心理的操作:内面の葛藤を解消する戦略
心理的操作または感情的操作という言葉を知っていますか?
これは被害者の心に大きな傷を残す有害な行動であり、特に危険なのが、周りにわからないように行われるため表面化することや周りが気づくことが難しいという点です。
心理的操作を行う加害者は、自分の頭の中ですべてを完璧に計画しています。
獲物となる被害者の弱点と、自分が欲しいものを手に入れるための自己防衛術や抜け道をしっかりとわかっています。
欲しいものを手に入れるということの中には、加害者が被害者のように見られ、そして被害者が罪深い有害な人物のように周りから見られるというパターンもあります。
つまり、加害者が被害者に「自分は間違ってる」と認めさせて、加害者が望む物事に同意させようとします。
心理的な操作について語るときに使われる「マニピュレーター」の意味は、自分の利益のために他人の感情を操作して、自分が望むものを手に入れる人をさします。
先に述べたように、すべてを綿密に計画し、他人の意思を曲げさせてでも自分の欲しいものを手に入れるマニュピュレーターは、あらゆる手段を使うことをためらいません。
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心理的操作は、認知的不協和から生じることが多い
心理的な操作を行うマニュピュレーターは、心理学者が「認知的不協和」と呼ぶ手段を活用します。
認知的不協和とは、人間か、一貫性のない矛盾する2つの思考を同時に抱えたときに、または私たちの考えが私たちの信念や行動に合致しないときに、心の中で起こる矛盾を指します。
この心の中で起こる葛藤や矛盾、そして思考を食い止めるような緊張感は、奇妙な影響をもたらします。
私たちの脳は、無意識のうちに入り込んだ認知的不協和を避けるためにできる限りのことを行いますが、脳内の混乱が起こるのは避けられません。
思考と感情の間、信念と態度の間など、私たちは感情面での一貫性を保持する必要があります。
交差点の真ん中に立っているような認知的不協和が起こったら、どのような犠牲を払ってでも、そしてたとえ自分を欺くことになったとしても、この状態から抜け出すことが先決になるのです。
心理的操作は認知的不協和を使ったトリック
前述したように、心身の健康を支配するような不快な感覚が続く認知的不協和を避けるために、私たちはできる限りのことを行います。
不協和を増加させる情報の認知を避けて、自分が不安定になる可能性のある言葉や情報には耳を傾けません。
心理的操作を行うなマニピュレーターは、認知的不協和に直面したときの行動の仕方を理解しています。
そして自分の目標達成のためなら、自分を欺くことさえできるようになるのです。
例えば、恋人関係を終わらせたいと考えているときでも、自分からは終わらせるのが難しいならば、パートナーから関係を終わらせるように仕向けます。以下の例を見てみましょう。
ホルヘは、「特別なつながり」のある女性と出会ったため、マリアと別れたいと考え始めました。
しかし、ホルヘを愛しているマリアは、ホルヘが別の女性と出会ったことは知りませんし、彼と別れる気はありません。このような状況においてホルヘはマリアと別れるために、彼女の方から別れを切り出すように働きかけます。
マリアの方から別れるようにできる限りのことを行い、最終的にマリアと別れることになりました。
そして、マリアが「別れの原因は自分」だと考えるように働きかけ、「自分は何も言っていないのに、マリアが別れたがった。彼女の方から別れたんだ」と主張します。
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マニピュレーターは、罪悪感を他人になすりつける
ホルヘは、自分が望んでいる状況(誠実)と、現在の状況(不誠実)が衝突することで、認知的不協和という不快な状況に陥りますが、マリアを心理的に操作することで問題を解決しようとします。
マリアから別れるよう仕向けるという心理的操作により、他の女性と出会ったからマリアと別れるという不誠実な状況と、誠実でありたいという葛藤を修正することが可能になります。
マリアはおそらく何が起こっているのか理解できないでしょうが、最後にはマリアが罪悪感を感じる結果となります。
マリアはパートナーであるホルヘが心理的な操作を行うマニュピュレーターとなっていることは想像もできないかもしれませんし、ホルヘは逆に、自分の行動を完全に意識して行なっていないかもしれません。
マリアとの関係を終わらせることを目的としているホルヘは、別れたい原因は自分が別の女性に出会ったことであっても、別れを切り出す「執行者」になりたくないという気持ちになりました。
ホルヘは自分の身を守り、自分が犠牲者になるためにできる限りのことをして、マリアから別れを切り出すように仕向けました。
最終的には、マリアが罪の意識を感じながら別れを切り出すまで、マリアを心理的に操作します。
マリアの方から別れを告げる場合、ホルヘは別れた後に他の女性と付き合うことになっても罪の意識を感じる必要はありません。
彼女から別れを告げられた男性となるのは、ホルヘの思い描いていた計画通りであり、ホルヘは罪の意識を感じることなく自分の望んだ結果を手に入れることができるため、自分の中の葛藤がいつの間にか解決されている結果となります。
このように、心理的操作は認知不協和や混沌とした状況から生まれます。
私たちの心は、認知的不協和から抜け出すためには何でもします。
心理操作を行うマニュビュレーターはあたかも、自分が犠牲者だと見せかけている死刑執行人のようで、自分の考えや行動を正当化する状況にふさわしい相手を見つけて彼らがあたかも罪人であるかのように見せるために何でも行います。
心理的操作を行うマニュピュレーターによって罪を被ることになった「罪人」は、最終的に二人の関係や人間関係における不幸な犠牲者となってしまうのです。