演技性パーソナリティ障害:魅惑的で影響力を持つ人間
演技性パーソナリティ障害を持つ人は、魅惑的な態度や大げさな感情の不安定さを含む認知的、行動的、そして感情的傾向のパターンが主な特徴です。
さらに、少なくとも短期的に人を引き付ける磁石のような特徴があり、同時に彼らはとても影響を受けやすい人でもあります。
この障害は、いつも他人の注目を浴びていたい魅惑的で影響力のある人によく見られます。このような人達は激しい感情を表す、大袈裟な反応を見せる、そしてとてもドラマチックな人です。
映画「ティファニーで朝食を」で見られる演技性パーソナリティ障害
もしあなたがブレイク・エドワード監督の1961年の作品、「ティファニーで朝食を」に登場するホリー・ゴライトリー(オードリー・ヘップバーン演じる)を覚えているならば、あなたは演技性パーソナリティ障害を見たことがあります。
ホリーは自由きままでゴージャスな生活をしながら、同時に容易に影響を受けやすい人物でもあります。そして、その中で出会った男に恋に落ち、説得され、彼女は自分の人生を遊びに変えてしまうのです。
では、演技性パーソナリティ障害を判別する方法や、何が原因なのか、そしてどのような治療法があるのかを見ていきましょう。
パーソナリティ障害とパーソナリティの違い
その人のパーソナリティ(個性、人格、人側)が深刻な影響を他人やその環境にもたらす時、私達はパーソナリティ障害がただの性格ではないと言えるでしょう。
パーソナリティ障害を持つ人の近くにいる人達は、そこに精神病理学的な状態、エゴがある為に苦しみます。そして、パーソナリティ障害を持つ人はそれが「正常」なことだと信じているのです。
これは障害が人の心理的構造に組み込まれ、それが自分自身の一部として生きることを意味します。
不安障害や強迫性障害などを患うと、それがあなたを侵略しているように感じます。また、それにはスタート地点(エゴディストニック:エゴの持つ目標やニーズの為に思考や態度が苦しむこと)もあります。しかし、パーソナリティ障害は大人になる前から少しずつ発達していき、それがあなたを引き離していることに気づかないのです。
「自分が自分でいることを受け入れられた時、自分を変える事が出来るのは好奇心をそそる矛盾である。」 -カール・ロジャース-
また、パーソナリティ障害は患った人達の社会的な状況に多くの混乱や葛藤を引き起こす特徴があります。
心理セラピーなどで比較的早く落ち着くことの出来る「生き方」の問題とは違い、パーソナリティ障害は治療の効果が出にくい特徴があります。
さらに、このような人達は心理セラピーを避けます。その理由は、彼らは「いつもこんな感じだけどね」や、「私達の問題は誰かのせいだ」などと感じる為です。
演技性パーソナリティ障害はどのように診断されるのか
精神障害を診断する為にある、精神医学そして心理学で最も使用されている基準は「American Psychological Association(APA)」(アメリカ心理学会)の基準です。「演技性パーソナリティ障害」という用語は、APAが名付けてDSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)に記述されています。
APAによると、演技性パーソナリティ障害はグループBパーソナリティ障害に分類され、気分のアップダウン、大袈裟、そして外向的な特徴を持っています。
診断基準:演技性パーソナリティ障害を識別する
あなたは、このドラマチックで、魅惑的で、そして影響力のある特徴に誰かが当てはまっていると思うかもしれません。しかし、この特徴を持つ全ての人がこの障害を持つわけではないのです。
それを正しく識別する為に、その他の基準を見ていきましょう。
- 自分が中心にいない状況に不快感を感じる
- 他人との接点が性的、または挑発的な行為によるものが多い
- 感情や自己表現に急激な変化が見られる
- 注目を引く為にコンスタントに体を使う
- 詳細に欠け、印象的な内容の話し方をする
- 感情表現がドラマチック、悲劇的、そして大袈裟である
- 簡単に説得されやすい(他人や環境の影響を受けやすい)
- 他人との関係において実際より近い関係を持っていると勘違いをしている
これらの基準に5つ以上当てはまり、すでに思春期を越していれば、その人はこの障害を患っている可能性があります。
この基準に合わなくとも、その人はヒステリックなパターン、側面、または性格を持っているかもしれません。
演技性パーソナリティ障害はどのように発達するのか
ほとんどの精神病理学的障害と同じように、演技性パーソナリティ障害には多くの原因が関係しています。周りの環境(学習、教育、薬物、人間関係)と相互作用のある脆弱性(生物学的、心理的、社会的)の全てがこの障害の原因となるのです。
他の心理障害には、特徴的で分かりやすい要因があります。例えば、不安をある一定の期間、継続的に抱えると、それはうつ病を引き起こすパニック性の発作や失業などに繋がります。しかし、パーソナリティ障害には精神病理学的に明確な要因がないのです。
「これ以上状況を変えることが出来なくなった時、私達は自分を変える挑戦を仕向けられているのです。」 -ヴィクトール・フランクル-
演技性パーソナリティ障害の治療法
認知行動療法による治療
この療法は、衝動の抑制、感情的知性、考え方の改善、認知力の修復などのテクニックを使用します。主な治療目的に以下の事があります。
- 拡散した考え方を中和する
- 幻想と現実を区別する
- 因果関係の性質にもっと現実的になる
- 衝動的な行動をコントロールする
- 自己概念を改善する
- 対人、および個人間での心理スキルを向上させる
社会的スキルや積極性へのトレーニングは障害を改善する基礎となります。それは、彼らが対人関係を操作するのに慣れているからです。彼らは感情的な危機や不満、そしてその他の非積極的な態度(基本的に攻撃的)と共に人を使います。
心理療法の重要な点は、患者の求めることや、感じること、そして何が期待を妨げているかを正しく識別出来るように手助けしてあげることです。
積極性のトレーニングで、彼らは人間関係を失う事は悲惨な事か否かと疑問を抱くことを学びます。さらに、拒絶の概念を断つことも学習出来るのです。
その障害がとても複雑な臨床方法を要するものでも、改善は不可能ではありません。
セラピーは基礎であり、彼らに精神病理的な影響を及ぼす苦しみから解放してくれるのです。
また、この障害が生み出す苦しみを認識し、責任を持つ手助けもします。そして、彼らのダメージを癒し、より良い生活ができるよう役立てることが出来るのです。