自閉症の心理学的な治療法について

こちらの非常に興味深い記事の中で、自閉症の心理学的治療について学んでいきましょう。そうすれば、これまで以上にお子さんの力になれるはずです。
自閉症の心理学的な治療法について
Cristina Roda Rivera

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Cristina Roda Rivera.

最後の更新: 21 12月, 2022

近年では、自閉症スペクトラム障害を持つ子どもと大人、両方が試してみることのできる様々な治療法が存在しています。そのうちのいくつかは強固な科学的土台を有す、成果を出している治療法ですが、その他のものはあまり効果がなかったり非常に限られた条件に一致する人にしか効きません。一方で我々にわかっているのは、自閉症の効果的な心理学的治療法は根拠に基づいたものであり、統合的かつホリスティックであるという事実です。

1940年代前半に初めて自閉症を認識したのが、オーストリアの精神科医レオ・カナーでした。カナーは自閉症患者に典型的に現れる孤立や言語の問題、限られたコミュニケーション、安定した環境への固執といった特徴についての研究を行いました。

今日でも、自閉症の正確な定義はまだ賛否両論を生んでいます。そして数年前から私たちは「自閉症スペクトラム障害(ASD)」という言葉を使うようになりました。これは、“従来の”自閉症を定義づけるような臨床的特徴を共有する、より幅広い疾患グループを分類することを目的としています。

自閉症を抱えているのは1万人につき10〜15人ほどです。ここにアスペルガー症候群などのその他の病気も含めると、その有病率は1万人につき57人にまで達します。

性別による有病率に関しては、自閉症患者の5人に4人が男性です。しかし知的障害を有する確率は女性の方が多い傾向にあります。自閉症と診断された患者の75%が知的障害も抱えており、これに加えて50%が言葉を喋ることができないかあるいは、言語機能障害を有しています。

自閉症 心理学的 治療法

自閉症の心理学的治療法

たくさんの治療オプションがある中で、確実に言えることが一つあります。それは、自閉症患者全員に有効な医療介入プログラムは一つも存在しない、ということです。そして病気の異なる進行段階においては同じ患者への治療であっても一つの治療法だけでは効果が出ない場合があります。

明白なのは、行動介入が自閉症のより好まれる心理学的治療法だということです。これらの全ての行動介入が特定の人物のニーズを選別するために適用された行動分析を基にしており、調整が必要な行動を修正します。

自閉症の行動療法の理論的基礎

  • 学習原理は普遍的なものであり、自閉症がある人にもない人にも同様に適用されます。
  • 行動療法を行うにあたり、自閉症の病因を知ることは必須ではありません(ロヴァース、1993年)。これは、自閉症のメカニズムとされているものを土台とする理論とは対照的です。
  • 自閉症は、特定の種類の行動をする傾向や、その他の行動が過度にある状態を伴う症候群です。神経科学的な基礎があるとはいえ、事前に用意された環境との効率的な相互作用によって行動は変化させやすくなります。

行動介入の全般的な目的は以下のようなものです。

  • まず、他人をより理解できるようになるためのコミュニケーションスキルを発達させること、そしてその関係性や行動に意味を持たせることです。
  • また、情動の安定性や自律性を妨げたり困難にするような行動を減らすことです

過去数年間にわたっていくつかのプログラムが説得力のある経験的証拠を提示してきました。以下でそれらを紹介していきます。

自閉症の心理学的治療:応用行動分析

応用行動分析(ABA)では、学習についての科学的な知識を用います。これは、関連する行動を社会的文脈の中で促進できるよう、教育手法を発達させるためです。

包括的行動介入は決められた時間内で一連の手法を使って患者に指導を行おうとするものだ、とほとんどの人が考えています。しかし実際に行われているのは、一つの、あるいは数多くの異なる手法を用いて特定の能力を促進させるという作業です。どちらのタイプの介入も、同じくらい効果的であると見なされています。

行動介入に関するABAモデルの三つの基本原理がこちらです。

  • 分析。経過は介入の開始時からその前進度合いの測定によって評価されます。
  • 行動。科学的な行動原理に基づきます。
  • アプライアンス。観察される行動に適用された原理です。

一方で、包括的な介入において最もよく見られる要素がこちらです。

  • 学習環境はコントロールされており、構造化されています。
  • 患者とともに治療を行う人々は、その患者に不足している行動や問題行動に応じて能力や個性の全ての領域に治療の方向性を向けさせます。
  • 応用行動分析の手順を用います。
  • 1人ないしはそれ以上のセラピストが治療を行います。
  • 治療は週に34〜40時間続きます。
  • 通常の進歩具合に応じて、カウンセラーは短期的な目標を選択します。
  • 行動を般化させ、維持するためにカウンセラーが計画を立てます。
  • 患者はのちに様々なスキルを学べるよう、まずはいくつか決まったスキルを学習しなければなりません。
  • 言語学習が一つ目の目標です。
  • リハーサル学習や誤り訂正による学習は消極性や行動変容を増長させ、モチベーションを低下させます。したがって誤りは避けられます。

包括的介入の結果

様々な行動介入の中で、自閉症治療法としての応用行動分析は以下のような分野で結果を残しています。

  • 20ポイントほどのIQの上昇を含む、発達度合いの加速。これにより患者は正常レベルのIQにまで到達することができます。
  • 適応行動を正常レベルにまで改善させることが可能です。
  • また、自己刺激や自傷、常同行動といった自閉症的特徴の排除も見込まれます。
  • たいていの場合5歳ごろから大部分の子どもたちにとって言語獲得が可能となります。
  • 行動の改善と社交能力の習得がよく見られます。
  • 生徒や学生であれば、普通学校に出席できます。
  • 結果はその後数年間持続します

その有効性を作用する包括的介入のバリエーション

行動療法についての調査で、特定のデータが治療の有効性の違いを示していることが明らかになりました。

  • 介入を開始するのが早ければ早いほど(おそらく4歳になる前から)、普通学校へ統合できる可能性が高くなります。
  • 介入が強力であればあるほど、より効果を得られます。そうは言ってもその子によってニーズは異なってくるのも事実です。
  • 初年度に改善が見られれば、次の年にも改善が期待できます。2年後になっても同じリズムで前進することが期待されます。
  • 行動療法からは、その他のあらゆる治療法よりも優れた結果を得ることができます。
  • インストラクターや教師やスーパーバイザー、そして親たちのトレーニングの質が結果を妨げることはありません。いくつかの研究では、携わったのが必ずしも自閉症の専門家だという訳ではありませんでした。
  • 成果を維持し、般化する上で最も効果的だったのは親の協力でした。
  • 自閉症を持つ人々の心理学的特徴に関する知識の中で、治療規定を強固なものにします。

自閉症の心理学的治療:個別の介入

多くの研究で行動介入が用いられ、学習に必要な基本条件から言語などの最も複雑な行動に至るまで、その成功を確実なものにしようという試みがなされてきました。

一方で自閉症治療における行動介入で最も重要な発見の一つが、破壊的行動(自己刺激など)が少なければ少ないほど、学習の可能性も高まるという事実でした。

この領域に対して研究者たちは二つの結論を導き出しています。

  • 自閉症児がテストである質問に答えられなかった場合、彼らはその回答を別の項目に分配します。
  • 破壊的行動が減少するにつれ、子どもたちが学習によって識別力を獲得できる可能性が高まっていきます。

どのように破壊的行動が維持されているのかを明らかにしようと、調査がなされてきました。そしてその要因は負の行動強化や正の行動強化、あるいは別の刺激の欠如です。

破壊的行動を減少させるにあたり、それらの行動を止めさせたり減少させることに直接的に働きかけることは効果的ではない、というのが導き出された主な結論です。そしてこういった行動を排除するための最も効率的な戦略の一つは、その他の行動の分化強化です

学力に加えて社交能力や言語能力、そして読解力についての指導を中心とした具体的な手法が治療の焦点であると言えるでしょう。

自閉症の心理学的治療:自然な発達的行動介入(ケーゲルら、1998年)

行動介入を基礎とした最近のいくつかの研究では、より”自然な”発達に焦点が当てられています。これが応用行動分析に基づく従来の介入との大きな違いを生んでいるのです。

例えば、最近確立された未就学児を対象とする介入は、彼らを自然で社交的な交流ができるような環境下に置くことで成り立っています。

ルーティーンや日々行うゲームなどの最中、そして介入が始まった当初から、子どもは学習環境を自分でコントロールできます。

経験的テスト技法に基づいたこういった介入では、発育学と同じくらい学習原理にも重点を置いています。

これが行われるようになったのは、学習の般化に向けた個々のリハーサルに基づく従来の手法が困難だったためです。

機会利用型学習や基軸行動発達支援法、ミリューの環境言語指導、そして自然言語指導などで、より自然な手法が模索されています。この学派の考え方によれば、これが自閉症児が言語発達とコミュニケーションを獲得する方法なのだそうです。

これらの介入は部分的には対話的プロセスの原理を基にしています。このプロセスは発達モデルや応用行動分析、そして親子間の対話の重要性などから生まれたものです。

自閉症 心理学的 治療法

自閉症の心理学的治療:実用的発達モデル(プリンザントとウェザビー、1998年)

このモデルは実用的発達および社会的発達に焦点を当てたものです。ここでは全般的なコミュニケーションだけでなく、言語習得前および口頭言語に着目する必要性を強調しています。

これに加えて、模倣行為や感覚過程の特性に関連する問題を減少させるためにも役立ちます。

さらに自然な社会語用論的文脈を強調したり、家族に参加を促したり、ペアワークを含めることを推奨したりもしています。

志向性や当番制の構築、共有の注意を持つこと、そしてコミュニケーションを主導する能力がこれを容易にします。そして子どもたちは自然な文脈で様々なツールを用いながら自らの機能のレパートリーを増やしていくことができるのです。


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