ダークエンパスとは?その定義と主な特性について

心理学が、新たなパーソナリティタイプ「ダークエンパス」の存在を明らかにしつつあります。このパーソナリティタイプは、冷酷に見え、ダークなパーソナリティ特性を持っていながらも、同時に親切で思いやりがあり、他人と心を通わせることのできる人々を定義づけるものです。
ダークエンパスとは?その定義と主な特性について

最後の更新: 04 4月, 2021

心理学の分野で幅広く浸透している思い込みが一つあるとすれば、それは、サイコパスやマキャヴェリスト、あるいはナルシシストは、真の共感特性や共感能力を欠いているというものです。しかし、この問題は私たちが考えているよりよっぽど複雑で、近年、パーソナリティについての心理学的研究は、革命的かつ非常に興味深い新たな変数の存在を明らかにしつつあります。それが、ダークエンパスです。

では、ダークエンパスとは一体何なのでしょうか? これは、人口のごく一部の人々を定義するような新たな心理学的構造です。ダークエンパスと呼ばれる人々は、特定の「典型的な」ダーク特性を示しはするものの、共感力があると言えるほどの明るい面も併せ持っています。この事実は専門家の注目を浴びており、同テーマに関する研究が盛んに行われているところです。

一部の専門家はダークエンパスを、名作映画や小説に登場するアンチヒーロー(『ハリー・ポッター』のセブルス・スネイプなど)のようなものだと説明しています。こういった人々は幾分冷酷な振る舞いを見せますし、人を操る術を熟知してはいるものの、だいたいにおいて、うちなる才能や個人的な義務感、そして基本的な親切心を隠し持っているのです。

ダークエンパス 定義 特性

ダークエンパスとは?

進化心理学の分野では、「ダーク特性」は人類にある種の推進力を与える可能性がある、という考えが抱かれることが多いです。争いや対立を解決する力、他人を導く能力、複雑な条件下でも素早く決断を下す能力、あるいは自身の目標を諦めない意志力といったスキルは、ダーク特性の中でも間違いなくポジティブな特性だと言えるでしょう。

さて、ではダーク特性とは何を意味しているのでしょうか? これは、ダークトライアド(2002年にPaulhusとWilliamsによって生み出された用語)という心理学的構造を定義する特性のことですが、ダークトライアドという用語は、自己愛傾向(ナルシシズム)とマキャヴェリズム、そしてサイコパシーの総称です。ダーク特性とは、対人関係において現れる明らかに悪意のある特徴を指しており、特に感情的冷徹さや攻撃性、欺瞞性が顕著に見られます。

しかしもし、ダークトライアドを定義づける特性の広範なスペクトラムの中に、共感力が高くて社会生活に向いているタイプのパーソナリティが存在しているとしたらどうでしょう? 近年の研究で、ダークエンパスという新たな心理学的構造の存在が明らかにされました。この新しく名前が付いた特性はある意味、ダークトライアドの協調性の高い側面を象徴しているのかもしれません。それでは、詳しく分析していきましょう。

ダークエンパス:高い共感力とダーク特性

ある研究論文が、2020年の7月に公開されました。オークランド工科大学(ニュージーランド)とノッティンガム大学(英国)、ビショップグロッセテステ大学(英国)が合同で、ダークトライアドにおける共感力の意義をより深く理解するための研究を行ったのです。

  • サイコパシーや自己愛傾向、そしてマキャヴェリズムと呼ばれるパーソナリティ特性を持つ人々には、共感に関わる次元が備わっていないという思い込みが世間一般に幅広く浸透しています。しかしこれは間違いであり、彼らの共感力の使い方は必ずしもポジティブなものではない、というのが実際のところです。
  • ほぼ常に共感をしており、他人の心の状態を知覚することはできるのです。ただ、それは人々をより巧みに操るための力でしかありません。つまり、彼らの共感力は明白なツールに過ぎないのです。
  • しかしこの約1,000人の人を対象にした研究において、専門家らはある印象的な事実を発見しました。ダークな特徴も複数示したにも関わらず、対象グループの19.3%が別のタイプの高い共感力を見せたのです。他人の心情を感じ、心を通わせ、同情心すら感じることができました。
  • このタイプの共感性パーソナリティを持つ人々は、ダークエンパス(DE)として知られています。

サイコパスでありながら共感力を持つことなど可能なのでしょうか? 思いやりのあるナルシシストなど本当に存在するのでしょうか? 実は、「何らかの」サイコパス的、マキャヴェリズム的、あるいはナルシシズム的特性を備えながらも、同時にダークエンパスとしても定義できるような人々が存在する可能性を、この研究は示しているのです。

ダークエンパス 定義 特性

ダークエンパスの特徴は?

この特性を持つのは主に男性です。映画や文学の世界で描かれる、よくあるミステリアスな、あるいは邪悪なキャラクターがまさにダークな共感性を象徴していますが、こういったキャラクターは最終的に善良な心の持ち主であることが判明しがちですよね。例えば人の血を吸わないヴァンパイアや、冷酷で反社会的でありながらも常に困っている人たちのために立ち上がる名探偵、善意ある目的のために自分のギャングを率いて犯罪行為を犯す計算高い泥棒、などがそれに当たります。

これらは、いわゆるダークな特徴がポジティブなものとなり得ることを示す、プロトタイプ的なイメージです。心理学界が彼らに関心を示しているのも、それが理由だと言えるでしょう。結局、こういったパーソナリティは、スパイや兵士、医師、さらには公人など、特定の職業に役立つような一連の特徴を体現しているのです。では、ダークエンパスの見分けかたについて見ていきましょう。

外向的で神経質

ダークエンパスの特徴は、明らかな外向性と、他人に対して自身の感情を表現する際の非常に開放的でのびのびとした大げさな振る舞いです。

また、このパーソナリティの一部には、神経質な性格がしばしば含まれています。言い換えると、ほぼ確実に顕著な感情の浮き沈み(例えば不安やうつ病、恐怖症など)を経験するということです。こういった人々はよく、精神的な痛みに苦しみます。

フレンドリーで社交的

彼らが示す親切心は本物です。感情を偽装することはありませんし、人との関わりや集まり、そして心の触れ合いを楽しみます。

権力を好むが、他者の関与を重視する独断的でないリーダーシップ

ダークトライアドの優位な特性の一つに、権力を持つことへの欲求が挙げられます。権力を好み、権力こそが彼らを彼らたらしめ、そしてリーダーになることによって満足感を感じることができるのです。

しかし、ダークエンパスには、より人間らしいリーダーシップを実現できる、という強みがあります。全員の利益のために、他人から良い部分を引き出すことができるのです。ダークエンパスは、他者と積極的に関わることで自らをインスパイアして、互いの成功に向けて他者を誘導することのできるリーダーなのです。

か弱い自己愛傾向

この非常に共感力の高いパーソナリティが持つもう一つの特徴に、ある種のか弱い自己愛傾向が挙げられます。彼らはとても傷つきやすいのです。他人の心情を理解して尊重する能力を持ちますが、自分自身に対するネガティブなコメントを聞くと非常に動揺してしまいます。

完全ではないものの、才能がある

最後に、非常に興味深いのが、ダークエンパスが数多くの分野において有能だという事実です。才能に溢れた優れたリーダーであり、他人と上手く心を通わせることができます。それでももちろん、ある種のナルシシズムや明白なマニピュレーションスキルといった複雑な特性を併せ持ってもいます。

この心理学的構造に関する研究は、今後も続けられていくはずです。そして近いうちに、このパーソナリティタイプを持つ人々が社会において果たしている役割についてもっとたくさんのことを理解できる日が来るでしょう。

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