片親引き離し症候群

· 2018年11月2日

片親引き離し症候群(PAS)は、1985年、リチャード・ガードナーにより提唱されました。子どもの親権争いに関連して症状が現れます

片親が子どもともう一方の親との関係に悪影響を与えることで、子どもは片親引き離し症候群になります。当然子どもは、大切な人や自分を大切にしてくれる人、世話してくれる人が悪い人だと思いたくありません。

両親の別れの後、子どもが一人の親に対し拒絶を示し始めるのは、PASによく見られる症状です。拒絶の示し方は人により様々です。

PASは法的制度にも影響があり、そうなると問題はさらに大きくなります。両親はもちろん、弁護士や裁判官もこれを考慮します。

「父親または母親がもう一方の親に関し、子どもを洗脳する」

-パブロ・ニエバ、スペイン神経医学会、カスティーリャ・デ・ラ・マンチャ・カレッジ・オブ・サイコロジスト-

悪口を言い、見下し「悪い親」を作り上げます。さらに、「良い親」は愛され、理想化されるのです。これを片方の親が操作し、子どもに信じさせます。そして、子どもはそれを信じ、「悪い親」について悪く言い始めるのです。

片親引き離し症候群は、WHOやアメリカ精神医学会など公式に認められたものではありません。また、スペインの司法評議会は、これを争論の的にすべきではないと言います。それでも、最終的に決断を下すのは裁判官です。

片親引き離し症候群

片親引き離し症候群の原因

親が子どもを巻き込み、もう一方の親を敵としたがる原因について、いくつか考えられます。次が主な原因として挙げられます。

  • 二人の関係が終わったことを認めたくない
  • 口論を通し、関係を保とうとする
  • リベンジ
  • 痛みを感じたくない
  • 自分を守る
  • 相手のせいにしたい
  • 子どもを失う恐怖、または、子どもにとって一番の親でいたい
  • 権限と所有で子どもをコントロールしたい

一方が関係の終わりを認めたくない時、また、離婚後の経済的支援を求める時、片親引き離し症候群は生まれる

嫉妬心が原因になるケースもあります。資産分与において、優位な立場でいたいという思いが裏にあることも考えられます。

個人の病理が隠れていると考える心理学者もいます。過去に、放棄、疎外を感じていたり、身体的・性的虐待、アイデンティティの喪失を経験したことが原因になりうると言います。(Garden, 1998b; Dunne and Hedrick, 1994; Walsh and Bone, 1997; Vestal, 1999)

ケンカと少女

子どもに現れる片親引き離し症候群の症状

ガードナー(1998)が記した、PASの子どもにみられる「初期症状」は次の通りです:

  • 敵とする親に対する侮辱や軽蔑を悪いと思わない。親の思いを気にしない。
  • 片親を嫌い、ひどい人だと言い、悪い部分を見出す。
  • 言動の理由に強い根拠がなく、あいまいである。片親と距離を保ちたいと、様々な理由をつけ、口論になる。
  • 迷いがない。親子関係を含め、人間関係において、何かしらの迷いがあるのが正常だが、この子どもははっきりしている。片方の親は良く、もう一方は悪いと判断する。
  • 言われたことを受け入れる。敵とする親と闘おうとする。もう一方の親が嘘をついていると分かっていても、それを受け入れる。
  • 人の言葉を使いケンカする。子どもが使わないような単語やフレーズを用い、その言葉をただ繰り返すようにケンカする。

「子どもが両親を大切にするのは、裏切ではない」

両親を比べる少年

その他の症状

ガードナー以外にも症状を記した人がいます(Waldron and Joanis, 1996)。

  • 自分を否定する。過去の出来事と状態の中で、自分を見失う。
  • 親の離婚や法的手続きに関して、子どもが不必要で不適切な情報を知っている
  • 緊急性や弱さに敏感になる。結果、物事をすべて生きるか死ぬかのように考えてしまう。
  • 子どもが、愛し愛されることに制限を感じる

片親引き離し症候群と子どもが抱える恐怖

PASの子どもは不安を感じやすい傾向にあります。

  • 見捨てられる不安。例え短時間であっても、片方の親と時間を過ごす子どもに対し、もう一方の親が罪悪感を植え付けることがある。子どもと離れていた時間に感じていた思いを子どもにぶつける。
  • 愛する親に対する不安。敵とする親に対してもう一方の親が抱える不満や怒りを、子どもが目にすることがある。それを子どもは自分の責任だとしてしまう。矛先が自分に向かうのではないかと心配し、さらに心理的に依存する。また、それを避けるため、攻撃的な方についた方が、自分は安全でいられると考える。

子どもは、不安や恐怖を感じるだけではありません。親や家族はその不安や恐怖を助長します。そして、子どもはそれが間違っていないと思うようになるのです。

ソファーで悩む少女

親はどのようにして、もう一方の親から子どもを離すか?

方法は様々です。小さなことから、恥知らずと呼べるようなものまで多くあります。例えば、一方の親の存在を否定するというものがあります。子どもは弱く、守ってあげなければならないと考え、自分と子どもの結びつきをより強くしようとします。

誰にでもある違いを良いか悪いか、正しいか間違いかで判断するという方法もよく見られます。小さな行動を、ネガティブなものに仕向けます。さらに、子どもは両親のケンカの間に立たされることになります。

良い経験も悪い経験も含め、もう一方の親と比べるという方法もあります。一方のライフスタイルや性格を非難したり、子どもの同情を得るために、過去の出来事について「真実」を話すこともあります。

子どもの前で、自分は被害者だと演じたり、恐怖や不安、罪悪感を見せることもあります。そうかと思うと、優しくなったり、全てを認めることもあるのです。(Waldron and Joanis, 1996)

参考資料

Bowen,M.(1989). La terapia familiar en la práctica clínica. Bilbao: DDB(original edition 1978)

Balaños,I.(2000).Estudio descriptivo del Síndrome de Alienación Parental. Doseño y aplicación de un programa piloto de mediación familiar. Tesis doctoral no publicada. Universidad Autónoma de Barelona

Suares, M. (1996).Mediación Conducción de disputas, comunicación y técnicas. Barcelona: Paidós