不安という化学現象の正体とは?

2020年1月23日
不安を感じることは、人間という種の生存を確実なものにするための重要なメカニズムです。しかし現代社会では、これと同じ化学的反応が、人間を助けるのではなく傷付けることが多くなっています。

不安に悩まされる人がこれまでになく増えている今、不安がもたらすものとは何なのかを知っておくことがますます重要になっています。そうしておけば、適切な予防対策をすることができますし、不安に伴う影響を知っておくことで、自分自身や周りの人々を、破滅的な思考やその他の不安による症状から守ることができるのです。

この記事では、不安という化学現象について、最初に引き金になるものから身体におけるT細胞の増加に至るまで、その仕組みを説明していきます。

不安 化学現象

不安は悪いことなのか?

多くの専門家たちが、ストレスと不安を全く同一のものであると考えています。しかし、片方は現代社会ではより悪者扱いされる傾向にあります。ところがストレスも不安も、人間の生存に欠かせない生物学的プロセスである身体のストレス応答に関連するものです。従って、不安が良いものであるか悪いものなのか考えること自体が的外れであると言えるでしょう。

人が脅威を知覚して不安や恐怖を感じると、それが闘争か逃走か反応のきっかけとなることが多くなります。

人間はこの、種の生存を確実なものにさせるためのメカニズムとともに進化してきたのです。不安を感じる仕組みがなければ、素早く動いたり重大な咄嗟の判断をすることはできていないでしょうし、私たちの身体には自分自身を守る身体的能力が備わってはいなかったと思われます。

問題となるのは、それほど危険ではない”脅威”に対しても身体がストレス応答を起こしてしまった時です。すると身体は闘争か逃走か反応の準備を始めてしまいます。しかし実際にはそのような反応は全く必要ないのです。闘争か逃走か反応に伴う化学的・情緒的反応が、不安を感じた時に不愉快な感情を引き起こしてしまいます。

不安という化学現象

脅威の評価:闘争か逃走か

人は脅威を認めると、すぐさまそれを評価します。ライオンに追いかけられるような状況はそうそうないものの、この反応は”脅威”として知覚したものすべてに等しく適用されるのです。シンプルな他人の発言から身の危険を感じさせるような奇妙で突然の騒音に至るまで、あらゆるものが脅威と成り得ます。

交感神経系

脅威の評価が終わると、体内での化学反応が始まります。交感神経系では、視床下部-下垂体-福神系が活性化し、これが副腎皮質刺激ホルモンの放出を促します。

視床下部は、体内における副腎皮質刺激ホルモンを調整したり、また、食べることや飲むこと、交尾、攻撃などの調整も司っています。従って言うでもなくストレス応答に関わる神経ホルモンメカニズムも開始され、脳下垂体が刺激されて副腎皮質刺激ホルモンの放出が促されます。

次に副腎皮質刺激ホルモンが副腎を刺激し、血流を糖質コルチコイドで満たします。

ストレスフルな状況下での糖質コルチコイドの役割

糖質コルチコイドは、ストレスの多い状況で生き延びるための能力を与えてくれるものですこれには、足の骨折や木からの落下といった身体の怪我から、不安や恐怖心、空腹といった身体的状況までもが含まれます。

糖質コルチコイドはアドレナリンと内因性オピオイドペプチドにも影響を与えます。後者はホメオスタシス(身体の恒常性)や痛みの制御、心臓血管の調整、そしてストレスなどに関わっています。

アドレナリンやその他のホルモンの放出により、ストレスのある状況では負荷になり得る身体のいくつかの機能が一時的に停止します。例えば、食べ物の消化には大量のエネルギーが必要です。これが、不安発作の後お腹の調子が悪くなったり食欲を失ってしまう理由なのです。そうなってしまったら少し辛抱して体の回復を待つしかありません。

また、起こり得る負傷に備えてその痛みに耐えられるように、オピオイドペプチドも放出されます。

これらの化学的反応がもたらすもの

これらのホルモン活動は、皆さんが思っているであろう以上に体内にたくさんの変化をもたらします。しかしストレス応答によって引き起こされる体内の変化の多くが、常に目に見える変化であるとは限りません。

ホルモンに反応して、血流をよくするために心臓の拍動が増加し、酸素レベルが上がります。これは不安による最も特徴的な症状であり、患者が特に力を入れて対処せねばならないものの一つです。

ストレス応答を抑えるために心理学者が用いる手法としては、呼吸法や漸進的筋弛緩法などがあります。どちらとも、不安を和らげるために呼吸を用います。意識的な呼吸は拍動を減らしてくれますし、気分を落ち着かせてくれるのです。

また、ストレス応答が行われる間、脾臓も収縮し、大量の赤血球を放出します。これが、負傷した際に非常に役立つのです。私たちが現代社会で知覚する”脅威”は実際に身体に危険が及ぶようなものではありませんが、我々の祖先は身を守るために野生動物から逃げて生きていたということを思い出してみてください。赤血球は免疫系の一部であり、万が一感染症に感染した場合に身体を守ってくれるのです。

さらに、肝臓も糖を合成して血中へ放出します。その際、酸素の需要が大幅に高まることへの反応として、気管支拡張が肺活量を増大させます。

これらの化学的反応がもたらすもう一つの結果が瞳孔拡張で、これにより目に集めることのできる光の量が増えるので、物体のアウトラインがより良く見えるようになります。そして起こり得る脅威に対する身体の反応として最後に起こるのが、血液凝固活動の活性化と、T細胞(白血球の一種)循環の向上です。

不安 化学現象

不安を抑えるためのカギとは

ご覧の通り、不安という化学現象には非常に明確な目的があります。そして喜ばしいことに、リラクゼーションという現象やそれを活性化させるあらゆる全てのメカニズムにも同じことが言えます。事実、リラクゼーション法の第一の目標は、副交感神経系に関連するものです。

交感神経系が体内のシステムを活性化させる一方で、副交感神経系は筋緊張を和らげ、呼吸ペースを遅らせます。さらに、動脈拡張を促して末梢血の流れを良くします。副交感神経系は呼吸速度を下げ、副腎からのアドレナリンやノルアドレナリンの放出を減少させ、基礎代謝を抑えます。

不安を軽減させるためのカギとなるのは、「交感神経系と副交感神経系は同時には働けない」という事実です。つまり、呼吸法やリラクゼーション法により一方が無効化されるので、それを受けてもう一方が活性化し始めるということです。

このように、不安が生み出される背景には、明白な生物学的・生理的土台があります。脅威への反応として、身体は次に起こり得ることに備えて準備を整えるのです。一方で、不安という化学現象の引き金となるのが実際の危険な状況ではなく、知覚された脅威であることも我々はわかっています。

不安それ自体は悪いものではありません。ストレス応答を可能にする生理学的メカニズムはいたって正常で必要不可欠なものなのです。不安が問題となってしまうのは、全てのものを実際にそれが危険であるか否かに関わらず脅威として知覚してしまった時です。

そうなると、身体は決して起こることのない危険な状況に備えはじめてしまいます。これはまるで、ギアがニュートラルに入っているときにアクセルペダルを踏むようなもので、何の理由もなくエネルギーを無駄遣いしてしまっているということなのです。

  • Bruce, T.J., Spiegel D.A. y Hegel, M.T . (1999). Cognitive-behavioral therapy helps prevent relapse and recurrence of panic disorder following alprazolam discontinuation: a long-term follow-up of the Peoria and Dartmouth studies. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 67, 151-156.
  • Marks, I.M. (1987). Fears, phobias and rituals. Nueva York: Oxford University Press.
  • Schulte, D. (1997). Behavioural analysis: Does it matter? Behavioural and Cognitive Psychotherapy, 25, 231-249.