自己愛性パーソナリティ障害の5つの原因
自己愛性パーソナリティ障害(NPD)の原因は、幼少期に何かが不足していたり過剰に与えられたりした経験と関連しています。子どもの時に十分な量の様々な刺激を受けられなかったり、求めていた愛情を与えられなかった経験が原因になったり、あるいは色々な種類の「やり過ぎ」がナルシシズムに繋がってしまうのです。その一例としては、親が子どもの欲しがるものをなんでも与えようとやり過ぎてしまう場合が挙げられます。
ナルシシズムに関連する問題は小さなものから深刻なものまで、度合いが様々です。時には単にそれがその人の個性として捉えられる場合もあります。しかしもっと深刻なのが自己愛性パーソナリティ障害と呼ばれる状態です。こうなると、自己を誇張するような態度や自分本位な態度がその人物のパーソナリティ全体を侵食します。それに加えて反社会的特性が見られる場合もあります。
“内気さにはナルシシズムの奇妙な構成要素が含まれています。それは、他の人々は自分の服装や行動をかなり気にしている、という思い込みです”
NPDの原因となっているものに応じて、その人のパーソナリティに与えられる影響は異なってきます。ただ、強さの度合いは様々であるとはいえ、どの症例にも共通して見られる特徴もあります。
全般的に顕著に見られるのは、自分は偉大な存在であるという妄想や傲慢さ、他人を利己的に利用するような行為、そして対人関係の問題です。また、劣等感の印である数多くの特性も密んでいる場合があります。以下でNPDの主要な原因をご紹介します。
虐待は異常なナルシシズムが生まれる原因の一つ
大抵の人は、幼少期に虐待を受けた人々は完全に内向的な大人に育つだろう、と考えていると思います。しかし、必ずしもそうなるとは限りません。多くの場合、それとは正反対の結果になってしまうのです。虐待の被害者は過度にナルシシズムの強いパーソナリティを発達させてしまい、周囲の人々に対して優越感を感じたいという欲求のみを抱くようになります。
虐待は、ナルシシズムが生まれる原因の中でも特に複雑で、虐待を受けた時に何が起こるかと言うと、ある種の埋め合わせや防御機構のようなものが働きます。これらは今後二度と誰かの犠牲者にならないようにするための手段ですが、これにより自己像が誇張されてしまうのです。この防御機構に頼る生き方を続けていくと、彼らの人生の中で異常なナルシシズムが形成されていきます。
ネグレクト
ネグレクトの場合も、虐待を受けた時と似たような影響をたくさん受けることになります。ネグレクトを受けた子どもは衝撃的なほどに自らの傷つきやすさを思い知るので、自分自身と現実世界との間に壁を作って自分を守ろうと考えます。その壁こそが、ナルシシズムなのです。このようなケースでは、ネグレクトの結果として他人に共感することが非常に困難になってしまいます。
こういった場合には、ナルシシズムは自己を守る殻のような役割をします。あまりにも弱い自分を隠すための殻です。そのため、こういった人々にとって他人から拒絶されることへの恐怖感を抱いてしまうことはごく普通のことなのです。もしくは、心の中の自己に対して言い聞かせてきた内容を恥じるような感情が潜んでいる場合もあります。ナルシシズムはこういった感情をシンプルに覆い隠してしまうのです。
一貫性のない親たち
親たちの一貫性のなさもNPDの主な原因の一つです。親たちの言葉と行動の間に一貫性がない場合や、あるいは行動自体に一貫性がない場合に引き起こされます。ある事柄について何かを言った後に、言葉の内容とは正反対の行動をとるような親たちがNPDの原因になります。また、不安定で突拍子もなく、次にどんな行動をしたりどんな反応をするのか予測が不可能な親たちも同様です。
これは不安症を抱える落ち着きのない親たちに特徴的で、これにより子どもたちの心の中には痛切な不安感が芽生えてしまいます。こういった親たちは子どもを過度に褒め称えまくり、しかしあまりに厳し過ぎるような批判もします。ナルシシズムは、この子どもを惑わすような一貫性のない環境が生み出す苦痛に対する反応なのです。
空虚な褒め言葉やプレゼント
子どもに中身の無い賛辞を送るような行為は、密かに罪悪感を抱いている親たちに非常に典型的です。彼らはおそらく子どもに対して自分が十分な時間や関心を持てていないことに気づいており、それが良くないことだとわかっています。そのため、埋め合わせのために子どもが誇りに思っていそうな特質を強調して不適切に褒めようとするのです。彼らはその子が本当にそのような特質を持っているか否かに関わらずに褒めるので、かえって子どものことをほとんど何も知らないように見えてしまいます。
ここでは、過度な褒め言葉や高価なプレゼントが利用されます。それが親にとって本物の愛情の不足を埋め合わせるための手段なのです。彼らは子どものすること全てを褒めなければならない義務感のようなものを感じています。そうすれば誰からも自らの子どもへの愛情を疑われずに済むだろう、と考えているのです。しかし、このせいで子どもは現実とはかけ離れた理想の自己像を心の中で育み始めてしまうこととなります。
過保護
過保護は虐待の一形態です。このような育児法は、子どもに恐怖や不安というメッセージを伝えてしまいます。 過保護な親がいる子どもたちは、自分には人生の試練に直面した時に自分一人でそれに立ち向かう力が無いと思い込んでしまうのです。また、自分には「何か特別な特徴」、つまり生まれつきの弱点が備わっていて、常にそのケアをしてもらう必要がある、と子どもたちは考えるようになります。これが不安感とナルシシズムの両方を増大させていくのです。
時とともに、その子は外の世界を遮断するようになっていきます。自分だけの泡の中に閉じこもるようになるのです。そしてもし自分を本当に愛してくれる人がいるなら、彼らは自分を守ってくれるはずであり、あらゆる自分の気まぐれな考えや”ニーズ”に合うものを提供してくれるはずだと考えます。また、他人のニーズに対しては無関心になってしまいます。
NPDの原因の多くは、その人物の親自身のナルシシズムです。彼らは子どもたちを利用して自らの自尊心に残された傷を癒そうとしたり、あるいは彼ら自身の自分本位な欲求を果たそうとします。問題なのは、結果的に彼らの期待とは正反対な弊害が生まれてしまうことです。しかし、自尊心を組み立て直し、強固にそして健全にするために本当に有効なのは、心理療法を受けることです。