそうになってきます。自分のライフスタイルを維持できないことや自由に行動する自由がなくなってしまうことにより、もっと複雑で有害な感情が生み出されてしまうでしょう。
4. 生活必需品の不足や買い占め
感染症が流行している状況において、頭脳はしばしば衝動的に動きます。その影響の一つが買い占め行為です。
皆さんは、アブラハム・マズローが提唱した基本的欲求のピラミッドをご存知ですか?そのピラミッドの土台の部分では、人間が良い気分になるためには食物と生活必需品が十分に供給されている必要がある、とされています。
先行きが不安定な状況下では、私たちの頭脳は「生活必需品を切らしてはならない」という最優先課題に注意を集中させるのです。
それには、スーパーマーケットに供給の問題があるかどうかは関係ありませんし、薬局にある薬がまだなくなっていないとしても関係ありません。私たちの脳は、「こういった品物は今後品切れになるだろうから急いで買いに行かねばならない」と自らに信じ込ませようとしているのかもしれません。
5. 不信:全ての情報を明らかにしてくれていない!
コロナウイルスによるまた別の精神的影響が、医療機関や政治家、科学者、そしてその他の専門家などの公認の情報源への不信感です。こういった危機的状況や不確かな状況の中では、いずれかの時点で人間の脳は接続を断ち、不信状態に陥ってしまいます。
これは2003年のSARS危機の時にも明白だった事実です。なぜこのような不信感を抱いてしまうのでしょう?それは、当局から矛盾した情報が与えられたことがあったためです。さらに政府と医療関係者、そしてその他の自治体間での協力体制が取れていなかったこともありました。
これが常軌を逸した現象であり、これまでに同じような問題に直面したことがなかったという点を私たちは念頭に置く必要があるでしょう。
また、このCOVID-19という敵が、かつてSARSがそうであったように、全く未知の存在であるという点も考慮しなければなりません。関係各所は発生した事象やニーズに基づいた対応をしています。この状況では一般大衆の不信感は最悪の敵となり得るのです。陰謀論が増え始めると、有益どころか障害物となってしまうでしょう。
6. 精神疾患を患う人々の病状が悪化する可能性も
これについては冒頭でも触れましたが、うつ病や恐怖症、全般性不安障害、そして強迫性障害などを患う最も脆弱な人々は、この状況下でさらなる苦しみを味わうことになるかもしれません。こういった人々に「自分には支えてくれる人がいる」と感じさせてあげること、そして彼らを孤独な状態にしないことが非常に重要です。
7. 中でも最悪な敵:ネガティブ思考
コロナウイルスによる精神的影響のなかには、ある明白でかなり危険な要因が存在します。それはネガティブ思考、つまり常に恐怖を感じ、最悪の結果を想定してしまうような思考タイプです。職を失ってしまうのではないか、これまでと何もかもが変化してしまうのではないか、自分も感染してしまうのではないか、愛する人が死んでしまったらどうしよう、経済は破綻してしまうだろう、といった考えばかり浮かんできてしまうような思考です。
このような思考回路には陥らないようにしてください。何もメリットがないばかりか、頭が混乱して人間の最も悪い部分が引き出されてしまうでしょう。そのため、自分の健康管理をしっかりと行い、予防策に従って、そして何よりも自身の精神衛生をケアしてあげることが大切です。
重大な局面を迎えている時には、冷静さを保ち、人との絆を形成しなければなりません。私たち全員が同じ事態を経験しているのですから、時間とともに過ぎ去っていくであろうこの状況を上手く乗り越えられるよう、互いに助け合いましょう。
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- Brooks, S. K., Webster, R. K., Smith, L. E., Woodland, L., Wessely, S., Neil Greenberg, Fm., … James Rubin, G. (2020). The psychological impact of quarantine and how to reduce it: Rapid review of the evidence. The Lancet, 6736(20). https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30460-8