子どもの慢性的な痛み:見逃される病気

19 8月, 2020
1950年代半ばまで、大人と比べ子どもは、痛みに鈍感であると考えられていました。ところが、論争にならなかったこの信念には深刻な結果が伴いました。

痛みは複雑で個人的なものであり、患者のニーズに対応するためにはコミュニケーションや細かい配慮が必要になります。しかし、慢性的な痛みを抱える子どもを診る時、子どもは自分の感情を表現する言葉が十分ではなく、泣く以外の方法で伝えることが難しい場合があります。そのため、20世紀を通して現代医学や心理学では小児の慢性的な痛みは見逃されていきました。

1950年代半ばまで、大人と比べ子どもは、痛みに鈍感であると考えられていました。ところが、論争にならなかったこの信念には深刻な結果が伴いました。多くの病院で、2歳以下の子どもには麻酔を少量にしたり、ほとんど使わずに手術が行われていたのです。

子どもや赤ちゃんは痛みを表現することはできませんが、大人と同様に痛みを感じているのです。

小児 慢性的 痛み

小児の慢性的な痛みを測るツール

現在医学や心理学では、小児の慢性的痛みは大人の慢性的痛みと同様の特性があると認識されています。そして、同様に治療が行われます。また、この慢性的な痛みは生理的原因の有無にかかわらず、6カ月以上続くものを指します

問題は、過去に小児の慢性的な痛みを診断するツールやプロトコルがなかったことです。全般的に、大人への適用を目的に作られたツールが子どもにも使われていました。しかし、これに関しては臨床心理学のおかげで変化が起こっています。

投影法から認識技術や感情表現まで、小児の慢性的な痛みも認識されるようになり、研究や治療が進んでいます。痛みは、子どもの単なる不平だとは考えられません。医師は、痛みを子どもが親の注目を得る方法として見ておらず、痛みの持つ重要性に重きを置くようになっています。

絵、表情、色は、大人が痛みを表す言葉以上に有用であり、よく使われる方法で、子どもが抱える慢性的痛みを認識、表現し、コントロールするのに役立っています。

3~4歳以下の子どもは、言葉や絵を使って痛みを表現するだけの言語や認知発達がまだ備わっておらず、一番信頼できる診断メソッドは、行動報告と心理的変化になります。また、年齢の高い子どもやティーンエージャーに対しては痛みを表現するのに他の方法を使います。よく使われるものを次にご紹介します。

  • 痛みの温度計:通常0~10の数字が使われ、0は「痛みはない」、10は「想像できるもっとも強烈な痛み」を表します。子どもは、自分の痛みの程度にあった部分に色を塗ります。
  • エランド・カラー・ツール(ECT):色のスケールで、「痛みはない」から「想像できる最悪の痛み」まで、子どもは、8色の中で自分に合ったものを選びます。
  • 痛みの顔スケール:6歳以上の子どもに使われます。これには、9つの顔があります。4つは程度の違うポジティブな表情で、4つはネガティブな表情をもち、あとひとつは中立の表情です。この中から、子どもは今の痛みに一番似た表情を選びます。
  • 小児の痛み質問票:年齢の高い子どもやティーンエージャーに使われます。痛みに直接関係のある8つの質問から成ります。
  • 痛み日誌:日誌のような形で自己報告します。0「痛みはない」から、5「非常に痛む」までで評価します。医師は、術後1日に2回痛みを測ります。
小児 慢性的 痛み

小児の慢性的な痛みに対する心理的治療

小児の慢性的な痛みに対する治療を考える時、非常に深刻な問題があります。それは、痛みの治療に使われる薬の多くに、小児の使用に関する指示がないことです。そしてこれは、子どもにの治療に関しては特に学際的治療に重きが置かれている理由にもなっています。

臨床心理では、7歳以上の子どもに効果的だとされる一連の治療があります。またこの治療においては、より年齢の低い子どもの慢性的痛みの治療にも有望な発見があります。治療は全般的に痛みのタイプやその分析に左右されます。よく使われるテクニックは次の通りです。

  • バイオフィードバック・トレーニング:様々なタイプの頭痛で主に使われます。体温や緊張の生理的指標の管理などが行われます。
  • リラクゼーション・テクニック:深呼吸や筋弛緩などです。痛みによる活動を下げるため、子どもに非常に効果的です。
  • マインドフルネス:数は少ないですが、研究によって痛みの頻度や度合いなどにおいて著しい向上が統計学的に示されています。
  • 催眠術:精神療法が目的で、精神的反応、注意管理、痛みに関する認知的な面に直接的に働きかけます。
  • 視覚化:痛みをコントロールするために、イメージを思い浮かべたり内的な表現を用いることで、鎮痛剤のような効果をもたらします。
  • 気晴らし:痛みを伴う刺激に注目することで痛みの感覚が増す、またその反対も同様であることが分かっています。
  • 随伴性コントロール:対象を機能的に分析し、不安定な行動への報酬や強化を避け、痛みを感じる瞬間に合わせて調整された行動をとるよう環境を再構成することが目的です。

進歩があり、効果があるというサインも示されていますが、小児の慢性的な痛みに対する精神的治療はまだ多くありません。小児の慢性的な痛みとの闘いで前に進むためには、学際的な進歩やこの分野のさらなる研究がカギになります