自己超越:自己を乗り越えることの価値
自己超越は、スピリチュアリティとの関連性がかなり強い概念です。人間のパーソナリティの中でもとても複雑な特徴だと考えられており、人それぞれがこれについて異なる意見を持っています。
基本的に、自己超越とは自分自身を超越すること、つまり自らのアイデンティティを超えて自分は何かもっと大きな存在の一部分なのだという悟りを得ることを意味します。これは、自らを宇宙にとって不可欠な部分であると認識することと同時に起こる複雑な現象なのです。
自己超越とスピリチュアリティ
この2つの用語は密接に結びついています。実は、自己超越の特性に1つに、自分自身の拡張、というものがあります。つまり、自己がさらに大きくて複雑な 無限大の何かに向かって行くという意味であり、これは神聖なものあるいはスピリチュアルな本質であることが多いのです。
神への信仰を通して自己超越に達する人もいれば、ある種のスピリチュアリティや考え方を身に付けることでこれを成し遂げる人もいます。いずれにせよ、これが人々にとって命の意味を考える手助けとなり、超越へのきっかけとなるのです。
オーストリアの精神科医、ヴィクトール・フランクルによると、超越とは私たちのスピリチュアリティの奥深くにあり、スピリチュアリティとは人間性の一部で、これが私たちを他の生物とは違った存在たらしめるものだそうです。自己超越を成し遂げない限り、完全な人間になることはできません。
また、触れておきたいのが、現代の研究者たちは大抵自己超越を達成するのにスピリチュアリティが必要なわけではない、という考えなのですが、実際には多くの人にとってスピリチュアリティは重要な側面であるという点です。
自己超越は、重労働を要する実現困難な目標だ、という人もいるでしょう。自己超越とは、次に何が来るかということであり、自分自身の代わりに他人にフォーカスを当てることなのです。自分自身の功績よりももっと大きな目標に焦点が当てられます。
アブラハム・マズローによる超越の定義
心理学者アブラハム・マズローは以下の言葉を残しています。 “超越とは、最高潮の、そして最も包括的あるいは全体論的レベルの人間の意識のことを指し、手段というよりは目的として自分自身、重要な他者、一般的な人間、その他の生物、自然、そして宇宙に対して振る舞い、関わりあうものだ”
この意味では、自己超越はマズローが言うところの至高体験を人々に提供し、ここで個人的な不安が超越され、出来事をもっと広い視野で見ることができるようになるのです。これは、喜びや平和といった強力な明るい感情や、よく発達した自意識を生み出すような経験です。
また、マズローが彼の欲求のピラミッドの中で自己超越という概念を使っていることは、彼の理論が引用される際には必ずしも触れられない点です。しかし、少しずつ研究者界隈ではこれを考慮するようになってきています。
リードによる自己超越理論
パメラ・リードはこの概念を三次元的な手段の中の自己概念的境界の拡大である、と定義づけました。この理論によると、人間はオープンシステムであり、システム間の障害に過ぎないと見なすことができ、自己超越とは自らに設定した境界線だということです。
もちろん、人間には何らかの概念的な制約が必要ですが、自己の外方向への拡大は周囲の環境との強い結びつきを生み、その他の方法では成し遂げられない統一性という感覚を促すのです。
リードによる理論では、満足感を得て、目的意識を持てるようになるためにはこの概念に達するべきだ、と主張されています。
クロニンジャー:自己超越とパーソナリティ
ここまで述べてきた通り、自己超越はスピリチュアルな考え方の経験に関連するパーソナリティ特性です。これは、クロニンジャーによる気質性格検査で評価されるパーソナリティ次元のうちの1つです。
クロニンジャーの気質性格検査では、4つの気質と3つの次元の性格が存在します。自己超越は、自己のスピリチュアルな側面に関連するパーソナリティ特性です。クロニンジャーによると、これは自然やその起源を受け入れること、特定すること、あるいは精神的な結びつきのことだそうです。
自己超越を成し遂げる方法
自己超越を成し遂げるのは容易ではありません。これはマズローの自己実現を超えた最も高度な人間の発達段階なのです。しかし、これを促すためにできることがいくつかあります。ステファニー・フラッドは仏教に影響を受けた5つの手段を提唱しています:
- 基本的な瞑想技術を探究する(瞑想のエキスパートであったとしても)
- 自意識を作り上げるため、知識や知恵で自分自身に力を与える
- 旅することを恐れない
- より高い目標や理想の自分に近づくための自分だけの精神的な手段を見つける
- 超越を促してくれるようなポジティブな環境で生活することで、精神的波動を向上させる
ヴィクトール・フランクルによる3つの価値
一方で、自己実現について実験するためにヴィクトール・フランクルが指摘した3つの価値についても触れないわけにはいきません。これらの価値は、どんな文化圏の出身者にも備わっており、以下のようなものです:
- 創造価値:世界へと立ち帰ること。この価値には、創造的な形で生産性の高い仕事へ意識的に従事することが含まれます。つまり、自らの独自の才能やクリエイティブな考えを社会にとって価値のある何かを作るために捧げたり、あるいは世界を変えるために使ったりするということです。
- 体験価値:感謝を持って受け入れること。体験価値には恋愛関係や周囲にある美しいものへ感謝することが含まれます。
- 態度価値:運命に対して取る態度。態度価値は、逆境に対して果敢に立ち向かおうとするときの人間の持つ挑戦する精神力です。困難な時でも自分の尊厳を保ち続けることは自由と意味を手にするための最後の防衛戦なのです。
また、中国の心理学者ポール・ウォンは自己よりも大きい何かを行おうとする時、その人は自己超越を実践しているのだ、と説きました。他者を気遣うことができて初めて、最強バージョンの自分になることができるのです。
従って、自分の宗教や信条が何であれ、自己超越によって、人はつながりや超越への最も深いスピリチュアルなニーズを満たすことができるということです。