傷ついた経験のある人は人生を強く生き抜ける

傷ついた経験のある人は、そこから立ち直り生き抜く力を持っています。体が傷だらけになり心が錆びついたとしても、それが鎧となって身を守るのです。他人の嘘や身勝手さに惑わされたりしません。彼らは辛く苦しい状況から、自分の身を守る方法を知っているのです。

こういった辛い状況は、様々な要因によって生み出されます。最近は、目に見えるストレス度の高い出来事だけでなく、静かに心を傷つけていく、まるでウイルスが体の中に入り込んで病気を引き起こすようなものもあります。人生は厳しく、何度も傷つく事があるでしょう。直接的ではなくても、他の人が気づかないところで傷つくこともあるのです。

心に突き刺さる感情

これについてとても分かりやすく書かれている「Microaggressions in everyday life（日常生活の中のマイクロアグレッション）」という本があります。この本の中では、人が日々知らず知らずのうちに傷つけ傷つけられている些細な出来事について書かれています。体を直接叩いたりして攻撃するのとは違って、心を徐々に傷つけ、そこから痛みが生み出される状況です。

生きていると様々な状況や形で傷つくことがあります。心に大きな傷を負いながらも、それに気づかないまま過ごしている人も多くいます。ですが彼らは無意識的に神経が過敏になり、苛立ちが募り、おさまらぬ怒りと異様なまでの疲労感に苦しんでいます。

中にはこういった状況から何かを学び、自分自身を癒す事の出来る人もいます。彼らの心は強く、素晴らしい柔軟性や回復力を持ち合わせています。

回復する事で、人は強く逞しくなる

事故、失敗、虐待、失恋などストレス度の高い出来事には、人を変える力があります。それは気力を失い人生を全く楽しめなくなってしまう人と、その逆に以前より強くなり、様々な素晴らしいチャンスを探り当てる人との２種類に分かれます。

私たちには、自分自身との戦いに勝つための心を強くする道具、機会が必要なのです。

回復力と脳化学

高いストレスを受けたからといって誰もが強くなるわけではないという事は、心理学者や神経生物学者の間では良く知られている事実です。全ての人が回復という脳のサバイバルメカニズムを活性化させられるわけではありません。２０世紀初頭、カナダの生化学者ハンス・サリーは、回復力はストレス度の高い状況に適応するためにあるという事を証明しました。私たちの神経系は心の安定とバランスを整えるため「調整」をする必要があります。そのため神経系は、特定のホルモンに、傷ついた心を回復するよう指示を送るのです。

人は恐怖に飲み込まれると、まるで石のように身動きが取れなくなってしまいます。遺伝などの要素によって回復力が強かったり、もしくは弱かったりと、それぞれ気質の違いがみられます。また、子供の頃のトラウマになるような体験も、脳化学に影響を与えることがあります。

ネガティブなストレスは、子供の脳の発達を妨げます。心の傷つきやすい大人へと成長するのです。ですが、この回復力は、トレーニングで向上させることが出来ます。

心に負った傷が生き残る術を教えてくれる

この傷とは、トラウマの事です。目には見えないかも知れませんが、あらゆる側面に影響を与えています。ノースカロライナ大学心理学教授で、この道の専門家であるリチャード・テデスキ氏は、心が傷つけられた人は世の中を信じることが出来なくなると言っています。

築き上げて来た信念は崩れ落ち、未来への希望も消えてなくなります。現在も未来ももう存在しません。それを再構築するには多大な努力が必要となります。折れた骨が治るのを待つのとは違います。壊れてしまった魂を１つ１つかき集めて、また元通りに治していくような作業です。

傷ついた経験のある人は同情など欲しない

リチャード・テデスキ博士はこの社会で起こりやすい誤りに注目しました。幼少期の虐待に苦しむ人、事故で愛する人を亡くした人、ドメスティックバイオレンスから逃れた女性、このような人々に多くの人がまず「かわいそう」という感情を抱きます。

「こんな状況を乗り越えることなど出来ない。」「心は完全に壊れてしまっているだろう。」「もうこの人の人生は終わりだ。」などと考える人もいます。

ですがそれは間違いです。人生において傷ついたとしても、人はあなたが思う以上に強いものです。脳の神経可塑性は無限です。脳内を再構築し、以前よりも強く防御力の増した自分に回復させてくれます。そして新しい幸せを探す旅を始めることが出来るのです。