境界性パーソナリティ障害の治療法について

境界性パーソナリティ障害の治療法にはどんなものがあるのかについて、考えてみたことはありますか?本日の記事を読み進め、その疑問を解決していきましょう。
境界性パーソナリティ障害の治療法について

最後の更新: 22 1月, 2021

境界性パーソナリティ障害には、いくつか治療法が存在します。この障害の主な特徴は、フラストレーションや不快感を生むような状況において様々な不適応行動が生じることです。その不適応行動は、満たされずに不快感へと変わった、 高すぎる期待と関連しています。

この障害を抱える人の多くに二分法的思考が見られ、それによって外部世界の捉え方や自身との関係性が左右されます。また、二分法的思考は頑なな振る舞いの原因になっているほか、感情や仕事、そして対人関係に関する領域をも制限しているのです。

もちろん、精神的に安定している人であっても、不快感を生み出すような状況下で不適切な反応を取ってしまうことがあり得るのは事実です。ただ、感情が最適な安定状態にいる人と境界性パーソナリティ障害の人との違いは、前者の方はどの程度までなら感情に「振り回されても大丈夫」なのかをわきまえているという点です。不快な状況に対する反応は普通、後者の方が大きなものとなります。また、彼らは危険性の高い類の行動を取りがちです。

境界性パーソナリティ障害 治療法

境界性パーソナリティ障害

DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)では、境界性パーソナリティ障害はタイプB群のパーソナリティ障害に分類されています。その主な特徴は、対人関係や自己像、および感情状態に表出する不安定な情緒パターンです。

衝動性も主要な特質の一つで、これは不愉快な事象に直面した時の、最高潮まで高まった感情の中に表れ出ます。最悪の場合、衝動性は自傷行為や攻撃などの危険な行動に繋がりかねません。

不快な感情を生み出すような状況に陥った際の感情の高まり方がほぼ常に極めて強烈である、というのが境界性パーソナリティ障害の人々の心の作用を大まかに要約した内容です。この感情の高まりは、周囲の環境への反応が過剰すぎることと、元の基準点まで戻るのが健常者よりも遅い場合がほとんどであることを示唆しています。

境界性パーソナリティ障害の治療

この病気には、摂食障害や依存症、そしてその他の衝動制御障害との関連がよく見られます。したがって、境界性パーソナリティ障害の全体的な治療には心理療法が必須かつ重要なのです。

境界性パーソナリティ障害に関連する不適応行動は、短期的に見れば不快感の除去に効果的です。しかし、長期的に考えるとそうは言えません。これに関しては薬物療法で心理療法を補完することができますが、関連する他の病気については入院や特別な治療が必要になる場合もあります。

ここからは、境界性パーソナリティ障害の治療法を2つ見ていきましょう。

弁証法的行動療法

弁証法的行動療法はマーシャ・リネハン博士によって開発されました。これは、弁証法的モデルを通じて行動戦略と受容戦略を結びつけ、そこにさらに「変化させること」を組み合わせるという療法です。

したがって、二分法的思考による絶対主義的な結論を過大視するための治療プログラムの一部として用いられます。これにより不快感の受容を促進し、機能不全な行動パターン(社会秩序を乱すような行動パターン)を変化させるよう促します。

弁証法的行動療法の取り入れ方

境界性パーソナリティ障害のための標準的な弁証法的行動療法は極めて包括的で、4つの治療様式が含まれます:

  • 個人療法:これが基本の方式となります。セラピストが、週に50〜60分の個人セッションを行います。
  • スキルトレーニング:これはグループセラピーおよび個人セラピーの形で行われます。セラピストは境界性パーソナリティ障害やマインドフルネススキル、情動制御、不快感への耐性、そして対人技能のトレーニングを実施しなければなりません。セッションは2〜3時間を週に1回のペースで行います。
  • 活動の一般化:習得したスキルを自然な文脈に取り入れられるように患者をサポートします。これはセッションの合間の電話相談によって行われ、スキルを現実生活でも実践できるようになることを目指します。
  • コンサルテーションミーティング:これはセラピストたちの燃え尽き症候群を予防するためのものです。治療チーム全員が参加するミーティングが毎週行われます。

さらに、治療プログラムに参加する前にまず、患者は予定された期間内(通常は6ヶ月〜1年間)はセラピーに参加し続けることを約束しなければなりません。そして、4週間以上欠席した場合は治療が中断されます。その場合、契約期間の終わりに再度セラピーへの参加を交渉することが可能です。

境界性パーソナリティ障害の治療法について

アイコニック・セラピー

このセラピーは、Centro Asistencial San Juan De Diosというスペインの精神病院で始まったもので、情動制御の欠如に関する説明ガイドを含んだ統合的なモデルです。様々な戦略を集結させた治療モデルで、不適応行動の解消に取り組んだり、不安定な行動を起こすリスクを高めてしまうような脆弱な側面に対処することを目指します。

アイコニック・セラピーの特徴と適用

簡単に言うと、アイコニックセラピーはアイコン(図像)の利用による境界性パーソナリティ障害の治療を土台としています。これらのアイコンは、不適応行動の特定の側面を偏った判断を下すことなく言語化するための手段です。また、洞察力を向上させ、フラストレーション耐性などのスキルトレーニングを可能にしてくれる他、受容戦略をも促進してくれます。さらに、空虚感や個人的アイデンティティ、自尊心といったその他の側面への働きかけにも繋がります。

アイコニックセラピーでは32枚のアイコンが用いられ、参加者はそれらをマップのようなものの上に配置します。このマップ上では、アイコンをネガティブな感情から最も有効なコーピング戦略へと移動させることが可能です。コーピング戦略は1枚のアイコンによって表現されています。このセラピーの期間は約12週間で、1週間に一度グループセッション、個人セッション、そしてファミリーセッションという形で行われます。


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