批判は何も生み出さない
批判とは、苛立ちや怒りによって引き起こされる「モンスター」のような行為で、何かを変えようとする気持ちから起こる行動ですが、実際は他人の心を引き裂く行動でしかなく、批判は徐々に直接的な攻撃や文句、そして言葉に隠された攻撃的な態度へと形を変えます。
批判する人は、何かに対する文句を言う代わりに「批判」という形をとることで、誰かや何かを変えようと期待しますが、実際は、相手が変わることはなく、批判された人の評判を悪くするだけではなく、相手に罪悪感や自己防衛ができないような絶望的な気持ちを与えます。
批判を受けた人は攻撃されているように感じるため、批判を受け止めて変わるのではなく、保身に回る、怒る、また罪の意識を感じるなどの反応を示します。
地球を徐々に侵食する風のように、一つ一つの批判の影響は小さくても、継続的に相手との人間関係を侵食してダメージを与えます。
批判の奥に潜む苛立ち
私たちの目は魂をうつす鏡だと言われますが、ほとんどの場合、私たちの真の姿を反映するのは目ではなく、私たちの口から発する言葉です。批判は、私たちの内なる怒り、苛立ち、コミュニケーション能力の欠落、他人をコントロールしたい衝動などをさらけ出します。
批判は、感情を爆発させ他人を操ることを目的としているため、この目的を達成するためには他人に屈辱的な気持ちを与えるだけで、何かを変える力を持ちません。
たった一度の批判やごく稀に批判をする場合は、大きな問題を引き起こす原因にはなりませんが、批判を習慣的に継続して行う時に問題が生じます。
批判は刀のようなもの
批判の中には微妙でわかりにくいほどの小さな批判もありますが、継続して批判を受けることで、水滴が徐々に侵食するように、相手に深い傷を負わせる結果となります。
批判の大小に関わらず、批判は継続して行われることが多く、精神的なダメージを与えるため、回復に長い時間がかかることがほとんどです。
過去に起きた問題や相手の習慣や癖を引き合いに出し、批判している出来事ではなく、相手の人間性そのものを批判することに焦点を絞りがちです。
その例をご紹介します:
「また同じ失敗をしたね。」
「いつも気分が乗らないんだね。」
「今の時点で理解してるべきなのに。」
「変わる気はあるの?」
「いつまでのこれが続くなら、こちらも我慢の限界に達するよ。」
「気に触るなあ。」
ほとんどの場合、批判には相手を傷つける言葉が伴います。
相手をバカにしながら屈辱したり、恐怖心を与え、相手が自分は無力で価値のない人間だと、悲しくなり不安感や罪悪感を感じ始めます。
精神状態は擦り減るが改善効果はない
誰かを批判しても、批判をする人が望むような結果は得られません。
誰かを批判して苦情をいえばいうほど、相手が変わるチャンスは少なくなります。批判により、相手との距離ができてコミュニケーションが不足するため、人間関係が複雑化して、相手が変わるチャンスが減ります。
「好意的な分析と破壊的な批判の違いを理解しなさい。自分の発する言葉の意図は、相手を助けることなのか、相手への怒りの爆発なのか、または相手を傷つけるためなのかをしっかりと見極めなくてはいけません。」
ーナポレオン・ヒル
相手への批判やコミュニケーションに関連して起こる問題は、これまでに築き上げてきた大切な人間関係に悪影響を与え、人間関係が終わる主な原因になると言われています。
相手を傷つけないコミュニケーション方法
自分の感情に押し殺されそうになった時、自分一人で解決しようとするのではなく誰かのサポートを求めてください。
誰かに対して不満が溜まっている時も、その相手に自分の気持ちやイライラの原因、そしてこの状況を改善するためにはどのように解決したいかという自分の気持ちをはっきりと伝えることが大切です。
相手を攻撃するのではなく、相手に「リクエスト」を出すことへと変換してください。
「あなたにとって私はどうでもいい存在なのでしょう?忙しいあなたは私のことを気にもしていない」というよりも「あなたが忙しいことはわかっているけれど、最近一緒に過ごす時間が減ってさみしい。今週一緒に過ごす時間はありそう?」と聞く方が相手の受け取り方も異なるでしょう
批判を相手を傷つけない「リクエスト」メッセージとして変換して伝える方法とその例をご紹介します:
- あなたが抱えている感情は、その原因が誰であれ「あなたのもの」です。自分が感じていることや抱えている感情について誰かを責めず、自分の感情として受け入れることが大切です。「あなたのせいで頭がおかしくなりそう!」という代わりに「それをされると神経質になってしまう」と伝えましょう。
- 過去ではなく、現在と未来に焦点を当ててください。過去に囚われてしまうとそこから動けなくなります。行動を起こすためにも現在と未来へ目を向けましょう。「これまで一度も私の話を聞いてくれたことがない」ではなく「次回はこうしてください」という希望を伝えてください。
- 相手に伝えることは正確にそして詳細を伝えてください。相手の人間性や性格を変えることはできませんが、相手の行動に変化を与えることはできます。相手自身を責めるのではなく、相手の行動に焦点を当てることで、問題解決への糸口が見つかります。「いつも機嫌が悪いしあなたはバカじゃない?」というのではなく「怒っているように見えるけれど何かあった?」と尋ねましょう。
- お願いします、ありがとう、ごめんなさいという言葉を、嫌味や皮肉を込めずに心から伝えましょう。これらの言葉を心から発する気持ちは相手に伝わり、無駄な言い争いを防ぐ役割を果たします。
反対するための同意
自分の考えを的確に表明するということは、必ずしもお互いが常に同意しなくてはいけないということではありません。
コミュニケーションが適切に行われている状態でも、相手の考えに賛成できない時や、相手に変わってほしいと思うケースがありますし、賛成や同意が不可能な状況もあります。
相手との距離を取り、痛みを与えたり受けたりしながら言い争うよりも、相手とコミュニケーションを取り、相手の意見をサポートしながら近い距離で会話を進めることが大切です。
いつも相手に同意できるわけではありませんが、相手を敵とみなし議論をするよりも仲間として快適な状態で話し合いの場を持つことが大切です。