人間の愛着に関する神経生物学

人生における他者との絆というのは変わりゆくものです。事実、人生の後半で形作られた絆は、人生初期の不健全な愛着に起因するダメージを修復できる可能性を秘めているのです。
人間の愛着に関する神経生物学

最後の更新: 21 9月, 2019

愛着というのは、哺乳類にのみ見られる特徴です。従って人間の愛着に関する神経生物学の研究は、動物の研究も土台となっています。最近の研究で、愛着は線条体内のオキシトシンとドーパミンの相互作用に基づいていることが提唱されました。

それぞれの人間の愛着が、それらが基づく神経生物学を共有しているということはほぼ明らかなようです。一般的に、愛着は報酬やモチベーションメカニズム、合同化されたシミュレーション、そしてメンタライゼーションに関わる皮質ネットワークと皮質下ネットワークの統合と行動との間の共時性に特徴付けられます。

人間の愛着に関する神経生物学

人間の愛着に関する神経生物学を研究しているルース・フェルドマンは、発達という観点から、哺乳類の愛着を研究すべきだと考えています。大脳皮質の連合は2歳から4歳までの子どもに見られる初期の発育によって結び付けられています。

愛着は後になって、交際相手や近しい友人たちなどに対して現れますが、これは初期の”敏感な時期”に母子間の最初の愛着のなかで培われた基本的な機能を再利用しているということなのです。

研究者たちは、この”敏感な時期”を、脳が適切に成熟するためのある種の環境要因を経験するための最初の具体的な窓口として定義づけています。愛着という文脈で言うと、動物の典型的な立ち上がり行動もこれに関与したものです。

人間の愛着 神経生物学

人間の愛着に関する神経生物学モデル案

フェルドマン博士は、自身の研究の中で、人間の愛着に関する神経生物学について、様々な提案をまとめています:

  • 前述の通り、人間の愛着に関する研究は発達という観点に従うべきであり、神経生物学的システムが二個体の哺乳類間の絆を支えていると考えられます。母親とその子孫は初期の繊細な時期にこの関係性を作り上げます。(6)
  • 神経生物学的システムの統一性が人間間の絆を持続させます。人間の愛着は、親子間の絆によって確立された基本的な機能を再利用し、人生を通してそのほかの愛着を形作っていくのです(恋愛関係や親しい友人関係)(7)
  • 人間の絆は選択的であり、長期的に持続します。絆こそ、愛着の終着点であり、人生を通して続くものなのです。(1)
  • 愛着は、ある種や社会、あるいは個人に特別見られるような行動パターンの表出によって引き起こされる行動に基づいています。絆の形成は、トップダウンプロセスに関与しています。愛着に関連する行動は脳および神経内分泌システムを活性化させるのです。(4、8)
  • 生物学的行動の共時性が、人間の愛着のカギとなる特性です。言い換えると、2人の人間の間で社会的なやり取りが行われる際の、非言語行動と調整された生理反応との間の結びつきが、人間の愛着を特徴づけるものだということです。(9)
  • オキシトンシステムおよびドーパミンとオキシトシンの結びつきの中心的な役割は、人間の母性に関するものです。また、父性や共同育児、恋愛的な愛着、そして親しい友人関係にも関わってきます。線条体内でのオキシトシンとドーパミンの統合により、愛着はモチベーションや活力に結びつけられるのです。(10)
人間の愛着 神経生物学

さらなる理論

  • 絆の形成は、かなりの活動量と関連するシステム間の強い干渉を伴います。愛着が形成される間、親和性や報酬系、そしてストレスマネージメントを支えるシステム間の強固な関係性の活性化が見られます。(11)
  • 人間の愛着は恒常性や健康、そして幸福度を向上させます。社会的な愛着は健康と幸福さを冗長させ、一方で社会的な孤立によりストレスが増大し、健康への悪影響が見られ、死をもたらすこともあります。(12)
  • 愛着のパターンは一つの世代から次の世代へ引き継がれます。人生の早い段階で経験する行動パターンが、赤ちゃんの脳内でのオキシトシンの有効性を定め、受容体の局地化を組織するのです。こうして、基本的に次の世代を育てるための能力が設定されます。(13、14)
  • 母子間の愛着と母親の近接さが脳という器官を作り上げます。これにより、脳は社会生態学のなかで機能することができるのです。哺乳類の赤ちゃんの未熟な脳と、器官としての脳に母乳を与えてくれる母親に近接しなければならないという必要性によって、社会的事象に常に反応することができるのです。(15)
  • 人生を通して経験する絆というのは、変容していくものです。人生の後半で形成する健全な絆は、初期の不健全な人間関係の修復に役立つこともあります。人間の脳は可塑性があり、元来行動に基づいているという事実から、人生の後半での愛着によって実際にニューロンのネットワークを認識し、少なくとも部分的にネガティブな経験を修復することが可能になります。

まとめると、人間の愛着の形成は、神経生物学的に見ると、脳内でのオキシトシンとドーパミンとの相互作用ということになります。また、こういった大脳のシステムは幼児期の愛着を経験する時期に形成されるようです。そして、興味深いことに、こういったシステムはのちに友情や愛情といったその他の愛着を形成するために再利用されるのです。

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