レナード・コーエン:詩を音楽へ

2017年10月10日 in 感情 0 シェア済み
レナード・コーエン

レナード・コーエンが、82歳で長い人生への幕を下ろしました。彼は、自身の旅立ちを予期していたようです。ニューヨーカーマガジンとの最後のインタビューで、「旅立つ準備は出来ている。しかし、今始めた仕事を終えてからだ。」と語っていました。

そのインタビューの数日前、スウェーデン・アカデミーは、ボブ・ディランにノーベル文学賞を授与しています。これに対し、複数の人は反対の声をあげています。彼らは、音楽と詩を融合させたのは、ボブ・ディランではなく、レナード・コーエンだと信じているからです。そして、レナード・コーエンが旅立ってしまった今でも、彼の素晴らしい芸術に触れることのできる私たちは、ノーベル文学賞の受賞は、彼にとっての美しく妥当なお祝いであるだろうと考えます。

彼の旅立ちが現実味を帯びてきた今、この小さな記事から、彼への敬意を表していきたいと思います。

「昼夜を問わず働く医師

それにも関わらず、彼らは愛の治療薬を未だに見つけられない

どんな飲み物も、どんな薬もない

愛の治療薬になるほど、純粋なものなどない」

-レナード・コーエン

音楽と歌詞に捧げた人生

彼の歌詞は、セクシュアリティ、宗教、政治、孤立などを題材に書かれたものが多くありましたが、それ以上に彼は愛を強いメッセージとしていました。女性の裸体を想像させるかのような官能的でエロチックな歌詞。彼の歌詞に込められた愛は、失うことからの痛みではなく、治療や癒しの愛でした。

彼は、長年アコースティックギターを使用していましたが、スペインのギタリストの演奏を聴き、クラシックギターが奏でるコードに恋をしたようです。彼の尊敬する人は、レイトン(カナダの詩人)でした。彼は、レイトンについてこう語っています。「私は、彼にオシャレをする方法を教え、彼は私に永遠に生きる方法を教えてくれた。」

その体験を「肉体なしの情熱、クライマックスなしの愛」と表現した、ニューヨークの大学院プログラムを終えた後、彼はカナダ、モントリオールに戻り、詩を書きながら生計を立てるために他の仕事をしていました。

休むことを知らない旅行者だった彼は、エーゲ海に浮かぶイドラ島で運命の女性に出会いました。その女性マリアンヌ・イーレンは、彼と恋に落ち、当時の夫、ノルウェー人のアクセル・ジェンセンと別れることになります。彼女には、夫との間に息子が一人いました。

出会った時の様子を、彼女はこう語ります。「私がヒドラ島の港にあるスーパーで泣いていた時、見知らぬ人が私を可哀想に思って、彼と彼の友人たちと一緒に来るように声をかけてくれたの。」その見知らぬ人が、レナード・コーエンでした。その日から、2人の間で情熱的な付き合いが7年間続きました。

実際、「So Long, Marianne」は当初「Come On, Marianne」とタイトルがつけられ、彼女にもう一度チャンスをくれないかと懇願する曲になっています。彼にとっては、マリアンヌへの愛は決して終わることのない、詩や音楽と同様にとても深いものだったようです。

マリアンヌは去年の7月、白血病のため亡くなりました。彼女の旅立ちは、コーエンに埋めることのできない心の空間を作りました。「ずっと君の後ろに居るよ。だから、君が手を伸ばせば、きっと僕に届くはず。」と、彼は最愛の女性に手紙を書いています。

アストゥリアス皇太子賞と詩への彼のビジョン

2011年、アストゥリアス皇太子賞を受賞した時、彼は詩を愛する全ての人にとって、とても印象的な演説をしています。エレガントなスーツ、少し困惑したような笑顔、そして優しい声色で、詩人としての仕事に賞を受けるのは、世間は、自分のことをやや誤解しているようだと語りました。

どうしてでしょうか? 彼は、詩の方から彼に語りかけてきて、彼自身にはコントロール出来るものではなかったと言います。彼は、得意な皮肉で、もし詩がどこからやってくるのか知っていたら、その出所をもっと早く見つけに行って、もっと早く有名になっていただろうと語りました。彼から生まれる詩たちは、努力の結果ではなく、自然に沸き起こるものなので、詩によって賞を受賞するのは詐欺師にでもなったような気分だったそうです。

賞が、彼にとってあまり価値のないものであったにしても、彼の作品はまぎれも無く、素晴らしい芸術で、作者としての彼の功績は、私たちにとって贈り物であったというのは確かな事実です。この短い演説をするにあたり、 スペインに向かう前に、40年間持っているスペインのギターの香りを嗅がなくては、と思ったそうです。その香りを嗅いだ時、木は決して死ぬことがないと実感したと言います。

彼の作品たち、そして才能は、彼は死ぬことのない木のようだ、と私たちに実感させます。私たちの心の中で、レオナルド・コーエンはずっと生き続けるでしょう。

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