エイリアンハンド症候群

エイリアンハンド症候群はあまり知られていない病気ですが、この病気で苦しむ人や周りの人に大きな影響を及ぼす病気です。
エイリアンハンド症候群
Sergio De Dios González

によってレビューと承認されています。 心理学者 Sergio De Dios González.

によって書かれた Paula Villasante

最後の更新: 21 12月, 2022

エイリアンハンド症候群(AHS)は、あまり一般的ではない神経疾患ですが、深刻な障害をもたらすため、知っておいた方が良い病気です。

身体経験というのは、とても複雑な過程です。事実、身体経験にはいくつもの感覚信号が関わっています。こうした信号に問題があると、切断したはずの腕や脚がまだそこにあるように感じたり、腕や脚が2本以上あるような感じがしたりと、様々な神経疾患が起こったりします。

エイリアンハンド症候群の歴史

1908年、ゴールドスタインが右側の脳に脳卒中を起こした患者のケースについて詳しく述べたことがあります。脳卒中の後、この患者は、自分の左足が弱ったように感じ、更には左腕は自分のものではないかのように感じると訴えました。

1944年、アキライタスが、てんかんを治療するために脳梁を切開した2人の患者のケースについて詳しく述べました。その患者のうち1人は、右手にしてほしいと思った動作を意に反して左手が勝手にすると訴えました。医者たちはこの病態を統合運動障害と名付けました。

脳の障害

1972年、ブリオンとジェディナックがこの病態をエイリアンハンド症候群と名付けました。この2人の著者は、この左手の奇怪な運動を脳梁損傷に特徴的な症状であると解釈しました。2人は、切断症候群の症状を多く示す4人の患者の行動を分析しました。患者の症状には以下のようなものがありました。

  • 左手可動域より外の視野にあるものの名前を言うことへの支障
  • 口頭での指令の後に左手を動かすことの困難
  • 構成失行症
  • 左手の失書症
  • 半側空間無視と注意欠陥症状
  • 片手から片手へと感覚情報を送ることの困難

2人は研究の結果、エイリアンハンド症候群の症状はいくつかの神経疾患と関連があることを証明することができました。

エイリアンハンド症候群

エイリアンハンド症候群の患者は、自分の手足がひとりでに動いているように感じたり、勝手に意図的な動きをしているように感じたりします。事実、こうした動作は、動いているのとは逆の手足に拮抗していることが多いです。

この症状の影響を受けている人は、自分の手足が自分の体の一部ではないように考える傾向があります。まるで、自分のものではないかのようです。多くの場合、患者はこうした不随意運動を怖がり、そうした動きを止めたり、防ごうとすることに全神経を使います。

しばしば、エイリアンハンド症候群で苦しむ患者は自身を自分の意思でコントロールすることもできます。そのため、ブライアンら著者は2006年に、エイリアンハンド症候群には3つの主要素があると提唱しました。

  • 四肢は抑制されており、合理的な環境刺激に反応する傾向にあるため、その結果、利用行動(utilization behavior)となる。
  • コントロールされていない四肢の断片的な運動の連続は、その動作が随意的でありコントロールされているもののように見える。
  • 自分のものではないと思える方の四肢の行動に対して明確な意識がある。

よって、ストレスの多い状況下では、エイリアンハンド症候群が悪化する恐れがあります

専門家は以下のようにも述べています。

  • 側にある、興味を惹く物体がこうした症状を誘発する可能性がある。
  • 患者の注意力が下がっている時にこうした行動が顕在化する。

エイリアンハンド症候群の原因は?

エイリアンハンド症候群の原因は何だろうと思うかもしれません。薬剤耐性のあるてんかんを治療するための脳梁離断術(現在は行われていません)や腫瘍摘出などの手術が原因です。

脳

エイリアンハンド症候群の種類

前頭葉性AHS

前頭葉性AHSは以下のような脳の部位の損傷によるものです。

  • 補足運動野
  • 帯状皮質
  • 前頭葉前部皮質
  • 脳梁の前部

前頭皮質中央の損傷が、その部位とは逆の手の変異を招きます。

脳梁性AHS

20世紀最後の10年の間に、何人かの著者が新しいタイプのエイリアンハンド症候群の定義を唱えました。後部頭頂葉性AHSです。この種は前述のものよりも稀で、自立した動きや病状がある手足の人格化が特徴です。

治療

この疾患の治療はいくつかのテクニックから成ります。

  • 知覚とコントロールの底上げ
  • ストレスマネジメント
  • 代償的アプローチ

映画における描写

1964年、スタンリー・キューブリックがピーター・ジョージ原作の「破滅への二時間」という小説を基に「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」という映画を監督しました。原作の小説は、狂った司令官が核戦争を始めようと試み、他の人が彼を止めようとする物語でした。

ストレンジラブ博士は、四肢が奇怪な動作をする大変行き過ぎた人物です。彼の右手はまるで生き物のようで、映画の中ではずっとその手の動作は不随意的で不適切なもののように見えます。事実、ストレンジラブ博士はもう一方の手でその動きをコントロールしようとすらします。そのため、この映画は、エイリアンハンド症候群と共に生きるということがどういうことなのかをうまく描写したものだと言えます。


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