毒性ストレスが子どもの脳の発達に与える影響

2019年9月9日
毒性ストレスは脳の発達構造を弱らせ、学習や行動、身体的・精神的健康に長期的に影響を与えてしまいます。

子どもにとって、過剰なあるいは長期間のストレスに身体や脳がさらされると、その発達に影響を与える恐れがあります。実際に、毒性ストレスには彼らの一生を通じてその学習、行動、そして健康へ有害な影響を与えかねないのです。

困難への立ち向かい方を学習することは幼少期の発達において重要な部分です。身体は脅威に脅かされると、心拍数や血圧を上昇させ、コルチゾールのようなストレスホルモンを増やすことでこれに反応します。

大人がきちんとサポートしてくれるような環境で、子どものストレス応答が何らかの脅威によって活性化された場合、この環境がその脅威による心理的影響を和らげてくれます。従って、そういった環境下の子どもたちは健全なストレス応答システムを構築することができるのです。しかし、ストレス応答が過剰だったり長く続いてしまうと、バッファーとなっていたサポートしてくれる大人との関係性の中に混乱が生じ、ストレス応答システムや脳の構造が影響を受けてしまいます。

保護者である大人との応答関係がない場合、子どものストレス応答システムは警戒態勢へとうつり、その状態が続いてしまいます。これにより、発達の遅れや学習問題、そして問題行動などがその子に生じる可能性が高くなるという影響が出てきます。さらに、肥満や心臓病、鬱、薬物濫用、アルコール中毒、その他大人になってからの健康問題などのリスクが高まってしまいます。

広範囲にわたる生物学的研究により、慢性的で深刻なストレスは脳や生物学的システムの発達に有害であるということが示されています。貧困、虐待、ネグレクト、あるいは暴力的な環境といった重大な苦境は全てその引き金となり得ます。さらに、保護者が薬物を濫用していたり精神疾患を患っている場合も子どもも影響を受けてしまいます。

毒性ストレスが子どもの脳の発達に与える影響

幼少期のストレス

脳がどう発達しどう機能するかという点において、幼少期の経験はとても重要な役割を果たします。子どもとその周囲の環境との間のやり取りは、長期的に学習、行動、そして健康に影響を与えるのです。健全な脳の構造発達のためには、受容力のある保護者の存在は欠かせません。同様に、彼らと良好な関係性を築くことも必要です。彼らは子どもたちがストレスフルな経験をどう処理するかを学習する際に手助けとならねばならないのです。

普通、ストレス応答は有害事象あるいは要求過多な状況に対する生理的な応答です。これにより神経系、内分泌系、免疫系で生化学的変化が生じます。しかし、ストレスがいつもネガティブなものであるとは限りません。ストレスはポジティブなものか、不快だけれど耐えられる程度のものか、有害なものかのいずれかです。

ポジティブなストレス応答は、子どもの成長と発達に欠かすことができません。子どもは、両親からの保護や平穏さといった、人間関係の面や感情面でショックの吸収剤となってくれるようなものを通じてサポートを受け取るのです。それぞれのポジティブなストレス応答の後、その子どもはモチベーションや耐久性を身に付けることができます。

不快なストレスに対する応答はさらに深刻で頻度も多く、長続きします。また、身体の応答も増します。これらの生化学的応答は脳に悪影響をもたらす可能性を秘めているのです。

不快なストレスへの応答では、受容力のある人間関係に守られた子どもなら、一旦その苦境が排除されれば、脳も体内の器官も完全に回復します。従って、保護者は社交面でも感情面でもしっかりと子どもたちをサポートしてやらねばなりません。

子どもにとっての毒性ストレス

子どもに襲いかかる毒性ストレスは、異常なストレス応答を引き起こします。その結果、コルチゾール値の上昇が持続してしまいます。同様に、炎症状態が長引いて身体がこれを治せなくなってしまいます。この状態は、ストレスが去った後でも起こります。

毒性ストレスにより、ストレス応答が継続的に活性化している状態となってしまいます。特に、身体が正常に戻れなくなるのです。保護者からのサポートや愛情をもらえず、安心が与えられなかった場合、正常なストレス応答ができなくなります。

子どもへの毒性ストレスはとても深刻な問題です。毒性ストレスに晒されている子どもたちには健康への長期的な悪影響が懸念されます。しかし、この悪影響の多くは彼らが大人になるまで出現しません。この悪影響には、不適切なコーピングやストレス処理技術などが含まれます。また、精神疾患や不健康なライフスタイル、あるいは身体的な病気に繋がる恐れもあります。

その子どもの経験が不運なものであればあるほど、発達の恐れやその後の健康問題がより出現しやすくなります。例えば、心臓病、糖尿病、薬物濫用、鬱などです。

毒性ストレスが子どもの脳の発達に与える影響

脳の発達と毒性ストレス

子どもたちは攻撃性などの外的反応および不安や鬱状態などの内的反応を経験することになります。問題なのは、こういった反応はストレスやトラウマに晒されて育った子どもにだけ特有であるというわけではない点です。攻撃的な子どもが暴れる様子を目にすることはよくありますが、内なる痛みに気づいてもらおうとしている子どもは人々から気づかれにくいのです。

毒性ストレスやその悪影響を引き起こすトラウマは、正常化にもかすかに影響を及ぼします。世界に対して広い視野を持てていない子どもたちは、おそらく家庭内暴力は一般的なものであり、共同体内での暴力の存在を当然のことのように考えてしまうでしょう。

発達に関しては、苦難を経験している子どもは永続的に脳の構造が変化してしまったり、エピジェネティクスな変化が起こったり、遺伝機能が変更されてしまう危険に晒されています。発達への長期的な影響は重大であり、ストレス由来の疾患を引き起こす危険性もあります。

毒性ストレスへの応答は、神経内分泌免疫ネットワークに影響を与えます。従って、これがまた長期的かつ異常なコルチゾール反応を引き起こします。炎症状態の長期化を含む免疫調節異常の結果、子どもたちが感染症にかかるリスクと頻度が増大するのです。

加えて、科学者たちは、毒性ストレスへの応答が抑うつ障害、自制心の欠如、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、精神病など、心理的な障害に繋がる可能性もある、と指摘しています。

また、幼少期に困難を経験した大人は正常な人よりも身体的な病気にかかりやすく、不健康になってしまうこともわかっています。この不健全な状態というのは多岐にわたり、アルコール中毒、慢性閉塞性肺疾患、鬱、ガン、肥満、自殺願望、冠動脈疾患などを含みます。

私たちにできることとは?

専門家は、もっと専門家のサポートを受けやすくすべきだと提唱しています。これは特に、毒性ストレスに苦しむ子どもたちを助けるための知識や技術が十分に備わっていない保護者たちにとって役立つでしょう。また、専門家たちは既存の介入プログラムのサポートも提案しています。

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  • Kuehn, B. (2014). AAP: Toxic Stress Threatens Kids’ Long-term Health. JAMA312(6), 585. doi: 10.1001/jama.2014.8737