読書が脳に与える魔法のような効果
小説、フィクション、エッセイを読む時、私達はそのシチュエーション、シナリオ、登場人物について想像します。ページをめくるたびに、顔や服装、背景、空間や距離に関し、イメージを膨らませます。このような時、脳に魔法のような効果が生まれるのです。
読書は、自分を現実と切り離し、内的対話を落ち着かせるのにピッタリの活動です。解決できていない問題について考えたり、批難や批判をやめるのに役立ちます。また、読書により脳内の多くの領域が活発化します。
右脳の言語
脳科学者Guillermo Garcia Ribasは、言語の解読と象徴的思考という読書による2つの効果について語っています。また、Alex Huthも、チームの一員として脳の意味論的体系をマッピングしました。そして、これまで言語の生成は左脳のみに限定されていると考えられていましたが、そうではないということが分かりました。また、言語理解の大部分は右脳で行われているようなのです。
「シンボル(言葉)の解釈の領域とその他の領域は繋がっている」
-G. Ribas-
読書は脳のGPSを起動させる
脳科学者Aidan J. Homerによると、イメージの表出は、皮質および皮質下神経系に影響を与えます。また、嗅内皮質にあるグリッド細胞やグリッド神経のネットワークを活発化します。このグリッド細胞は、空間位置確認を司る部位です。つまり、脳に空間の位置を理解させます。
ある環境における人物の描写について読むことにより、イメージをしている間この部位は活発化された状態が続きます。また、自分がある空間にいることを想像する時にも、同様の現象が起こります。視覚刺激や聴覚刺激と同じように行われるようです。
さらに、このグリッド神経には、シータ波の強い規制が見られます。シータ波は、脳構造の再構成に関わる長振幅の電気刺激です。また、低周波です。そのため、無意識の世界にも通じると考える人もいます。
シータ波は大人の睡眠のフェーズ1と2で見られます。また、1歳になるまでの子どもにおいては、起きている間もシータ波の状態で過ごします。そして、大人が起きているときにこれが起こった場合、意識状態は瞑想後や催眠にかかった時のようになります。
これが、読書が脳に与える効果の一つで、無意識の世界に通じる意識状態になります。また、同時に、脳構造や神経ネットワークの再構成も行われます。
見るべき鏡
エモリー大学のロバート・ハリスは、ある集団に対し、小説を読むのにかかる数日の間、MRIを実施しました。その結果は素晴らしいものでした。
登場人物の動きが、読者の脳の異なる領域を活発化させることが分かったのです。まるで自分がそうしているかのように、様々な脳の領域が活発化されたのです。さらに、中心溝の神経接続に重要な強化が見つかりました。脳は、身体的感覚や共感と繋がっています。
脳に跡を残す
ロバート・ハリスの実験では二次的な結果も見られました。本を読み終えた後数日間、神経に痕跡が残ることが分かったのです。実験では、本を読み終えた数日後、同じ参加者にMRIが行われました。その結果、読書中に増加した接続が、その後本を読まなくても数日間持続するすることが認められました。
この現象は「アクティビティ・シャドー」と呼ばれます。本を読み終えた後5日間、体は効果を感じ続けます。また、その本が好きだった場合は、この余韻がより長く続くようです。
読書による脳内の「アクティビティ・シャドー」から、読書になぜ魔法のような力があるのかが理解できます。また、本を読み終えた後も話や登場人物を感じ続ける理由が、この魔法により説明づけられます。