マリリン・ボス・サバント:最も高いIQ保持者
知性には様々な定義があります。一般的には、問題を解決するために情報を理解、処理、生産し、使う能力だとされているようです。地球上で最も賢い人物といえばアルベルト・アインシュタインを想像する人が多いのではないでしょうか。しかし、実はそうではないと言うと驚かれるかもしれません。彼の知能を超えた優秀な脳の持ち主も何人か存在します。今日は、その一人であるマリリン・ボス・サバントをご紹介します。
ボス・サバントは世界で最も知的な人物とされています。こう聞くと、きっと彼女は優秀な科学者だと思うかもしれません。ところがそうではないのです。記事を読み進め、この素晴らしい女性について知りましょう。
マリリン・ボス・サバントとは?
マリリン・ボス・サバントは、1946年8月11日ミズーリ州セントルイスに誕生しました。母親はイタリア人、父親はドイツ人でエルンスト・マッハの子孫です。マッハは光学、音響学、熱力学において重要な発見をしています。ボス・サバントは高校では同級生に拒絶され、先生は彼女が女性であることからその知性は無駄だと考えていました。
ボス・サバントはその後、高校を卒業し、ワシントン大学で哲学を専攻しました。しかし大学2年の時、家業のランドリー業を手伝うために大学を辞めるよう両親に言われます。そして経済的に自立すると、ボス・サバントは作家としてのキャリアをスタートさせます。
2度目の結婚相手は、人工心臓「Jarvik-7」を作ったロバート・ジャービックでした。ボス・サバントは夫の経済面を管理し、アシスタントとして心臓疾患の予防と研究に努めました。また、国立女性歴史博物館で働き、女性のステレオタイプに対する闘いを讃えられ、“Women Who Make History award(歴史を作った女性に与えられる賞)”を受賞しました。
知能測定
ボス・サバントは幼少期に複数のIQテストを受けています。7歳の時はIQ127でした。その3年後、IQ167になりました。スタンフォード・ビネー式知能検査での彼女の記録はIQ228 です。この記録により、1986年彼女の名はギネスワールドレコードに載りました。
その後、メディアは彼女に対し興味を持ち始めます。雑誌『Parade』が初めて彼女を取り上げ、Q&Aを掲載しました。この記事の人気が高かったため、コラム“Ask Marilyn”が始まりました。このコーナーでは、数学、論理、哲学、政治などの一般常識とされる質問に彼女が答えるというものでした。
このコラムはさらに彼女をかきたて3冊の本を書くこととなりました。『Ask Marilyn: Answers to America’s Most Frequently Asked Questions (1992)』、『 More Marilyn: Some Like It Bright (1994)』、 そして『Of Course I’m for Monogamy: I’m Also For Everlasting Peace and an End to Taxes (1996)』の3冊です。
「モンティ・ホール問題」を解く
1990年、マリリンはクレイグ・F・ウィテカー から次の問題が書かれた手紙を受け取りました。
あなたはクイズ番組に出ており、3つのドアが選択肢としてあります。1つのドアの後ろには車、残りの2つにはヤギがいます。あなたは①のドアを選ぶとします。そこでドアの後ろを知っている司会者は、ヤギのいる別のドア③を開けてみせます。そして、「②のドアの方を開けますか?」とあなたに聞きます。選択を変えた方がいいでしょうか?
これに対しマリリンは、「選択肢を変えるべきです。最初のドアは確率1/3で、もうひとつのドアは2/3の確率があります」と答えます。この(正しい)考えには、思いもしない反応が返ってきました。
これを発表した後、彼女の答えに憤慨した人達から、何千もの手紙が雑誌『Parade』に届きました。
「あなたは間違っています。まったくもって不正解です。基本的原則が理解できていないようなので、私が説明しましょう。司会者がヤギのいるドアを開けた後、正解の確率は1/2です。選択を変えても変えなくても、確率は変わりません。この国には、数学が分からない人が山ほどいるため、世界最高のIQの持ち主がそれに加わる必要はありません。恥を知りなさい!」
-フロリダ大学 スコット・スミス博士-
「数学を見る目は女性と男性で違うのかもしれません」
-ドン・エドワード、 オレゴン州サンリバー-
答え
圧力は高まりましたが、ボス・サバントは答えを変えませんでした。この「モンティ・ホール問題」に対する彼女の解決法を4つのコラムにまとめています。その2つ目で、可能性を明確にするメソッドを解説しました。次のように、確率を表にしています。
ドア① | ドア② | ドア③ | 結果 | |
可能性1 | 車 | ヤギ | ヤギ | 変えてはずれる |
可能性2 | ヤギ | 車 | ヤギ | 変えて当たる |
可能性3 | ヤギ | ヤギ | 車 | 変えて当たる |
可能性4 | 車 | ヤギ | ヤギ | 変えずに当たる |
可能性5 | ヤギ | 車 | ヤギ | 変えずにはずれる |
可能性6 | ヤギ | ヤギ | 車 | 変えずにはずれる |
これを見ると、選択肢を変えると、車が当たる確率は2/3だと分かります。変えない場合、確率は1/3です。
3回目のコラムでは、この表と確率について説明しています。そして、4回目には、多くの読者がモンティ・ホール問題を試し、彼女の回答を理解してくれていると明らかにしました。数学者ポール・エルデシュまでも、彼女の回答を誤りだとしたことに対し謝罪しています。
謙虚なマリリン・ボス・サバント
読者が好感を持てなかったのは、常識に対する「攻撃的」な回答ではなく、表立って解決した人物が女性だったことが理由の一つになっています。多くの数学者や大学がこの問題を解こうとし、間違った解答をしてきました。ボス・サバントはただ女性であったというだけで、このよな差別を受けることとなったのです。(残念なことに今でも)知性は、男性に優勢であると信じている人は少なくありません。
ボス・サバントは世界で優れた頭脳を持っている人物の一人でありながらも、謙虚な人物です。自分が偉大な数学者でもなければ、写真記憶があるわけでもないことを認めています。また、自分の長所は客観的な分析力、決断力、問題解決能力であると語っています。そして、知的な人はこれらに優れていることが多いと彼女は考えます。知的な人は特定の分野や知識の幅を鍛える傾向があります。
「世界には知的な人がたくさんいるが、物事を違った方法で取り組むという勇気は足りていない」
-マリリン・ボス・サバント-