自分を慈しむー「セルフ・コンパッション」の美学

2020年6月8日
自身に対し理解を示しつつ、成長を優しく促し、自身にとっての最善を望む姿勢。こうした姿勢は自身に恩恵をもたらします。自己への慈しみである「セルフ・コンパッション」は自己批判よりも健全で健康的なものです。

私達の大半は、自分に対しとても批判的で、辛く当たってしまっています。自分には何かが足りない、何かしら欠陥があると思っている場合にはなおさらです。失敗をおかすと、大抵その失敗をおかした自分をいじめてしまいます。そうすることで自分や状況が良くなると思うのです。ですが結局のところ、そうした言動はちっとも改善につながりません。それよりも役に立つのが、セルフ・コンパッションです。

自己批判や自分いじめに取って替わって、自身の成長を助けてくれるものがセルフ・コンパッションです。セルフ・コンパッションとは、自分を優しくいたわり、自分には他の人間と共通するものがあると認識することです。それは、自分の限界を受け入れることでもあります。

心理学の分野でトップを争う研究者であるアメリカ人心理学者、クリスティン・ネフによると、セルフ・コンパッションには3つの基盤があります。

  • 自分への優しさ
  • 自分に宿る人間性の認識
  • 集中力
セルフ・コンパッション

自分への優しさ

自分に対して優しい気持ちを持つことで自分の心だけでなく、体にも変化が現れます。

自分の中に存在する痛みをなだめることで、あらゆる哺乳類に備わっている愛着のはたらきに訴えかけることができます。このはたらきが持つ機能の中で最も重要と言えるのが、信頼感を高めるホルモンであるオキシトシンの分泌です。オキシトシンの分泌により、安らかな気持ちになるだけでなく、自分は安全だと感じ、他人に対してもおおらかでいられます。また、自己愛や思いやりを感じる能力も高まります。

自分に対して優しくすることで、自分のことを価値があり、愛されるにふさわしい人間として扱うことができるのです。

『NVC:人と人との間に命を吹き込む法』の著者であるマーシャル・ローゼンバーグは、自分に話しかけるときには批判的な言葉ではなく、共感する言葉を使うことの大切さを強く訴えています。自分をいじめるのではなく、理解ある態度をもって自分を大事にすることが一番大切なのです。

共通の人間性を認識する

思いやりという気持ちは、人間という存在は不完全なものであるという認識から起こります。自分に対して思いやりを持つことは、人間はみな失敗することがあるということを認識することになります。

自分の中にあるそうした共通の人間性に触れる時、そこには共有されている苦しみがあるということを思い出しましょう。誰だって、生きていれば痛みを感じたり、苦しんだりするものです。

自分に対して思いやりを持つことは、自分のことをかわいそうだと思うことではありません。セルフ・コンパッションは、自分の置かれている状況をより良く、もっと優しい形で理解していこうと促すものです。そうすることで、より良い自分になるための良い解決策を見つけられるようになるのです。

タラ・ブラクはこれについて次のように説明しています。「自分には何の長所もないという気持ちは、他のみんなから取り残されているという気持ち、生きるということから取り残されている気持ちと共に起こります。もし私達が完璧な存在ではないとすれば、どうすれば自分はコミュニティの一部であると実感できるのでしょうか?一見、悪循環のように思える質問です。自分は無力だと感じれば感じるほど、疎外感とひ弱な自分をより強く感じるのですから。」

優しさのように他人とのつながりを感じる気持ちは、脳内にある愛着のはたらきを活性化させます。他人とつながっていると感じている人は逆境に対してあまり恐れを抱くことがなく、人生がもたらす困難に対してもより柔軟性をもって反応することができます。

セルフ・コンパッション

集中力を高める

セルフ・コンパッションを実践するための3つ目の鍵は、集中力、あるいはマインドフルネスです。今という瞬間を批判せずに、ありのまま受け入れて生きることで、自分の苦しみというものが何なのかをより明確に知ることができます。

また、マインドフルネスを実践すると自分の感情や思考に縛られることなく、ありのままの感情や思考を認識し、自分の気持ちを受け止めるのに役立ちます。

大切なのは今、この瞬間に自分の意識下で起こっていることを観察することです。そうすることで、過去と未来に対する考えをそっくりそのまま「ただの考え」として認識することができます。

更に、マインドフルネスは、様々な状況に対して安らか、かつ穏やかに対処する術を授けてくれます。そのおかげで、過激に反応することがなくなり、後々後悔するような事態を招かずに済みます。

自分に対して思いやりを持つということは、つまりは、絶えず自分に対して優しくしてあげるということです。これは一生を通じて育み続けるべきものなのです。

  • Neff, K. (2012). Sé amable contigo mismo. Paidós: Barcelona.