子どもは離婚しない
公式の登録データによると、2016年アメリカで800,000件以上の離婚がありました。離婚には、家族皆が守られるように関係を調整する法的な枠組みがあります。それでも、家族の生活全体で、最も厳しい経験のひとつでしょう。この過程は相互の合意によることもありますが、大抵、どちらかが初めの一歩を踏み出します。家族は、深い守りの感情、愛、承認をもたらす存在です。しかし別れは、孤独、恐怖、痛み、怒りを残します。
結婚の終わりは、過去の亡霊へと続く扉を開きます。危機の中では個人の過去が反映され、今と向き合う力が明らかになります。憎しみや怒りを忘れられる人もいれば、良い時間を消してしまう人もいます。現実と向き合えない人は、来ることのない仲直りを願います。別のパートナーを、時には二人も三人も作って、すべてを忘れようとする人もいます。お分かりいただけたように、反応の仕方は人によって様々で、幅広いものです。
結婚はやり直すことができますが、母親であること、父親であることは一生続きます。離婚により、大人は関係を断つことにします。しかし、親としての役割においてはそうはいきません。子どもは、暴力や怒りの環境に置かれるべきではありません。子どもは、道具として使われるべきではありません―相手を傷つけるための銃弾でも、仲直りするためのメッセンジャーでもないのです。
戦いが終わらない時
離婚が、父親や母親としての役割を果たす上での妨害になってはいけません。また、子どもが必要とする安心感、信頼、秘密を傷つけることになってはいけません。子どもは、どちらか一人に属するのではありません。復讐、憎しみ、口論の道具にしてはいけないのです。
子どもは両親を頼ります。その場所に一緒に住んでいないとしても、健康に成長するには、両方との関係を維持する必要があります。悲しいことに、どちらかが一方より子どもを愛している、世話をしているという主張は珍しくありません。これにより、一方の親からの愛は必要でない、または十分ではないと言っているのです。これは、親が犯す最も重大な間違いのひとつです。また、子どもを大きく傷つける原因のひとつでもあります。
健康的な感情の発達のために、子どもは両親との繋がりを必要とします。お互いを楽しむことは、子どもの、そして、親の権利です。
離婚の波及効果
争いの後の離婚で、親がお互いの子供との関係を邪魔することはよくあります。最も深刻なケースでは、一人が、または、両親ともに子どもを無視したり、放棄することさえあります。ここでは、様々なことが起こりえます。父親または母親、もしくは両親が子どもを放棄することもあります。一人または両親が、離婚により生じた摩擦に子どもを巻き込むこともあります。
親の間で起こる衝突からくる影響もたくさんあります。その程度は、親がどう対応するかに左右されます。解決の仕方や期間によっては、感情的コストが高くなります。親が衝突に上手く向き合わなければ、すべてにおいて不満、攻撃性、緊張が生じます。これにより、家族間に距離ができ、感情的不快感が大きくなる原因になることは珍しくありません。
放棄の結果
離婚は、家族の動き、特に関係において大きな変化を伴います。ここで、子どもの放棄があってはいけません。争いの後の離婚、さらに、片親の不在、不定期または完全な消失があると、子どもの苦痛は大きくなります。親の一人がいないことは、それだけでもつらいものです。親の一人が遠くに住み、面会すべき時に面会しない、または、単に何もしなくなったということを子どもが知った時、それはより痛みの大きい戦いになります。
放棄された子どもは、親権をもった父親または母親に不安そうにしがみつくことがよくあります。わがままな行動をとり、親の時間をひとり占めしようと、関係をコントロールしようとすることもよく見られます。この裏には、父親または母親を失うことへの恐怖、強く根付いた不安が隠れています。不在の親との決別は非常に難しく、子どもは心の内で、それを切り離そうとします。親が戻った時のことを想像し、空想にふけることは珍しくありません。離別を避けるため、このように関係を理想化します。
親がいなくなった時、子どもは罰を受けていると感じるかもしれません。反抗や怒りの気持ちをすべて抑圧しなければならないと思い、とても従順で、素直になることさえあります。そして、抑圧した攻撃性を自分に向けることがよくあります。また、反対に、衝動的、攻撃的、反抗的になることもあります。
「子どもがいるからといって、あなたは父親ではない。それは、ピアノをもっているからといって、あなたがピアニストではないのと同じように」
-マイケル・レヴィン-
忠誠心の衝突
忠誠心とは、複数の人の期待やニーズを統合する連帯や責任の感情です。それは繋がりや倫理的側面であり、家族の場合、家族の構成員間の理解や一貫性です。価値体系は、世代から世代へ、家族から家族へと伝わります。一人一人が、信頼と成果が必要不可欠な相互の忠誠心のネットワークに組み込まれています。
多くの家族がこのような忠誠心を偽装しています。その期待は、はっきりとは示されていませんが、家族が適応することを期待される暗黙のルールがそこにはあります。家族内の一種の評価であり、グループの一員として認識されるための精神です。
この家族のネットワークに適合するために、家族の一人一人が個人のニーズをそれに合わせなければならないことを意味します。二人の関係が終わったとしても、親の間でのケンカが収まらないことはよくあります。ここで生じるのが、争いを長引かせる新たな枠組みです。このようなケースで、子どもが少なくとも親の一人から安定した愛を受ける必要性を感じることは異常ではありません。これは、忠誠心の衝突と呼ばれます。
子どもは、どちらかを選ぶよう迫られ、選べなければ孤独を感じ、両親に対し不誠実であると感じてしまいます。また、守られていると感じたいために一方を選ぶと、どちらかを裏切っているように感じます。一人の親に忠誠心を示すと、もう一人の親に不忠実であるかのように家族の動力は発展します。
「父親が子どもに残せるもので一番良いのは、毎日の少しの時間である。」
-バティスタ-
衝突における私達の責任
子ども達と、また、もう一方の親とのコミュニケーションの中で、子どもに矛盾したメッセージを伝えないことが基本です。例えば母親が、お父さんのところに泊まりに行っても気にしないと言いながら、子どもを抱きしめないなどです。このようなメッセージは諸刃の剣です。言語、非言語を使い、子どもを大きく傷つけるメッセージを送っています。
子どもは、自分は何か間違ったことをしていると感じますが、それが何かは理解できません。親が、感情の衝突を作っているためです。このような動力は、子どものメンタルヘルスに非常に大きな害となります。
カップルが一生添い遂げるのが理想です。しかし、両者や家族全員が苦しんでいる、また、その関係が破滅的であれば、別れが唯一の選択肢かもしれません。
決断する
一緒にいることが痛みを生んでいるのであれば、離婚や、専門的な結婚や家族カウンセリングを受けるのも良いでしょう。別れは、必ずしも親としての責任を放り出すことや、相手に対し子どもを利用することを意味するわけではありません。
離婚の過程は、大人間のことで、衝突を上手く管理し、子どもを含めた入り交ざった感情ではなく、大人は大人の対応をしなければなりません。
子どもは、安心を感じる大人の保護やサポートを必要としています。この安定を与えるのは親の責任です。親の一人、または両方がこの過程に耐えられないのであれば、専門的な手引きや精神的援助を求めましょう。
カウンセラーは、感情のコントロール、衝突への対応、決断、責任、支援などにおいて助けてくれます。人生の一つの扉を閉め、未来と向き合えるよう手を差し伸べてくれます。衝突への対応の仕方が、それが建設的であるか、また、破壊的であるかを決め、特に子どもがいる場合はそうです。
「欠陥がなく、完璧な人間性を親が求めることは、不公平で傲慢である。」
-シルビオ・ペリコ-