隠された慣習を伴う強迫性障害

09 1月, 2020
強迫性障害の治療を行う際には、隠された慣習的行為を伴う強迫性障害と明白な慣習を伴うものとを区別することが絶対的に重要です。隠れた強迫行為や慣習は、強迫観念を悪化させます。残念ながら、曝露反応妨害法は通常、十分に効果的な治療法であるとは言えません。

強迫性障害(OCD)–隠れた慣習的行為があるものもないものも–は、幅広い不安障害スペクトラムの中に位置する病気であり固執思考や侵入思考(強迫観念)、反復行動、慣習的行為、あるいは強迫行為などが特徴で、これらの行為は、こういった思考が引き金となって生じる不安感を避けるあるいは抑えるために行われます(NardoneとPortelli、2015年)。

強迫性障害を持つ人々のこういった衝動や慣習的行為には、強迫的な手洗いやドアの鍵を閉めたかどうかを何度も繰り返し確認する、といった行為があります。しかし、中には認知レベルで生じる強迫観念があるため、発見するのが難しくなってしまいます。そしてこういった隠れた強迫行為は、治療が非常に困難な場合があるのです。

隠された慣習 強迫性障害

強迫性障害の患者はどのような強迫観念を抱えているのか?

強迫性障害患者の強迫観念の種類や、どのような強迫行為を行なっているかは人によってかなり異なります。また、この病気は最も定義づけるのが難しい精神障害の一つでもあります。例えば、強迫スペクトラム障害という包括的な診断カテゴリーが存在しており、ここには抜毛症やトゥレット障害、そして身体醜形障害などが含まれます(NardoneとPortelli、2015年)。

専門家グループが、最もよく見られる強迫観念を五つのメインカテゴリーに分類しています:

  • 不潔恐怖。十分に体を洗わないと病気になってしまうという考えにとりつかれたり、常にウイルスやバクテリアが側にいると信じ込んでしまうこと。こういった強迫観念のある患者は、回避行動をとったり洗浄脅迫などに悩まされます。
  • 対称性/不完全強迫。物を順序立てて並べたり、数えたり、繰り返したりする強迫行動など。
  • 性的な強迫観念。性的な強迫観念には、衝動を確認する行為も含まれる傾向にあります。こういった衝動は隠れていることが多いのですが、これについては後ほど話していきましょう。
  • 加害恐怖。誰かを何らかの形で傷つけてしまったのではないか、と考えてしまいます。例えば、仕事に向かう途中に車で誰かを轢いてしまったのではないかと思い込んだり、確認するために再度道を戻ったりしてしまうことがあるのです。加害恐怖に関連する強迫行為には通常、確認行為が含まれます。
  • 縁起恐怖。ここにも、確認行為が含まれます。

上記の強迫観念に関連するもので、最もよく見られる強迫行為や慣習的行為は、洗浄慣習、順序付け慣習、繰り返し行動、貯蓄行為、確認行為、精神的強迫行為などがあります。NardoneとPortelli(2015年)などの専門家たちは、強迫行為を三つに分類しました:予防的行為、強迫観念をなだめるための行為、そして修復行為です。

隠れた慣習行為を伴う強迫性障害とは?

上記で紹介したような強迫観念は、一連の慣習的行為に繋がります。皮肉なことに、こういった強迫行為の目的は強迫観念を排除することや、それによって生み出される不安を取り除くことなのです。

強迫性障害患者の慣習的行為や強迫行為は行動に現れやすいものです。つまり、表面に現れるので傍観者から見ても明らかなのです。後ろから数を数え直したり、就寝前に玄関のドアの鍵を閉めたかどうかを15回も確認したり、通った道全てを5時間もかけて再度歩いたりする行為が、その例として挙げられます。

安全装置としての慣習的行為

強迫性障害の慣習的行為は、安全装置と捉えることができます。強迫性障害の患者がこのような行動を取るのは、自らの安全を守るためなのです。恐怖心や不安を感じ始めた時に、これらの慣習や強迫行為によってその不安を和らげることができます。

このような不安→回避→不安というサイクルがあるため、通常セラピストはこれを終わらせようと、曝露療法に頼ります。この療法は、患者に、慣習あるいは強迫行為を行うことなく自らの思考と向き合わせる、というものです。不安を最大限の状態にさせることで、強迫行為を行わなくても自然に静まらせようという治療法で、これにより患者は不安を消し去るために慣習的行為を行う必要はないのだ、と気づくことができます。

隠れた慣習の例:強迫行為と確認行為

強迫性障害を抱える人々は、強迫行為を行わないように我慢しようとしても、結局はこれに屈してしまいます。しかし強迫性障害には逆説的な面があり、もし強迫行為を行わなかったとしても、強迫観念は自然と消えて行くのです。

表に出て来づらい強迫行為として、確認行為が挙げられます。この概念をより深く理解できるように、一つ具体例を見ていきましょう。

アヤカと性的な強迫性障害

これは、アヤカという女性の症例です。彼女は確認行為を伴う性に関する強迫性障害を抱えています。アヤカは非常に厳格な宗教的・道徳的価値観を持つ家族の元に生まれたため、自分はレズビアンなのではないか、という考えに取り憑かれ、怯えていました。

アヤカの病気は、ホモセクシュアル強迫性障害(HOCD)というものでした。だからと言って、アヤカが自分自身の性的指向を知らないというわけでも、彼女が女性に惹かれるというわけでも、それについてどうすべきか分かっていないというわけでもありません。HOCDを抱える人々は、同性愛者の場合もあれば異性愛者の場合もあるのです。

性に関連する強迫性障害の患者は、多くの場合隠れた確認行為を行なっています。つまり、自分は同性愛者なのではないかという不安を和らげるために、歩道の割れ目を避けながら歩くなどという目に見える行為はしていなかったとしても、認知レベルの強迫行為は実行しているということです。

アヤカの症例では、彼女は交流したことのある全ての女性について思い起こし、そのうちの誰かが自らの性的反応を引き起こす可能性があるかどうかについて3、4時間もの間考えて過ごすことがありました。また、裸の女性を思い浮かべ、それによって自分が性的に興奮するかどうかを確かめようとする確認行為もありました。

隠された慣習 強迫性障害

隠れた慣習的行為に潜む危険性とは?

表面に出てこない慣習的行為の大きな問題は、患者はいつでもそれを実行できるという点です。実行するための物理的な障害は存在しませんし、セラピストの目を盗んで実行することができるからです。

人は、いつでも好きな時に好きなことを考えることができますが、同じことが強迫性障害の隠れた慣習にも言えるのです。隠れた強迫行為を持つ強迫性障害を患うということは、何時間でも精神的な確認行為を行い続けてしまう可能性があるということです。自分が同性愛者であるか否かや、側に他の人がいない状態の時に自分は自らの子どもを傷つけてしまう可能性があるかどうか、といったことを確認し続けてしまいます。

考えに浸ったり、確認行為を行うことはその人の”自由”です。例えば夜中の3時に家を出て、自分の歩いた道を再度辿り直して何かを確認するのは困難あるいは不可能ですが、頭の中での確認行為ならばいつでも実行することができます。結果として、隠れた強迫行為を持つ人々はほとんどの時間をその確認行為をして過ごしてしまいがちなのです。なぜなら、何も彼らを妨げるものはないからです。

大抵の場合、初めは1日に1時間ほどの確認行為から始まりますが、その時間はすぐに増大していきます。患者には不安を消し去るためにもっと長い時間を要する必要性が出てくるのです。そしてこれが、彼らの仕事や私生活にまで悪影響を及ぼし始めます。

家族や友人、そして同僚たちは普通、このタイプの強迫性障害にどれほどその人物が苦しんでいるか気づくことはありません。患者たちは、自身の確認行為を恥ずかしく思っていたり罰せられることを恐れているため、その強迫行為について認めたがらないので、周りの人々も彼あるいは彼女はただ単に気が散っているか疲れているだけだろう、と考えるのです。

隠された慣習行為を伴う強迫性障害の治療

このタイプの強迫性障害の治療は、セラピストにとっても挑戦的なものとなります。患者に強迫行為をさせることなく強迫観念と向き合わせること自体が難しいのですから、その強迫行為が隠されたものである場合はなおさら困難なのです。慣習的行為が目に見えるものではないため、セラピストは患者が慣習を実行していないことに100パーセントの確信が持てません。

しかし、だからと言ってセラピーが不可能というわけではないのです。NardoneとPortelli(2002年)は、隠れた慣習を持つ患者のための別のタイプのセラピーを提唱しました。これは”ブリーフ・ストラテジック・セラピー”と呼ばれるもので、86パーセントの患者に効果をもたらしたことが研究で明らかになっています。その中でも79パーセントの症例で病気が完全に治り、7パーセントで大きな改善が見られたということです。

  • Nardone, G. y Portelli, C. (2015). Obsesiones, compulsiones, manías. Barcelona: Herder Editorial.
  • Welch, J., Lu, J., Rodriguiz, R., Trotta, N., Peca, J., Ding, J., Feliciano, C., Chen, M., Paige, J., Luo, J., Dudek, S., Weinberg, R., Calakos, N., Wetsel, W. Y Feng, G. (2007). Cortical-striatal synaptic defects and OCD like behaviours in Sapap3-mutant mice. Nature, 448, 894-90.