名もなき人たちの痛み:精神病患者への偏見

名もなき人たちの痛み:精神病患者への偏見

最後の更新: 01 10月, 2017

レッテルを貼られただけの名もなき人の痛みについて考えてみましょう。それは、精神病の診断の赤い手紙を胸につけられ、誤解された存在として非難されている人たちです。危険で変で変わっていて異常で害がある、とレッテルを張られた人たちです。彼らのことを知ろうともしない人に誤解されている人たちです。

それは街で見かける人たちです。地元の狂ったやつ、風変わりな隣人、道にいる変な男です。

彼らは人とはみなされません。彼らは分類されたレッテルに過ぎないのです。そのレッテルは時を経て受け継がれ、他の人の目にはもはや人間に見えなくなってしまいます。彼らはアイデンティティーのない人なのです。

このようなレッテルは、聞きなれすぎて、もはやその言葉を聞いたとき彼らがどんなふうに感じるかなどあまり考えなくなります。私たちが感じているように彼らも自分たちをおかしいと思っているから自分たちのことを笑っている、と思っているかもしれません。しかし、彼らが笑うのは、一目で彼らのことを判断し、違うという理由ではねつける人に耐える強さを持っていないからかもしれません。もし自分がそういった判断、拒否、思いやりのなさを受けたらどのように感じるでしょうか。

「レッテルを張ったときから、あなたは私を否定している。」
-セーレン・キェルケゴール-

うつむく女性

沈みゆく夢

まず、人は正当な診断書があれば、治療を受けることができ問題を解決出来ると思います。しかし、たいていの場合、レッテルは彼らを「精神病」の状態に縛り付けてしまい、解決どころか重荷になってしまうのです。

彼らは危険で攻撃的で制御がきかず信用できない存在として社会の目に映るため、レッテルは重荷になります。そして、彼らには仕事も、良い生活への希望もありません。なぜなら、レッテルは彼らを忘れられた追放の身に追いやってしまうからです。

彼らに残されるのは痛みのみです。レッテルを張られ、紙切れのような夢が水に沈んでいくのを見ていることしかできません。 それなのに、社会は彼らに社会復帰してもらいたいと思っています。しかしそう思っているなら、どれだけ彼らに価値があるか、どれだけ彼らができるのかを示す機会を与えないのはなぜでしょう?

「理解できないものと共存できないというのは痛ましいことだ。すべてにレッテルを張り、説明し、分解しなくてはいけない。明らかに説明がつかないものですらそうだ。」
-チャック・パラニューク-

羽のある少女

偏見の裏側

適切ではない治療

忘れられた存在の人々の地獄はそこでは終わりません。彼らは、ヘルスケアシステムの中で過小評価されています。様々な病気に対し実験的な正当な治療法がありますが、彼らはそのような治療法へのアクセスがありません。代わりに、薬での治療に制限されます。

ESEMeD研究のデータによると、スペインでは、鬱などが高い割合で浸透しているにも関わらず、62%の人が適切な精神治療を受けることができていません。代わりに、精神科や初期ケアの医師によって処方された薬によって治療がされています。しかし、WHOによると、鬱の治療の選択肢には薬学的治療と精神療法の両方が含まれているはずです。

さらに私たちは、ヘルスケア削減に不満をこぼすとき、精神の問題に苦しめられている人のことをいつも忘れてしまいます。自分たちからは程遠い、変で自分と違う「他の」人の問題と思ってしまいがちですか、そうではありません。スペインでは5人に一人が、人生の中でメンタルヘルスの問題に悩まされているのです。

また、スペインでの自殺による死亡数は、交通事故の2倍です。消費されている抗うつ剤の量は、4倍に増えました。しかし、自殺による死亡数は減っていません。まだ増え続けているのです。

向精神薬は、無駄ということでしょうか。実際には、薬は効きます。ただし、薬だけでは解決策というよりただの対処療法です。軽度または中度の鬱には、精神療法は薬よりも良い、長期的な結果を出しています。重度の鬱には、薬学的治療と精神療法のコンビネーションが効果的です。

科学的な研究では、不安症の治療には薬を試す前に精神療法を行うことが良いとされています。しかしスペインでは、 病院の精神科が少ないため、そのような治療へのアクセスがあるのはごく稀です。100,000の患者に4.3人の精神科の割合です。これはヨーロッパの平均に比べ4倍少ないです。

顔を隠す男性

非難され誤解された家族の苦悩

名もなき忘れられた人について考えるとき、彼らのことを決めつけることなくいつもそばにいる人のことも考えなくてはいけません。日々彼らのそばで共に戦い、彼らにとって世界がもう少しだけ優しくなるように頑張っている人たちです。精神疾患を患う人の後ろには、いつも同じように決めつけられ誤解を受けている家族がいることを忘れないでください。

それが無害な分類分けであるかのようにレッテルを張りまわっているとき、そのような呼び方で精神病患者を呼ぶとき、彼らの家族を病気のことで非難していることになります。彼らは十分なサポートや治療を受けていない、と家族までもが非難されます。

さらに痛みを与えるのではなく、忘れられた人を名前で呼びましょう。 精神病に関してすでにある考え方を信じるのではなく、様々な種類の精神病を学んでください。思っていたことが正しくないとわかります。人のことを判断する前に学び、何より彼らの立場に立って考えてみましょう。彼らを助けたいと思うなら、これ以上いいスタートの切り方はありません。


このテキストは情報提供のみを目的としており、専門家との相談を代替するものではありません。疑問がある場合は、専門家に相談してください。