扁桃体と不安:その繋がりは?

不安障害を司る神経構造を、神経科学者は「恐怖の網」と呼びます。中でも不安と関連性が強いとされているのが、ビー玉ほどの大きさの扁桃体です。
扁桃体と不安:その繋がりは?
Valeria Sabater

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Valeria Sabater.

最後の更新: 22 12月, 2022

扁桃体と不安障害には、直接的な繋がりがあります。これは長い間知られている事実です。これに加え、非常に興味深く驚くべき事実が分かっています。扁桃体が人より大きな人がいて、これが気分障害のリスクを高めるということが分かったのです

これは偶然なのでしょうか? 本当にこのような神経障害をもって生まれることがあるのでしょうか?研究により、 実はこの特性はある特別な要因によるものだということが証明されています。その要因とは、虐待、身体的放棄、精神的ネグレクトなど継続的なストレスによる厳しい幼少期の苦悩に他なりません。

つまり、過去の経験やその影響により、脳の構造が形成されるのです。さらにこれは独特な方法で行われます。幼少期にストレスに苦しんだ子どもは、科学者により「恐怖の網」と呼ばれるものと関わっている神経生物学的性質すべてが変わってしまいます。

具体的には、扁桃体、海馬、前帯状皮質背側部などの領域に小さな変性が起こり、大人になってから不安障害を患うリスクが高まります。

扁桃体 不安

 

扁桃体と不安:その繋がりは?

生きていく中で、誰もが様々な大きさの不安を経験します。面接、試験、自分が話さなければならない会議など、ストレスのかかる状況で私達は苦しみ、鍛えられます。こういった状況では次に何が起こるか分からない、あるいはうまくいくか分からないという不安、恐怖、不確かさが生まれます。

このような状況は非常に困難なものに感じるかもしれませんが、それは普通のことです。しかし、もし持続的な不安を抱えているのであれば、それは普通とは言えません。

ときにはきっかけがない場合もあります。説明することができない持続的な不安を抱え、それが身体的にも精神的にも生活すべてに影響するような場合です。この不安は病的であり、健康やポテンシャルに影響を及ぼす毒のような働きをします。

恐怖症、心的外傷後ストレス症候群(PTSD)、全般性不安障害などの精神状態は、不安と繋がりがあります。そのため神経科学者は、長年人の脳内で何が起こっているか、また不安の原因となっている脳の構造について研究を重ねてきました

 

「恐怖の網」と扁桃体

不安は、脳のある構造の単体の活動によりもたらされるものではありません。実際は、脳の複数の領域の複雑な組み合わせの結果生じるのです。これが科学者に「恐怖の網」と呼ばれるものです。名前を聞くと恐ろしいもののようですが、実際はどのようなものなのでしょう?

理解を深めるため、人間の脳は感情的であり、合理的であるというところから始めましょう。脳には感覚、感情、気持ちと繋がっているプロセスを司る、古い領域があります。具体的に言うと大脳皮質の前部で、認知的でより再帰的なプロセスが管理されています。

不安障害を患う人の脳は、恐怖に支配されています。脳が一連の構造により「ハイジャック」された状態で、より論理的で内省的な思考に制限がかかってしまうのです。

この管理を指揮する部位が扁桃体です。これはイェール大学のマイケル・デイビーズ博士の研究により、90年代には分かっていた事実です。

  • 扁桃体は、超高速で私達を取り巻くものに関する情報を抽出することが分かっています。リスクや脅威を探知するもので、リスクや脅威が実際のものか想像上であるかに関わらず、このプロセスは行われます。
  • その直後、恐怖心を活性化させ、自分を守ったり逃げ出す用意をします。
  • その後、恐怖心や警戒心は(前頭葉にある)前帯状皮質背側部に到達します。ここで恐怖心は大きくなり、合理的思考の多くがブロックされます。脳が感情、具体的には不安にコントロールされている状態です。脳はこの状況に対する反応をあなたに求めます。
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ストレスの多い幼少期が原因の扁桃体の変性

2013年、スタンフォード大学がある大発見をしました。精神科のヴィノード・メノン教授が、MRI検査の結果扁桃体が人より大きい人がいることを発見したのです。さらに、彼らには相関する要因があることが分かりました。

一つ目は、彼らの多くが不安障害を抱えていたことです。そして二つ目は放棄や精神的ネグレクトなどによりストレスの多い幼少期、あるいはトラウマになる経験を抱えていたことです。

そこで、扁桃体が大きな人は、感情の調整や知覚を司る脳の領域との接続において変性が起こっていると考えられます

これにより過活動状態になり、脳の扁桃体はより敏感になり、恐怖、苦悩、不安、脅威などの感覚を調整することが難しくなります。これに関しメノン教授が指摘していることがあります。それは、幼少期に困難を経験したからといって、大人になった時必ず気分障害を患うとは限らないということです。それでもそのリスクは高く、可能性は高まります。

これを踏まえ、扁桃体の活動の調整に焦点を当てた研究が続いています。こういった研究が、現代社会では珍しくない不安を治療するのに役立つ、効果的で新しいツールの発見に役立つでしょう。


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