アクセプタンス&コミットメントセラピー:原理と目的

アクセプタンス&コミットメントセラピー:原理と目的
Sergio De Dios González

によってレビューと承認されています。 心理学者 Sergio De Dios González.

によって書かれた Francisco Pérez

最後の更新: 21 12月, 2022

「働き続けるにはモチベーションが必要だ」「愛がないと前に進めない」「この先何を手に入れられるのか確かめないと前に進めない」、これらはみな、私たちのほとんどがある時点で口にしてしまいがちな発言で、たいてい深い苦痛を示しています。しかしアクセプタンス&コミットメントセラピーが助けになってくれますよ。

今挙げた表現は有害ですし問題解決の助けにはなりません。ただ物事に条件を押し付けてそれが上手くいかなかった時に自分が前進することを阻んでしまっているだけなのです。考えることや感じることに対して、明確な原因基準の価値観を置いてしまっており、そのうちのいくつかはネガティブなものだと指摘しているのです。

「無意味だものだと納得してしまっていた事実が、実は自分をもっと自由に激しく生かせてくれて、その経験から学ばせてくれるものなのだと気づく瞬間について考えてみてください。」

-L. ウィトゲンシュタイン-

ACTとは何?

アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)は新しいテクノロジーではなく、実際には第三世代の治療方法です。約25年間にわたって発展してきましたが、注目され始めたのはもっと最近です。

アクセプタンス&コミットメントセラピーは認知行動療法の一種で、言語や人間の認知の関係フレーム理論に基づいています。これは、体験の回避や認知的フュージョン、価値観の欠如あるいは喪失、振る舞いの非柔軟性や無駄な行動などの役割に重点を置く、精神病理における一つの見解です

雨の外を眺める女性

アクセプタンス&コミットメントセラピーによれば、こういった患者の問題の一つが、解決策と問題点とを混同してしまうことです。彼らは生活の中で、ネガティブな言語機能(苦悩、苦痛、不安、鬱、など)を伴うような私的な事象(思考や感情)を意図的に避けるというパターンに従います。ですがこのやり方では症状を悪化させるだけです。

これらの意味することとは何なのでしょうか?心理学に精通している読者の方々は、これらの用語を理解するのにさほど苦労しないだろうと思いますが、それ以外の方には難しいかもしれません。ですので、できる限りこれらの用語をわかりやすく説明していきたいと思います。

アクセプタンス&コミットメントセラピーの原理

体験の回避

痛みは人間の生活において避けられないものですが、苦痛となると話は変わってきます。嫌な気持ちを一度体験したことがある人なら、誰しもがそれを避けたがり、逃げたがります。ですので、できる限り早く全てのネガティブな感情や気持ちを取り除く作業に取り掛かろうとするのです。

人によって程度の差はあれど、私たちは皆苦痛を避けようとします(ただし強力な報酬が得られる場合は除きます。例えば人々の注目を集めるために「ちょっと病気」になりたいと思う人もいます)。当たり前のことですよね。しかしもしやり方を間違えると、その代償がかなり高くついてしまうことがあります。

重要なのは、苦痛を回避することが適切な解決策ではない場合に、それに気づいて止めることです。一度それに成功すると、ネガティブに見える反応に対して心理的にオープンになる方法を学ぶ準備ができるでしょう(ただし、そのネガティブなものが何か価値のあるものをもたらしてくれる場合)。言い換えると、苦痛を回避することだけに労力を使って生きていても、何の助けにもならないということを理解できれば(だからと言ってわざわざ苦痛を味わおうとしなければならないという意味ではありませんが)、苦痛を感じてもそれをただ受け止めるということができるようになります。

「幸せや自由は、ある原理をしっかり理解することから始まります。それは、世の中には自分でコントロールできるものもあれば、できないものもあるということです。内面の落ち着きと外側での成功が実現するのは、この基礎的なルールと直面し、コントロールできるものとできないものとの分別方法を学んだ後の話です。」

-エピクテトス-

認知的フュージョン

この記事の中で最も抽象的なのが認知的フュージョンという概念でしょう。この言葉を理解するために、あなたの頭の中(思考パターン)がラジオであるかのように考えてみてください。それは、あなたがどう感じているか、また、ある特定の目標を達成するためにあなたがしていること、もしくはしていないことが実際には十分なのかどうかを伝えるラジオです。誰かに好きになってもらえるほどいい人物ではないと言って、自尊心を傷つけてくる場合もあるでしょう。そして実際そう言ったネガティブなメッセージを送ってくるラジオとともに生きている人がたくさんいるのです。

問題が起きるのは、あなたがこう言ったメッセージを現実と混同してしまった時です。脳からのメッセージを重要視してしまう時、つまりラジオが言うことは全て正しいのだと考えてしまった時です。そしてこれがメタ思考、つまり自分がどう考えているのかについて考えて調整していくことが、それほど重要な理由です。理解しなければいけないのは、心の声が何と言っていようとも、それはラジオで討論している誰かの声のように、ただ一つの声に過ぎないということです。

一方、このラジオは情報を与えてくれるという点では役に立つこともあります(ラジオに現れるのは意見だけではなく、有益な情報もありますし、それは頭の中でも同じです)。ラジオは今日が暑い日になるかを伝えてくれたり、あるいはそんなに暑い中外出する価値があるのかどうかまで伝えてくれることもあります。とはいえ、これは従うかどうか自分で決めるものですし、単なる提案にすぎません。心理学の話に戻ると、パーティーがピリピリした雰囲気になるかもしれないから、行かないほうがいい、というような提案までしてくる可能性もあります。しかし最後に決断を下すのはあなたなのです。そしてそれが、セラピーの中で、ラジオが言うことと実際に決断することとの間の混乱をしっかり分類するのが重要な理由です。

混乱する女性

価値観

アクセプタンス&コミットメントセラピーは、人々の価値観にかなり重きを置いています。例えば、人が特定のモノについて美しいと思うか醜いと思うかのどちらかです。そして、それは主にその人が育ってきた文化背景の問題なのです。

こういった評価には時間とともに変化が見られますし、それはどの文化にも言えることです。もし別の時間あるいは別の場所に生まれていたら、あなたの判断に基づく応答(美しい/醜い、良い/悪い、楽しい/退屈、など)は完全に違っていたであろうことに気づき始めるのも頷けます。同じことがあなたの価値観についても言えるのです。そして、とても近くでモノを評価する時、あるいは道徳的な葛藤にぶち当たった時に特にそれが当てはまります。

振る舞いの非柔軟性

こちらは定義しやすい用語です。その意味は、他の反応を知らないがためにいつでも同じ動作をするということです。つまり、同じ問題に何度も何度もぶち当たることが多々あり、決して良い解決策を見つけられないということなのです。アクセプタンス&コミットメントセラピーでは、これは問題に立ち向かうために十分な解決策を持っていないせいであり、探そうともしていないせいである、と言われています。

苦痛を回避しようとすることで浮かび上がってくる障害

先ほど体験の回避について定義づけをしました。多くの人々が、継続的で広範囲に及ぶ不快さを感じさせることは何であれ回避しようとします。しかしその結果として、彼らはかなり制限された人生を送ることになるのです。この行動パターンは、結局人生の他の面に多くの苦痛を与えることになってしまいます。

こういった人々は、かなりの個人的なコストを伴う回避パターンに囚われてしまっています。例えば、様々な目標に到達できなくなってしまうかもしれません。そしてそれが、本当の体験回避障害と向き合っている時です

西洋文化とその主な普及媒体(家族)は、人生において「適切な」あるいは「正しい」感覚(思考、感情、感覚など)を持つようにいつも人をコントロールしようとしてきます。例えば、特定の意欲的あるいは感情的な状態でいなければならないだとか、優秀になって成功するために自分自身についてある特定の考え方を持たねばならないといったような思考を埋め込もうとしてくるのです。

成功しているのにそれに気づいていないのですか?

問題が起こるのは、成功しているにも関わらず、そのための唯一の手段としてこうあるべきと教えられた状態をまだ追い求めてしまう時です。これは少し極端ですが、宝くじに当たった男性について考えてみてください。幼い頃から彼は働けばお金をもらえるのだ、お金持ちになりたければすごく一生懸命働かねばならないのだ、と教わってきました。宝クジのおかげでお金持ちになった今ですら、彼はまだ毎日苦労して教わった通りのことをしようとしているのです。

そして多くの人が探し求める成功というのは、彼らがそのために苦労した時にだけ本物になるような成功のことなのです。それはつまり、目標点に到達した後にさらにそれを探し求め続けるということです。一方で回避してしまうと、全く別のサイクルにとらわれることになります。このシナリオでいくと、宝クジにまだ当たったことがないのなら、あなたは成功を望むはずです。しかしあなたは仕事を逃げたくなるような苦痛だと見なしているので、あなたは成功を拒否することになります。なぜなら仕事(苦痛)がそれを達成する唯一の手段だからです。そしてそれにより、あなたは別の種類の苦痛にとらわれることになります。それは欲しいものを手に入れられないという苦痛です。

窓の外を眺める男性

解決策が実は問題になってしまっている

しかし残念ながら、結果とは望んだものとは正反対のものであるということを全ての事実が物語っています。どんなに頑張って避けようとしても、苦痛は続くのです。このようにしてこの回避パターンが全くのパラドックスになってしまうのです。

この場合、全てのことへの解決策が実は問題点となってしまいます。本当の問題とは、人生の中で意図的に不愉快なことや苦痛や不安から逃げようとするパターンが含まれていることなのです。そしてその結果、ますます不愉快になったり苦しんだり不安になったりしてしまうのです。

「愛することは苦しむことだ。苦しみを避けていては愛することなどできない。しかしそうすると愛せないことに苦しみ始める。したがって、愛することは苦しむことであり、愛さないことは苦しむことであり、苦しむことは苦しむことなのだ。幸せになることは愛することだ。だから、幸せになることは苦しむことであり、しかし苦しみは不幸せを生んでしまう。したがって、幸せになるためには愛するかもしくは苦しみを愛するかあるいは過度な幸福に苦しまねばならないのだ。」

-W. アレン-

体験回避障害の根源

体験回避障害は、溜まってしまった個人的なネガティブな体験(それらが思考であれ記憶であれ、体の状態や感情であれ)に立ち向かう準備ができていない時に現れます。もっと具体的なネガティブな体験の一例が、怒りや悲しみなどの「望ましくない」感情でしょう

ですので、体験回避障害のある人々は、こういった経験が起こらないようにその根源や形や頻度を変えようとします。例えば、特に悲しい感情に浸っている人について考えてみてください。悲しみを処理する方法の一つがそれをハエのように扱うことです。手で振り払おうとするのです。しかしこの衝動的で不正確な戦略を使うと、ハエは再び戻ってきてしまいます。全く同じことが悲しみについても起こってしまうのです。

人は基本的にそのうような感じ方を許容します。私たちの多くが、人間の当たり前のあり方として時々悲しみを感じるものだということを忘れています。この体験を避けてしまうと、状況は悪化するのです。なぜなら、回避しようとしたものあるいは押しのけようとしたものが何であれ、そこに留まり続けてしまうからです。

短期的に見れば有効、長期的に見れば悪夢

この行動パターンはネガティブな体験を解放してくれるので、多くの場合短期的に見れば有効であるように思われるでしょう。しかしこれが慢性的で幅広いものになってくると、全てのネガティブな体験が他のところにも広がって、人生の足かせとなってしまうのです。

別の言い方をすれば、最終的にあなたにとって最良なことと真逆の方向に行ってしまうということです。そして体験回避の最終手段には自殺があります。体験回避障害の逆説的な部分は、この障害のある人は、苦痛を取り除くためにしなくてはならないと思うことをしようとする、という事実から来ています(そしてその目標のために時間と努力を惜しまないのです)。

しかし、長期的にはこの行為の全てが彼らをますます狭い世界へと追い込ませて苦しめることに繋がってしまうのです。彼らには目標や大切なものを持って前進する手段がなくなってしまいます。

アクセプタンス&コミットメントセラピーの使用目的

アクセプタンス&コミットメントセラピーに関する研究を見れば、どの障害がもっとも科学的にこのセラピーの支援を受けているのかがわかるでしょう。以下がその順番です。

苦しむ女性

ACTがそれほど効果的になっているのは、その焦点が受容に当てられていることと関わりがあると十分考えられます。感情的な痛みと結びついた体験(不安、憂鬱、痛み、トラウマ直後のストレスなど)に関しては、これが絶対的に必要となります。しかしACTが患者の参加を奨励していることも一因です。これは、人々の健康を危険(危険な性行為、アルコールやドラッグの消費など)に晒すような障害の治療において欠かせないものと思われます。

そして何より、精神崩壊を治療するにあたっては、患者に一歩引いて自らの思考や考え方について見つめなおしてもらうことが支援へのカギとなり得るのです。ただし、研究によれば、このセラピーで効果を得られるのは、言語能力のある大人のみだということも指摘しておきます。


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  • Steven C. Hayes, Kirk D. Strosahl, Kelly G. Wilson. 
  • Acceptance and Commitment Therapy: The Process and Practice of Mindful Change
  • . New York. Guilford Press

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