扁桃体ハイジャック

· 2017年9月30日

 

あなたは、自身が抑制できなくなるほど非常に強い感情によって絶望に引きずり込まれると感じたことはありますか?あなたは調子に乗って自分が発言した言葉に対して、後で後悔したことはありますか?それとも、自分自身でなく特定の感情が自身の脳をコントロールしていたと感じたことがありますか?

これらの質問のいずれかに肯定的な答えがあれば、あなたは、ある時点で自身の扁桃体にハイジャックされたことになります。

扁桃体ハイジャック(Amygdala hijack)は、このような抑制できない情動反応を説明するために、心理学者ダニエル・ゴールマンによって名付けられた造語です。感情知性の専門家であるゴールマンは、私たちが非理性的になる「からくり」は、瞬間的かつ即時に起こる感情制御の欠落と関係していると説明します。これは扁桃体によってハイジャックされた時に発生します。

「強い否定的な感情は、個人の全ての注意を引き、他のことに注意を払おうとする試みの障害となる」

-ダニエル・ゴールマン

扁桃体とは?

扁桃体は内側側頭葉の奥に存在する皮質下の構造体です。アーモンドの形状をしているため認識しやすいです。 海馬、視床下部および眼窩前頭皮質と共に、これらは情動に関与する脳部位もしくは大脳辺縁系を形成します。

大脳辺縁系は、特定の刺激に直面したときの生理的反応を制御します。つまり、これらすべての構造体は、人間行動の感情制御には欠かせないものです。しかし、大脳辺縁系の部位の中で扁桃体を際立たせるのは、それが私たちが生存するための「カギ」であるという事実です。というのは、生理学的・行動的なレベルで感情に反応するパターンを、感情そのものと統合する、というのが主な機能だからです。

情動がハイジャックを起こす能力を理解するためには、扁桃体が情動反応を引き起こすという事実だけでなく、前頭葉とリンクしていることで、特定の行動の阻害を可能にしていることを理解するのが重要です。

活発な脳の活動

扁桃体によるハイジャックはどのように起こるか

扁桃体ハイジャックとは、それを引き起こした刺激に対する瞬間的かつ過剰な情動反応です。これは、自分の情緒安定性に対する脅威として刺激が認識されるためです。この反応は扁桃体が脳の他の領域、特に大脳皮質の活性を阻害するために発生します。つまり、個人の行動を支配し、さらに私たちをより合理的でより人間的にすることに関与する脳の領域の働きを遮断します。

ハイジャックを抑制する前頭部皮質こそ、私たちの論理的思考や行動の切り替えのプランニングをつかさどる領域です。一方、扁桃体は脳の最も原始的な部分の一部を形成しています。つまり、この部分こそ私たちの感情を抑制する領域なのです。したがって、私たちの論理的思考は、私たちの感情の支配下にあることになります。

衝動は感情の媒介物であり、あらゆる衝動のもとは、行動を通じて自分自身を表現しようとする開放的な感情であることを心に留めなければならない」

-ダニエル・ゴールマン-

扁桃体ハイジャックは理にかなっているのか

脳の最も発達した部分である大脳皮質が、扁桃体のような原始的な構造物によって支配される可能性があるのは、少し不思議なことです。しかし、人間の進化の観点から見ると理にかなっています。何千年も前、生存すること、それがすべてでした 。

例えば、 ジャングルで狩りをしていたとき、 突然、目の前にライオンが現れることがありました。 扁桃体は、脳機能の残りの部分を停止させます、なぜなら、立ち止まって、今向き合っている危険について考える場合ではなかったからです。むしろ攻撃するか、もしくは逃避するかという反応を決める時だったのです。

しかし、現代社会では、重要なストレス要因に直面したとき、例えば渋滞のような生存を脅かさない状況でも、扁桃体によりハイジャックされます。これにより体中がアドレナリンとコルチゾールで満たされていきます。これらのホルモンは、情動がハイジャックされている約4時間の間、私たちの体を変えます。

そして、重大なストレッサーによって強い情動が生じた後、しばらくの間、いわゆる「感情的な二日酔い」を感じる傾向があります。この二日酔いは、私たちのシステム内をまだ循環しているホルモンが原因であり、不快感をより長く持続させます。

心臓と脳でバランスを取りながら綱を渡る人

このような時何ができるのか

昔から言われてきたこのアドバイスを聞いたことがあるかもしれません。「怒っているときは十まで数え、もし本当に怒っているときは千まで数えなさい」 これは実に理にかなった対処法です。なぜなら、人は数え始めると、大脳皮質が活性化されるからです。これは前にも述べたように脳の前頭葉であり、脳の論理的思考をつかさどる領域が情動のハイジャックの間に機能停止になっている領域です。

つまり、ストレスによって起こる激しい感情に襲われる時に数え始めると、あなたは、その状態から抜けだすことができます。自分自身に心の余裕を与え、何が起きているのか理解することができるのです。そして論理的思考をつかさどる脳の領域を使い始めることができるのです。この方法は、あなたが扁桃体ハイジャックを受けているときに発生する衝動的な反応を避けるのに役立ちます。

もうひとつの効果的な対処法は、マインドフルネスの手法のように、意識的に自身の呼吸に注意を払うことです。 呼吸に注意を払うことで、自分を現在の瞬間に呼び戻します。空気を吸い込むたびに、あなたは自分を落ち着かせます。結果として交感神経系の働きを抑制する副交感神経系が活性化されます。交感神経こそ、衝動のハイジャックの間に活性化されるものです。

あなたは間違いなく重大なストレス要因によって活性化された扁桃体ハイジャックから抜け出す必要があります。そのためには、すでに発生したことと、この瞬間との間に距離を置く必要があります。脳の論理的思考をつかさどる部分を活性化させる行動をとることが非常に望ましいのです。マインドフルネスのような動作も現在の瞬間に焦点をあわせるのに役立ちます。さらに、これらは、あなたが感じる感情を体験するための新しい方法を教えてくれます。