物語:『自分のアイデンティティを知らなかった鳥』

アイデンティティに関する、素晴らしい物語をお楽しみください!
物語:『自分のアイデンティティを知らなかった鳥』

最後の更新: 27 1月, 2021

この物語は、謙虚だけれど情熱に溢れる、人里離れた辺鄙な場所に住むヤギ飼いについてのお話です。ある年、そこには雨があまり降らず、彼は牧草が育たないのではないかと心配していました。そうなるとヤギたちの食料がなくなってしまうからです。

ヤギ飼いは、近くに山があることを知っていましたので、ヤギたちとともに頂上まで登ることにしました。そこなら湿気があるために牧草があるだろう、と考えたのです。

朝のかなり早い時間から、彼らの山の頂上を目指す旅路は始まりました。ついに頂上にたどり着くと、そこには全てのヤギたちのために十分な量の牧草が生い茂っていました。その後、家へ帰る途中、あるものが彼の注意を引きます。

崖の上に、小さなワシの巣があったのです。彼はワシを嫌っていました。昔飼っていたニワトリが襲われたことがあるからです。しかし、彼は興味をそそられ、近づいて見てみることにしました。

巣の中には、二羽のワシのヒナがいましたが、そのうち一羽はすでに死んでいました。どうやら、この巣は高いところからここへ落ちてしまい、かわいそうなヒナはその衝撃に耐えることができなかったようです。もう一羽のヒナも傷ついており、呼吸するのさえ辛そうです。ヤギ飼いはそのヒナに同情し、家へ連れ帰ることにしました。

“自我状態にあるとき、その人の自身に関する感覚やアイデンティティは、施工を行う心によって定められる”

エックハルト・トール

物語:『自分のアイデンティティを知らなかった鳥』

手当てによる影響

ヤギ飼いは、辛抱強くヒナの怪我を治してやりました。エサを与え、世話をします。彼はヒナはまだ放してやるには小さすぎると考え、しばらくそのまま家にいさせました。しかし、ヒナが成長するにつれ、彼は不安に思い始めます。ヤギやニワトリが襲われるのではないかと心配していたのです。

ヒナが一人前のワシになると、彼はもう別れの時だ、と決心します。そしてある朝、ワシが遠くへ飛んでいけるように、広々とした野原に連れて行きました。

しかし驚くべきことに、ワシは家路に着く彼の後を追いかけ始めました。彼は再びかわいそうに思い、家へ連れて帰ることにしました。

それから数日間、彼はワシを野に放とうとしましたが、いつでもワシはヤギ飼いの後を追って来てしまいます。ワシは飛ぶことができなかったので、前後に飛び跳ね続けていました。

そのワシは彼に非常に懐いているようだったので、彼は野生に帰すことを諦めました。彼はワシをニワトリ用の前庭に、他のニワトリたちとともに入れてやりました。はじめ、ワシを見たニワトリたちはとても怖がりましたが、すぐにワシが脅威ではないことに気づき、自分たちの仲間として扱うようになりました。

奇妙な訪問者

時は過ぎ、ワシは他のニワトリと同じように振る舞うようになりました。ニワトリのようにクワックワッと鳴くようにすらなり、ヤギ飼いもニワトリのようにワシを扱いました。

しかし、それからワシの専門家が農場を訪れます。専門家は、偶然通りかかったところ、ワシがニワトリたちとともに暮らし、クワックワッと鳴いていることに度肝を抜かれたのです。

そして彼はヤギ飼いを探し出し、この奇妙な現象について説明を求めます。謙虚なヤギ飼いはこれまでの物語を全て話し、彼にとってこのワシは他のニワトリと変わらないのだ、と伝えました。

しかし専門家はこれに異を唱えます。 全ての動物にはその本質というものがあるのだ、彼は言います、ですからワシがシンプルに自身が何者なのかを忘れてしまうことなどあり得ない、と。彼はヤギ飼いにその持論を証明させて欲しい、と頼み、ヤギ飼いは承諾します。

物語:『自分のアイデンティティを知らなかった鳥』

アイデンティティについての物語

専門家はワシに肉片を与えましたが、ワシはこれを拒み、イモムシやコーンを食べるほうを選びます。ワシは肉を見て不快な気持ちになってしまったのです。そこで、専門家はワシを連れてハシゴを登り、空に放ちました。

専門家はワシが飛ぶものだと予想していましたが、驚いたことに、ワシは落下して怪我をしてしまいました。それから数日間の熟慮の末、彼はヤギ飼いがワシを見つけた崖を見て、全てが始まった場所に戻ることが必要だと決心します。

翌日、専門家は、ワシを崖に連れて行きました。ヤギ飼いとの出会いの場所です。到着してすぐは、ワシはいささか落ち着かないように見えました。しかし専門家は、もうすぐワシはワシとしての真の本質を取り戻すはずだ、と待っていました。

彼は一晩中そこで待ち続けました。そして朝が来ました。ワシは、太陽の光線に当たるのを嫌がって不快そうにしています。これに気づいた専門家は、ワシの首を掴んで無理矢理太陽に顔を向けさせました。

それが、ワシが明らかに専門家の行為に苛立って彼の手から逃れた瞬間でした。それからワシは翼を広げ、彼の元を離れて飛んでいきました。


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  • Revilla, J. C. (2003). Los anclajes de la identidad personal. Athenea digital: revista de pensamiento e investigación social, (4), 54-67.

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