子どもの精神薬の使用
精神疾患は、21世紀に広く蔓延しています。それに伴い抗不安薬や抗うつ薬の摂取への懸念が高まっているという様々な統計が出されています。それより心配なのが、子どもの精神薬の使用が一般的になっていることです。
世界保健機関(WHO)によると、2005~2012年の間に、精神薬を服用している子どもの数が激増しています。
約20%の子どもが精神疾患や障害を患い、その半数が13歳以下で明らかな症状が出ているとWHOは言います。しかし残念ながら、診断や治療が行われないことも少なくありません。さらに悪いのは、精神疾患が若者の病気や障害の主な原因になっていることです。
精神疾患には非常に多くの症状がありますが、個人の環境も重要であると多くの研究から分かっています。
特に幼少期と思春期には、この原因のリスクになる要因がたくさんあります。例えば、離婚や放棄など家族の問題、身体的、精神的、性的虐待、ストレス、薬物乱用などです。
また、個人の発達において非常に重要な時であることを忘れてはなりません。人格は幼少期に育ち、この時期に大人になってからの生活もある程度決まります。思春期は身体的、精神的、社会的変化により個別化が進む非常に重要な時期です。
そのため、予防と精神的健康の促進が優先されるべきなのです。また、子どものために最適な環境を示すことが大切です。家族がカギとなりますが、学校や一般社会も重要な役割を担います。
子どもの精神薬の使用
子どもの治療のための精神薬は、心理社会的療法と共に行われるべきです。
精神障害は薬で治療するのが一般的になってきました。かつてはセラピーが唯一の治療法でしたが、それは子どもの問題が環境に根付いたものであると強く信じられていたためです。また、子どもの精神薬の効果や安全性に関して十分な研究もありませんでした。
しかしそれがここ数年変化しています。これに関しより多くの調査が行われています。それでも、不適切な若者への薬の処方がまだよく見られるのです(コンパッショネート・ユース)。
子どもは発達の最中であるため、薬への反応は大人と同じではありません。精神薬に不可欠な神経伝達の過程も同様です。つまり、子どもの薬に関して大人の研究に基づいて決めつけることは危険なのです。
子どもに処方されやすい精神薬を次にご紹介します:
抗うつ薬:
- 三環系:アミトリプチリン、アモキサピン、デシプラミン、ドキセピン、イミプラミン
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI):フルオキセチン(プロザックなど)
- ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(NRI):注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療のためのアトモキセチン
抗精神病薬:
- アリピプラゾール、アセナピン、カリプラジン、クロザピン
- 自閉症に関わる行動問題の治療のためのリスペリドン(リスパダール)
ベンゾジアゼピン系:
- 不安障害や睡眠障害の治療のためのアルプラゾラム(ザナックス)、クロバザム、クロナゼパム、ジアゼパムなど
精神刺激薬:
- ADHD治療のためのメチルフェニデート(リタリン)
子どもの精神薬の危険度と受益度の割合
2004年、Spanish Agency for Medicine and Health Products は、子どものSSRIの使用が効果的であることが証明されておらず、また、自殺行為のリスクが高まっているとして、子どもへの使用を推奨していません。さらに、こういった年齢の子どもの抗うつ治療として、SSRIはどの種も認められていません。
2016年、子どもの抗うつ薬の使用に関する興味深い記事が、雑誌 The Lancet で発表されました。この種の薬に関して発表されたすべての論評を体系的に見直し、メタ分析したものです。9~18歳の子どもの主なうつ病性障害の治療に使われれる14種の抗うつ薬の効果が比較されています。
その結果は、驚くべきものです。偽薬より効果があったのは、フルオキセチンだけだったのです。その他の抗うつ薬には、望ましい危険度と受益度の割合が見られませんでした。また、他の研究によると、ベンラファキシンなどの薬は、ティーンエージャーの自殺の高いリスクと関係することが分かっています。
これらの結果から、注意を払うべきですが、これが絶対的な真実だと考えるべきではないでしょう。まだ調査が必要とされており、そのために、治療を待つべきではありません。すべてのケースが異なるのです。
医師は、その患者に合った治療の危険度と受益度の割合を評価することができるため、医師の指示に従うことが大切です。
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