「ほのめかし」は人間関係を傷つける

· 2019年5月26日
絶えずほのめかすようなコミュニケーションをとることは、歪んだコミュニケーションに他なりません。それは分かりにくい心理的虐待の一種なのです。

思っていることを直接言うのではなく、ほのめかすようにして伝える人は珍しくありません。しかし、パートナーや家族、友人などに日ごろから「ほのめかし」をしていると、関係が緊迫してしまうことがあります。言っていることと心の奥底で思っていることが相反すると、コミュニケーションプロセスが歪みます。そしてそれは分かりにくいタイプの虐待となってしまうのです。誰かを責めたり責任転嫁をしたりする場合には特にそうです。

言葉の力を見くびり、とても危険な習慣を身に付けてしまう人は多いものです。この点では、私たちは鋭い皮肉を言える人や、魅力的で非の打ちどころのないウィットによって間接的に物事を表現できる人に感心しがちです。

もちろん全ては文脈や状況、その時々によって異なります。しかし、このような非効果的で、害のある、卑劣なコミュニケーションを好む人がいることは否定できません。

問題は、なぜ人はそのような有害な方法を続けるのかということです。これには主に2つの理由があります。ひとつ目は、先ほども述べた通り、ある意味で「独創的」であるということ。ふたつ目は、本人にとってはそれが自分を隠し、守るための方法であるということです。これによって、「そんなつもりで言ったんじゃないよ」などと言って自己を正当化することができるのです。

このごまかしの「言葉のゲーム」によって、全く異なる意味のことを人に言うことができます。これは例えば誘惑する際などにおいては有効かもしれませんが、多くの状況においてはそうはいきません。

「攻撃的な傾向は、人間の生来の、独立した、本能的な性質である。」

― ジークムント・フロイト ―

ほのめかしをすること

「ほのめかし」と歪んだコミュニケーション

ほのめかしは、パッシブアグレッシブ(受動的攻撃)な人がする傾向にあります。彼らは分かりにくいやり方で他人を侮辱したり、責任転嫁したり、気に入らないことがあると冷ややかな態度をとったりします。人はふざけている時なんかにも何かをほのめかしたりするものです。しかし、こういった行いは不適切であると知っておく必要があります。

フロリダ大学、心理学教授のジム・K・マクナルティはこの心理を“indirect hostility”(間接的敵意)と呼びます。これは、言っていることと伝えようとしていることに一貫性が欠如しているのが特徴の、故意のコミュニケーションフローです。

また、人が何かをほのめかすときには、隠された意味を明らかにする非言語コミュニケーションを伴うものです。例えば、怒りや葛藤、軽蔑などの様々な感情を示すジェスチャーや態度が見られるかもしれません。

ほとんどの場合、人が用いる非言語コミュニケーションは言語よりもずっと正直です。そのため、被害者は言葉そのものよりも、相手のトーンや態度を先に解読するのです。

バカにしたり恥をかかせたりする目的の「ほのめかし」が日常的になると、心理的な虐待になってしまうことがあります。そのため、「ほのめかし」は歪んだコミュニケーションと同じであり、被害者に深刻に影響を及ぼしうるのです。

ほのめかしは人間関係を傷つける

日常的にほのめかす人にどう反応すべき?

先述したマクナルティ教授は愛情関係の分野における著名な専門家です。2016年に行われた研究では、恋愛関係での最適なコミュニケーション戦略は言い争いを解決するものであると述べています。

そのうちのひとつに、ダブルバインドを避けることがあります。人類学者グレゴリー・ベイトソンによって作られた用語であるダブルバインドは、愛情や尊敬をも壊し、抑圧する「ほのめかし」や不明瞭なメッセージの使用が特徴です。

「ほのめかし」はすべきではないということが分かりましたが、自分が「ほのめかし」を受ける立場になったときにはどうすればよいのでしょうか?自分にいつも「ほのめかし」をする人に対してどのように反応すべきでしょうか?以下のような方法が役に立つかもしれません。

ほのめかしへの対応

「ほのめかし」をする人への対処法

  • 効果的なコミュニケーションを要求する:誰かに「ほのめかし」をされていると気が付いたら、明確なコミュニケーションをとるように要求してみましょう。「賢くない」から理解できないのだ、などと言われたら、いざ話し合いが必要なときには誰か「賢い人」に同席してもらうよう頼みましょう。
  • パッシブアグレッシブな言動を特定する:本当に言いたいことを言う代わりにほのめかして話す人は、パッシブアグレッシブ(受動的な攻撃)な性格をしています。このような場合、最も大切なのはできるだけ早く心の境界線を引くことです。そのような相手の態度は受け入れないことをしっかり理解させ、まっとうな扱いを要求しましょう。
  • また、自らが相手に期待するものの良い実例になれるよう心掛けましょう。誠実なコミュニケーションを求めるなら、自分から誠実なコミュニケーションをとるのです。
  • コントロールされないように:「ほのめかし」の背後にはコントロールしたいという意図が隠れていることを忘れてはいけません。ほのめかし、皮肉、侮辱などは人の自尊心を傷つけるため、これによって人をコントロールしやすくなるのです。
  • 人を傷つけるその一言は、突き止めて、歯止めをかけるべき別の不健全な行為への入り口になってしまうかもしれません。できるだけすぐに境界線を引きましょう。

「ほのめかし」はある種のシチュエーションでは許容され、評価されることさえもあるのは事実ですが、それは歪んだコミュニケーションなのです。健全なコミュニケーションは正直であると忘れないでおきましょう。

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  • Long, N., Long, J., and Whitson, S. (2017). The Angry Smile: The New Psychological Study of Passive-Aggressive Behavior at Home, at School, in Marriage and Close Relationships, in the Workplace and Online. Hagerstown, MD: The LSCI Institute.