信頼、寛容さ、愛着:オキシトシンの効能とは?
オキシトシンは、身体機能および行動において重要な役割を果たす、身体的にも感情的にも素晴らしい効能を与えてくれる神経ホルモンです。オキシトシンは人を良い気分にさせてくれるようなあらゆる事柄に関わっているので、「愛のホルモン」とも呼ばれています。あらゆる種類の人間関係(ロマンティックなもの、プラトニックなもの、家族との絆)や有性生殖、そして出産にも不可欠なホルモンです。さらに詳しく見ていきましょう!
オキシトシンとロマンティックな愛、そして親密さの探求
オキシトシンは視床下部で生成され、そのあと脳下垂体で分泌されます。オキシトシンは子どもが誕生した瞬間から親子関係の形成を促すので、親と子の関係性を築いていく上での絶対的ヒーローです。
オキシトシンは出産や授乳を促進するだけでなく、母親としての感情も刺激してくれます。産道が広がると、脳下垂体が大量のオキシトシンを分泌します。そして同じことが、授乳の際赤ちゃんが乳首に吸い付いた時にも起こります。
また、この愛のホルモンは、物理的な愛着やオーガズムにも関連しています。オキシトシンが血中に放出されると、性的行為の後の一連の効果が生み出されます。女性そして男性が性的なクライマックスを迎えることがオキシトシン放出の引き金となり、精子の循環を助け、両性の生殖経路の収縮を円滑にします。
さらにいくつかの研究により、セックスの後まだ子宮頸管内の精液の中にテストステロンとエンドルフィンが残っている状態の時に、女性はテストステロン、エンドルフィン、そしてオキシトシンを受けとることが示されています。一方で、男性の体内ではエンドルフィンとオキシトシンの値が増加し、これがリラクゼーション効果と保護効果に繋がります。
また、オキシトシンは恋愛や認識、感謝の念、信頼関係の構築、寛大な気持ちを持ち合う関係性、愛着、優しさ、そして身体的接触とも関係しています。つまり、シンプルなハグやケア、あるいはキスなどでもオキシトシンを活性化させることが可能なのです。
一夫一妻主義ホルモン
オキシトシンを一夫一妻主義ホルモンと呼ぶ人もいます。ボン大学で行われた研究のなかで、研究者たちはヘテロセクシャルの男性グループに鼻スプレーを用いてオキシトシンあるいはプラシーボ(偽薬)を投与しました。その目的は、彼らが魅力的な女性に出会った時にどのように反応するかを調べることでした。研究者たちは、女性たちとの適切な距離はどれくらいで、不快な距離がどれくらいであるかを示すよう彼らに依頼します。
これで分かったのは、オキシトシンを投与された妻あるいは交際相手がすでにいる被験者たちは、プラシーボを投与された同じ条件の男性たちよりもその魅力的な女性とかなり離れた距離を取ろうとしたことです。しかし、独身あるいは恋人のいない男性グループには同じ結果は見られませんでした。研究者たちは、この実験が、オキシトシンが男性の忠誠心において何か重要な役割を担っているかもしれないことを示した最初の証拠である、と提唱しています。
育児や家族関係におけるオキシトシンの効能
オキシトシンにはまた、親たちの子孫に対する愛情行動を調節する効果もあります。これは愛着ホルモンであり、胎児を守り、成長を促させる本能を引き出すのです。例えば、母親が子どもに授乳する際、オキシトシンが乳腺へ母乳を収集室(その子が乳首から母乳を吸い出せる場所)へ送るよう信号を発します。
さらに、母親の声も赤ちゃんの体内でのオキシトシン生成を活性化させます。これにより、母と子の間の愛着の絆が形成されていくのです。母の声は赤ちゃんを落ち着かせ、守られているという感覚を与えます。
いくつかの研究では、恋愛中の人々はオキシトシンレベルを上昇させており、特に関係性が円熟している場合はさらにその値が高くなることが明らかにされています。
その機能は、身体的接触やオーガズムと関連しています。これが母性や女性的感覚を向上させ、恋愛相手との身体的接触の最中に繊細さを与えるのです。十代の女性たちがロマンティックファンタジーに熱狂する理由の一つにも、オキシトシンの存在があります。
一方で十代の男性たちの場合、静脈内を巡るテストステロンによってレーザー光線のようにセックスへ意識が集中することとなります。だからといって、十代の男性たちにはロマンティックな幻想がない訳でも、恋に落ちない訳でもありません。しかし実は、父親になることでテストステロン値は減少させられます。これはオキシトシンが愛情行動や保護行動を促すためです。その結果、パートナーが妊娠すると男性の性欲が減退することが多くなります。
オキシトシンの効能の一つは、大きな自信を得られること
加えて、オキシトシンが自信や寛大さに与える影響について示した興味深い研究もいくつか行われています。この愛のホルモンは、社交不安さえも減らしてくれるのです。
危険性の高いゲームのプレイ中に鼻スプレーでオキシトシンを投与された被験者グループは、対照群の被験者たちの二倍の自信を持てていたことが明らかになっています。
ドーパミンとオキシトシン
原始時代の女性たちは、男性の攻撃性から自分たちを守るために女性同士で交流し合っていた、と信じられています。
同じことが、数種の猿にも見られます。大きなオス個体がメス個体を煩わせようとすると、メス猿たちが金切り声をあげてオスを怖がらせて追い払うのです。科学者たちは、これが女性たちがこれほど頻繁に集まり合い、親密で愛着に満ちた会話をしている理由だろう、と考えています。こういった活動を刺激しているのがドーパミンです。
ドーパミンは脳内のあらゆる活動に関わっています。これは行動と認知、動機と報酬、睡眠、学習、ユーモア、そして注意力に関連しており、全般的には脳の報酬系に関わるものです。ドーパミンは特定の活動とのポジティブな関連性を強化させるので、それらを発揮しやすくなるのです。
また、ドーパミンは元来、食事やセックス、そしてドラッグのような報酬活動に関与しています。
オキシトシンとドーパミンのコンビネーションが、特にエストロゲンがピーク値に達した際、女性の生活に人との親密さという喜びを提供します。
中毒と愛とオキシトシン
実験動物を用いた調査では、オキシトシンは様々な依存性のあるドラッグ(例えばコカインやオピオイド、アルコールなど)への耐性の強化に関わっていることが示されました。また、その禁断症状も減少させます。それだけでなく、情緒面のバランスを整えて不安やパニック発作、広場恐怖症、恐怖症、そしてストレスなどをやわらげる効果もあると提唱されています。
研究者たちは、社交不安を抱える人々に高いレベルのオキシトシンを投与すると、症状を抑えられたり、完全に消し去ることができたという報告をしています。また、統合失調症や自閉症といった特定の精神疾患の患者にも役立つホルモンです。
オキシトシンとバソプレシン
恋愛中は、また別のホルモンであるバソプレシンがオキシトシンの働きを補完します。このホルモンは”テリトリーを守るため”に、つまり恋愛中の二人に密接に関わる境界線を設定させるために機能します。
神経内分泌の研究では、円熟した関係性の二個体の間の絆は、オキシトシンとバソプレシンによって生殖段階を何段階も越えながら保全されるということが明らかになりました。これらのホルモンレベルが、交尾中および子の誕生によって上昇するのです。
バソプレシンは、パートナーとの間の絆を強いまま維持するための手助けとなるホルモンで、パートナーおよび家族のテリトリーを守る積極的な防御メカニズムを活性化させます。さらにこれが、メスが他のオスたちと交尾するのを防ぎます(つまり、“親の投資”を保証するものです)。
オキシトシンと愛情
愛とはいくつかの強力な副作用を持つ依存性の高いドラッグである、と考えることもできます。アルベルト・アインシュタイン医学校が行なった研究では、愛を”失った”状態になる(例えば破局後など)と、ドラッグ中毒の際に起こるのと似たような深刻な抑うつ行動あるいは強迫行動が引き起こされることがあることが示されました。
同様に、愛は感情的な依存状態を作り出すことがあります。これは、恋愛中は化学物質やドーパミン、オキシトシン、セロトニンなどのホルモンの値が非常に高くなるためです。そのため、愛は活力とモチベーションを生み出すのです。恋愛をしている時は、たった数時間の睡眠だけで日々を乗り越えられていた、という経験はありませんか?
中にはこういったホルモンの働きの連鎖が治ると、それを恋の終わりだと捉えてしまう人々もいる、と一部の研究者たちは提唱しています。実際には何が起こっているかというと、神経受容体が過剰な量の化学物質の流れに適応してしまい、その高ぶりを維持するにはさらに大量の物質が必要になっています。
- 脳は、通常のホルモンレベルに適応するための回復プロセスを経験することとなります。安定した状態に戻るまでには時間がかかるのです。
また、オキシトシンはその一つ目の感情の波を乗り越えた後で、恋人との間に永遠の絆を作り上げる働きかけを行います。何億もの神経回路の結びつきがこれによって変化するのです。
オキシトシンのさらなる効能
オキシトシンは内因性物質であるということを覚えておきましょう。これはつまり、脳によって分泌され、ドラッグのような働きをするということです。オキシトシンにより、ドーパミンやノルアドレナリン、セロトニンといった神経伝達物質が放出されます。こういった神経伝達物質は脳をフェニルエチルアミンというアンフェタミン系の化学物質で満たします。例えばチョコレートなどにはフェニルエチルアミンが豊富に含まれており、これが破局後にチョコがあれほど魅力的に感じられる理由なのです!
また、嫉妬心に関してもオキシトシンが密接に関わっています。誰かに裏切られると、自信が失われ、オキシトシンレベルが下がり、コルチゾールレベルが増大します。
いずれにせよ、神経伝達物質やホルモンの分泌に関して生物学的観点のみから語ることは不可能です。行動、思考、信条、価値観、感情、考え方、偏見、経験、そして幻想といった要素も体内でのこういった化学物質の放出に影響しているのです。
神経伝達物質や、セロトニン、エンドルフィン、オキシトシンといったホルモンはストレスの多い状況でコルチゾールレベルを下げてくれる三銃士のような存在です。だからこそ、スポーツや平和的な場所、そして情緒的な絆(家族や友人同士)が、ストレスとの戦いに役立つのです。この記事を読んでお分かりいただけるように、オキシトシンの効能は無限大のように思えます!要するに、オキシトシンは生活に快楽と幸福をもたらしてくれる存在だということです。
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