解離性健忘;強いストレスによる記憶障害

解離性健忘;強いストレスによる記憶障害

最後の更新: 24 9月, 2017

解離性健忘とは、非常に強いストレスにより過去の出来事を思い出せなくなる障害です。心理学ではこれを、心因性健忘、解離性健忘、機能的健忘などと言います。健忘はこれと言って決まった物理的病理によって引き起こされているわけではありません。また、自然に、または心理セラピーによって無くした記憶を回復させることも出来ます。

生涯心に深く残る、ストレス度の高い出来事を経験することがあります。これらは人生や人間関係のあらゆる側面を変化させます。激しい苦しみは強い衝撃を体全体に与えるのです。そこから自分を守るため、心はその出来事、またはそれに関連する事柄の記憶全てに蓋をしてしまうのです

解離性健忘には特定の具体的な出来事などが要因となっています。戦争を経験した軍人、幼少期の性的虐待、ドメスティックバイオレンスの被害者、自然災害やテロ攻撃の被害者などがその一例です。

 

解離性遁走;ストレスによるアイデンティティの喪失

特定の出来事を思い出せなくなるだけではありません。自分のアイデンティティを失ってしまう人もいます。記憶だけでなく、生活にも影響を与え、住んでいた町や家族を捨ててある日突然いなくなったりします。これは数時間の場合もありますが、数年に及ぶケースもあります。長期になると、別の場所で違う人間として仕事や家庭を持つ人もいます。

顔のないカップル

これは辛い状況から逃げ出したいという隠れた願望によって引き起こされます。病気ではなく、強いストレスの中で自分のアイデンティティを失う事によって起きているのです。そしてその逃げている間、本人は何事もなかったかのように、とても自然に振る舞います。

そしてある日、自分がどうやって、なぜここにいるのかと我に返るのです。普通逃げていた期間に関する記憶は一切なく、逆にその前に起きたことを思い出し始めます。また、徐々に記憶が回復するケースもありますが、一部だけが抜け落ち、どうしても思い出せない、という事もあります。

 

解離性健忘は具体的な状況に起因する

解離性健忘はある特定の辛い経験、繰り返し起こった強いストレスを引き起こす状況に影響されています。本人にその記憶がなくても、行動にはっきりと表れます。例えば、エレベーターの中で性的暴行を受けた女性がいます。彼女にはその記憶がありませんが、エレベーターに乗る事を避け、また乗ろうと考えるだけでも具合が悪くなったりします。

大抵の記憶は回復しますが、その記憶は真実のものとそうでないものが入り混じり、どこまでが本当の記憶なのか判断するのは非常に難しいです。辛い出来事によって起きる健忘にはいくつかの種類があります。

局在性健忘:起こった辛い出来事そのものの記憶がない。

持続性健忘:辛い出来事から現在までの記憶が一切ない。

全般性健忘:自分に関する情報、自分が誰でどこに住んでいるのかなどの記憶がない。これは非常にまれで、一般的ではない。

選択的健忘:出来事の記憶が断片的にしかない。

系統的健忘:特定の物事に関する記憶がない。例えば、母親の事を一切覚えていないなど。

 

記憶の治療と回復

カウンセリングを受ける男性

解離性健忘は、ストレスの強い出来事が起きたすぐ後に現れるわけではありません。数時間後、時には数日経ってから現れることもあります。健忘に陥った後にフラッシュバックが起こる事もありますが、本人にはそれが実際に起こったことだという認識がなかったりします。

多くの場合、身体的、精神的な問題が生じ始めます。疲労感、睡眠障害、、薬物乱用などがそうです。ある日突然、自分に何が起きたのかを思い出し記憶が回復すると、自殺のリスクが高まります。セラピーでは、辛い経験を乗り越えるために家族のサポートも欠かせません。これは辛かった出来事の記憶に対処し立ち向かう助けにもなります。

臨床催眠療法もまた有効です。リラックスし集中することで、書き換えられた意識と向き合い、ブロックされていた思考、感情、記憶を探ります。睡眠療法はリスクが全くないというわけではなく、間違った記憶や非常にストレスの高い経験を回復させたりもします。

 


このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。