トラウマを無力化する「ディヴィクティミゼーション」
トラウマになるような経験をした被害者たちは、多くの痛みや苦しみを抱えています。最悪なのは、他の人々の態度が「リヴィクティミゼーション(再被害者化)」に繋がり、そのせいでもっと傷ついてしまうというケースです。だからこそその事実を知り、被害者たちをサポートして力をつけさせ、回復に向かえるようしてあげることが重要なのです。そんな中、「ディヴィクティミゼーション(脱被害者化)」という方法には、非常に有効性があります。
これは、トラウマ的体験が自分のアイデンティティのようになってしまっている状態を変えるための道を歩み始めるという手段です。単純な道のりではありませんが、実現できる可能性は十分にあります。今回の記事では、それについて私たちにはどんなことができるのか、そしてどう行なっていくべきなのかを学んでいきましょう。それに加えて、レジリエンスという被害者たちにとって大変有益で強力なツールについても詳しく紹介していきます。それでは一緒に見ていきましょう。
“人についてのことはなんだって言葉にできる。そして言葉にすることでそれをより扱いやすくすることができる。つまり、私たちが自分の感情について話すことができれば、感情に圧倒されて戸惑ったり、怖くなったりする気持ちが和らぐのだ”
トラウマ的体験後のディヴィクティミゼーション
被害者(ヴィクティム)とは、犯罪や事故、あるいはその他の事象や行為によって傷つけられたり怪我をさせられたり、あるいは殺されてしまった人々のことを指します。そのダメージは身体的なものや精神的なものもあれば、社会的、あるいは物質的なものの場合もあるでしょう。実際のところ、その人の健康状態の一つもしくは二つ以上の側面に支障が出ることになります。人は、あらゆる事柄の被害者になりえ、それには例えば自然災害、レイプ、武力衝突による心理的ダメージなどがあります。
これら全ての事象が被害者を生み出し、その人はそのトラウマ的体験の後、何らかの損傷あるいは痛みとともに生きていかねばならなくなります。そしてこの体験には通常、長い間保持されてしまうと好ましくない結果につながるような思考や感情、行動が伴うものです。
ディヴィクティミゼーションの重要性は、「自分は被害者である」と感じるのをやめさせ、再び自らの人生の手綱を握れるようにする点にあります。これは、そのような考え方から脱却するのに必要な要素を被害者に与えてあげるという作業です。言い換えると、被害者としての立場で居続けずに済むように、あるいは自らの境遇を悪用したり誇張したりさせないように手助けするということです。これは被害者たちは時折、そのような不遇な身の上話を作り上げることがあるためであり、したがってそれをやめてもっと違った角度から自分自身を見つめられるよう前進させなければなりません。
そうはいってもこれは、被害者たちが意識的にそれを続けたいと思っているという意味ではありません。自分の身に起こった出来事に関連する恐怖心のせいで、その状態を永続化させてしまうことがよくあります。被害者たちの多くが自身の痛みにやみつきになっており、それを守ろうとするのです。
ディヴィクティミゼーションは、被害者がその状態から抜け出せるようにするための適切な介入モデルを伴うプロセスです。これを行うためには、彼らにとって身近な存在の人物がやり方と目的を説明してあげる必要があります。さらに、サポート有りで、あるいは無しで被害者が一人きりで行うことも可能です。詰まる所、自分で自分をケアするという責任感を重視している方法なのです。
被害者を脱被害者化する方法
まず、被害者は脱被害者化への道のりを開始したいという気持ちを持たねばなりません。したがって、最初の一歩は自分が行なっている自己被害者化を認めることです。そうすれば、あらゆることを別の視点から見られるようになり、行動を起こせるようになります。では具体的な方法をいくつか見ていきましょう。
- 感情を認識し、それらがどう姿を現しているのかを理解し、少しずつコントロールできるようにする:これを行うには、自分が今どこへ向かっていてどのような状態なのかを把握できるよう、自分自身のことについての知識をもとに進んで行くことが必要です。
- 仮面を手放す:本物の自分を見つけ、トラウマのきっかけとなった状況を乗り越えられるような態度でいることが重要です。
- 自己破壊的な思考を発見し、それらを止める:そうすることで、認知力が停滞した状態から抜け出します。
- 受け身な態度を捨て去る:これにより、行動を起こせるようになります。自らの生活を自分の手で支配できるようになることが目的です。
また、物事をそれまでとは別の観点から見ることも大切でしょう。これが一番簡単ですし、実行すれば自己を救い出すことができ、ありのままの自分自身を見せられるようになっていきます。さらに、他者や自分自身に提供できるような強みを活かせるようにもなるのです。これは、自己を再建する作業だと言えるでしょう。
単純な仕事ではありませんが、少しずつその建築作業は進んで行くはずです。ここでは、自らの感情的、社会的、身体的、そして精神的世界に重きを置かねばなりません。健康とは統合的なものであり、人生の手綱を握るとはつまり自分で自分自身の責任を持つことだという事実を忘れないでおきましょう。
トラウマ的体験の後のレジリエンスの力
レジリエンスは育てていくことが可能であり、これを利用すれば私たちは最善の自分を引き出せるようになります。レジリエンスとは、困難を乗り越える能力、言い換えると試練と向き合う能力のことで、個人的な成長のあらゆる面に関わります。そのため、自身の身体状態からも周囲の環境からも影響を受けるのです。
レジリエンスを開花させるための戦略には、様々なものがあります。例えば、物語やアートを通してコミュニケーションの橋を作ることで、自分の身に起こっていることを他人に見せたり自分自身で理解できるようになります。また、グループまたは個人で心理療法を受けるのも良いでしょう。また、司法心理学の専門家であるイベス・ジョアナ・アコスタが提唱したように、拡張現実(AR)のレンズ越しに世界を見ることすら可能なのです。
自らのレジリエンス能力に頼れるようになれば、障害物を学習の機会へと変えてしまうことが可能です。そうすれば被害者という立場から自分を引き離すことができ、新たな人生をスタートさせて自らの経験からもう少し柔らかな意義を見出せるようになるでしょう。
このトピックについては、シリュルニクと彼の研究仲間たちが、『Resilience: How to Gain Strength from Childhood Adversity』という本の中で深く語っています。様々な問題がある中でも彼らが強調しているのは、被害者化していくプロセスの中にはある精神的な選択肢が存在しているという点です。そして臨床的視点からも個人的視点からも、被害者を精神病認定するような見方はやめるよう促しています。
まとめ
端的に言うと、レジリエンスには被害者たちを回復させ、他人とも自分自身とももっと真正な関係を育めるようにさせる力があるということです。
さらに、レジリエンスは学びや新たな展望に満ちた意義深い世界を育んで行けるような新しい物語の形成を容易にしてくれるものでもあります。そしてトラウマ的体験を乗り越える糧になるような、これまでのものとは異なる生きる意味を与えてくれるのです。とても素晴らしい方法だと思いませんか?
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Acosta Rubiano, I.J. (2018). La resiliencia, una mirada hacia las víctimas del conflicto armado colombiano.
Cyrulnik, B., Manaciaux, M., Sánchez, E., Colmenares, M.E., Balegno, L., Olaya,, M.M., Cano, F. (2006). Centro Internacional de investigación Clínico-Psicológica (CEIC).
Fernández, A.A. (2017). Víctima y desvictimización. Tesis Doctoral, Universidad Católica San Antonio de Murcia.