脳の可塑性:特徴とタイプ
「脳の可塑性」という用語は、神経可塑性としても知られており、私たちの神経系が、機能面および構造面両方において自身を修正するために持つ能力のことです。これは時間の経過とともに自然に起こりますが、怪我に対する反応としても現れます。
文字通り、可塑性というのはある物体が物理的に操作可能であることを指します。従って、これが脳の話になると、それは人間の神経系にある内的および外的刺激に対して、構造や接続、そして機能を再編成することによって対応する能力のことを意味します。
可塑性は、人間の脳の神経的発達と神経系の適切な機能にとって重要なカギとなる部分です。またこれにより、環境の変化や加齢、病気などに対応することができます。ニューロンが新たな性質を取り入れるのを助けるだけでなく、常に十分な神経接続が確保されるようにしてくれる能力でもあります。
私たちの脳は、「可塑性のある」構造になっており、いくつかの重要な研究によってそのことは示されてきました。また、脳の可塑性が複数の神経システムレベルで生じることも明らかになっています。神経組織、ニューロン、グリア細胞、シナプスなどにそれぞれ可塑性が存在するのです。
神経ネットワークはどのように機能しているのか?
脳の可塑性はもっぱら生理学的ニーズや神経活動の変化、あるいは神経組織の損傷に対する反応として生じます。
また、可塑性は発育や新たな運動スキルや生涯を通じて使用するようなその他の事柄の習得の際の神経ネットワークの形成で重要な役割を担います。可塑性は、以下のような数多くの生物学的プロセスにおいてその役目を果たしています:
- 神経発生
- 細胞移動
- 神経興奮性への変化
- 神経伝達
- 新たな神経接続の形成
- 既存の神経接続の修正
構造的かつ機能的な脳の可塑性
可塑性とニューロン間の神経伝達の効率性は、シナプス前分子、細胞外分子、シナプス後分子への適応変化に左右されます。つまり、可塑性はシナプスの数、位置、配置、密度、またあらゆる領域を変化させる必要性がない場合にも起こり得るということです。
シナプスの形成、排除、拡張などの回路の接続に関する変化については、長期増強の初期段階や、樹状突起の幾何学的変化から電気特性の変化などが、こういった可塑性の明確な具体例と言えるでしょう。
ヘッブ型可塑性と調整型可塑性
また、神経伝達効率性の可塑性と構造的可塑性は、ヘッブ型と調整型可塑性にそれぞれ分類されます。
ヘッブ型可塑性では、シナプスの強度に変化が生じます。これはつまり強度の増加あるいは減少を意味し、刺激の数秒後あるいは数分後に起こります。
長期増強の初期段階が、ヘッブ型可塑性の典型的な例です。これは刺激が対応する前シナプス・後シナプスの神経衝撃を活性化した時に始まり、シナプスの効率性を増長させます。また、これにより増強も促進されます。つまり、ヘッブ型可塑性は正のフィードバックループを作り出すのです。
一方で調整型可塑性は、これよりもかなりゆっくりと行われます。数時間、あるいは数日間を要するのです。この可塑性では、イオンチャンネルの密度や神経伝達物質の分泌、または後シナプス受容体の感度などが修正されます。
ヘッブ型可塑性とは異なり、調整型可塑性は負のフィードバックループを作り出します。ハイレベルな神経活動への反応として、神経接続を減少させるのです。その後、活動が失われると接続は再度バックアップされます。
ヘッブ型と調整型:二つの異なる役割
中には、ヘッブ型可塑性と調整型可塑性は神経ネットワークの機能という面に関して異なる役割を担っている、と提唱する人々もいます。ヘッブ型可塑性は、生涯を通じて起きる変化や、記憶を蓄積する能力、記憶を維持する能力などにおいて重要な役割を果たします。
他方、調整型可塑性は神経ネットワークの自己組織化に関連しており、ネットワークの安定を保っています。また、この可塑性はシナプスメカニズムや、ニューロン興奮の調整、シナプス形成、シナプス安定性の強度、樹状分岐などのシナプス外メカニズムも使用されます。
神経系の発達とともに、可塑性が生じるのを確認することができます。これは、私たちの脳が自身の構造や機能を神経活動の変化に応じて修正するためのカギとなる特性なのです。また、これにより学習や記憶、あるいは損傷を負った後の再学習のための基礎となる新たな能力を獲得するために役立つものでもあります。
まとめると、可塑性とは脳を柔軟に保つためのプロセスです。柔軟性があるということは、環境により良く適応することができ、生き抜くことができるようになるということを意味します。
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