精神分析学における「ボロミアン環」

ボロミアン環は心の働きを理解するためのひとつの考え方です。起源は、ラカンの精神分析学にあります。
精神分析学における「ボロミアン環」
María Alejandra Castro Arbeláez

によって書かれ、確認されています。 心理学者 María Alejandra Castro Arbeláez.

最後の更新: 21 12月, 2022

精神分析学は複雑で、多くの専門家がメタファーや類推を用いることで概念化しやすくしています。このアナロジーのひとつが「ボロミアン環」で、心の働きをうまく説明しています。

ボロミアン環について学ぶと、個人の思考、感情行動を様々な角度で探索するラカン派の精神分析学を学ぶことができます。また、現実世界との個人的繋がりとも関係しています。

ジャック・マリー・エミール・ラカンは、1901年フランスで生まれた精神分析学者で精神科医です。現代のフランス構造主義を代表する人物のひとりです。彼の理論は、受け入れられも拒絶されもしました。フロイト派運動に関わり、国際精神分析学会との間に緊張をもたらした人物でもあります。彼は学会から距離を置くことになりました。そして1964年、パリ・フロイト派を立ち上げました。

ラカンの精神分析学への貢献は、哲学、言語学、芸術にも関係しました。アンドレ・ブルトンやサルバドール・ダリなどの芸術家とも交友があり、ハイデガーやシュトラウス、ヘーゲルの作品について詳しく解説しています。ラカンの功績は、論争をもたらしがちです。ラカン自身はフロイト派への帰還を主張していますが、フロイトのルーツがみられないと考える人もいます。また、ラカンは精神分析学者は中立的な傾聴者ではなく、無意識の欲望や快楽を強調します。

ラカン ボロミアン環
ジャック・ラカン

ボロミアン環とは?

ボロミアン環とは、3つの輪からなる絡み目(鎖)です。1つの輪が切られると、すべてが離れます。起源はボッロメオ家の紋章にあります。

ラカンはこの絡み目を使い、次の部分に分けられる話の主体の構造を説明しています。

  • 想像:イメージに関連するものです。自己の構造という基礎があり、母親から始まる識別、人のイメージを通し発展します。
  • 象徴:本質的には言語的特性があります。人と情報を交換する間主観的分野と関係します。また、知識、文化、大文字の他者にも通じます
  • 本物:想像や言語で表すことのできないその他すべてが含まれます。つまり、知ることができない、考えることができない、あるいはあなたが抵抗するものです。現実はあなたの世界の見方であり、象徴あるいは想像に入るため、本物は現実とは異なります。本物は意味に欠けます。

ボロミアン環はタポロジーです。著書『On The Names Of The Father』の中でラカンは、上記3つはすべての主体に存在すると言っています。さらに、主体の現実が持続的で、対話を続け、人との社会的繋がりを保つために、この3つは繋がっている必要があるそうです。ですので、この繋がり方により人の心の構造は決まります。

ボロミアン環

ボロミアン環に関係する概念

ラカンの理論において当初ボロミアン環には3つの要素しかありませんでした。その後ラカンは、4つ目の「シントホーム」を加えています。これは現実、想像、象徴の3つをまとめたものです。

シントホームは、主体が現実と繋がり適応するために自身を固めるのに役立ちます。つまり飛び地のような役割があります。これが離されると、精神病につながる恐れがあります。

ラカンのもう一つの概念に、「大原則となる父の名」があります。これは、3つの要素が安定した繋がりを維持するために必要不可欠な能記です。ラカンは、父的機能が、原則が課される個人の象徴的活動の錨であると考えました。

また、人生において何か欠けているように感じるのは欲求の他の部分であるため、この絡み目はその対象とも結びつけられます。これは喪失と関係しています。3つの要素に加え、主体もまた衝動に支配されています。

言語は衝動を通り、個人を欲求の対象へと動機づけます。人は、自分の欲求が満たされると、快楽を体感します。しかし、満たされない場合、怒りがわきます。そして現実に反すると、亡霊が現れます。

心の構造

まとめると、ボロミアン環は心の構造を構成する繋がりを表しています。象徴は、対話を調整する原則の存在を示し、また言語と深くつながり、これにより世界が作られます。想像は、自分を認識する体の鏡像と関係しています。そして現実は存在に関わるすべてで、意味をなさない、言葉にできないものです。

絡み目の作られ方(結合の仕方)により心の構造は決まります。シントホームは4つ目の要素で、精神病的行動の発症を予防します。一言で言うと、ボロミアン環は、心の働きを理解するのに役立つ興味深い類推なのです。


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  • Lacan, J. (1953). Lo simbólico, lo imaginario y lo real. De los nombres del padre, 11-64.

  • Lacan, J. (1956/1996). El seminario. La relación de objeto, Buenos Aires: Paidós.


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