オリュンポス山の女主人的女神、へーラーの神話

22 9月, 2020
へーラー神話が描くのは、プライドが高くて執念深い、嫉妬心の強さでよく知られた女神の物語です。オリュンポス山の女主人の本質を描いた神話が一つ存在しています。

へーラー神話は、ギリシア社会が見た最も古典的でありながら欠点もある女性キャラクターを描いています。彼女は貫禄のある女神で、常に嫉妬心に悩まされ、決して敵への復讐の機会を逃すことがありません。彼女を継続的にこの役柄に追いやっていたのは、夫であるゼウスの定期的な不貞行為でした。

ギリシアの人々にとって、へーラー神話は典型的な女性像の原型を象徴したものです。彼女は結婚や家族の生活の女神であり、こういった神聖な制度を何が何でも守ってきました。また、オリュンポス山で最も重要な女性の神でもあり、何らかの方法を用いてほぼ必ずと言っていいほど毎回望んだものを手に入れてきました。

へーラー神話に関して非常に印象的なのが、ゼウスが浮気行為をするたびに必ず彼女が復讐を果たしていたという点です。しかし、彼女の怒りの対象が夫自身だったことはほぼ一度もありませんでした。ゼウスの愛人のほとんどが彼の罠や権力によって愛人にされただけなのにも関わらず、へーラーの憎悪は彼女たちやゼウスが彼女たちとの間にもうけた子どもたちに向けられていたのです。

“結婚は、離婚の主要な原因である”

グルーチョ・マルクス

オリュンポス山 女主人的女神 へーラーの神話

へーラー神話 − 起源

へーラーはクロノスとレアーの娘です。のちに夫となるゼウスは、実は彼女の弟でもありました。他のクロノスの子どもたちと同様に、へーラーも誕生後間も無く父に飲み込まれてしまいます。これは、子孫の一人に打倒されるだろうという予言を聞いたクロノスがそれを信じていためです。しかしゼウスだけは母親の救出作戦によってこの運命を免れ、その後へーラーを含む他の兄弟たちを父から解放することに成功しました。

物語が進むにつれ、ゼウスはへーラーを深く愛するようになります。猛アプローチを拒否されたゼウスは彼女に近づくためにカッコーへと姿を変え、その後は結局力によって彼女を手に入れてしまいました。ヘスペリデスの園で行われた二人の結婚式は非常に豪勢なものでした。彼らの間には、戦の神アレースや若さの女神へーベー、出産や助産術の女神エイレイテュイア、神々たちの鍛冶屋へーパイストスなどの子どもたちがいます。

へーラーは結婚や家族の女神ではあったものの、良い母親像としては描かれていません。息子のへーパイストスを醜いからといって拒絶し、オリュンポス山から追放したことがその一例です。後になって彼は、彼女に魔法の椅子を贈って復讐を果たします。その椅子に座ったへーラーは立ち上がることができなくなってしまったのです。へーパイストスがアフロディテーと結婚できるようになると、この呪文は解けました。

ヘーラクレースへの恨み

ギリシアの有名な英雄であるヘーラクレースも、ゼウスの数々の不貞行為の中の一つの結果として生まれました。そのためへーラーは彼を憎み、彼を崩壊させる方法を探し求め続けます。母親のアルクメーネーはへーラーの怒りに触れないようにと息子にヘーラクレース(「へーラーの栄光」という意味)と名付けたのですが、これはオリュンポス山の女主人の憤怒をなだめるには全く役立ちませんでした。

一説によれば、ゼウスはへーラーを騙してヘーラクレースの世話をさせようとしたそうです。これは半神半人であるこの赤ちゃんに神の母乳を飲ませるためでしたが、ゼウスの企みに気づいたへーラーは赤ちゃんを突き飛ばしました。この時母乳が天国に向かって飛び散り、それが天の川になったとされています。

数年後、へーラーはよく知られた「十二の功業」に関してヘーラクレースを罰することを決意します。この功業を成し遂げた後も、彼は残りの生涯に渡ってへーラーからの迫害を受け続けました。しかしゼウスとその他大勢の神々が全力を尽くしてへーラーの課した課題からこの英雄を守り、女王の計画は妨害を受けることになります。

オリュンポス山の女主人的女神、へーラーの神話

プライドが高く、傲慢な女神

へーラーを取り巻く数多くの神話からわかるのは、この女神は嫉妬心からだけではなく、プライドの高さ故に行動を起こすキャラクターでもあったということです。例えば、彼女が予言者テイレシアースを盲目にしてしまったのは夫婦喧嘩中に彼がゼウスの味方をしたためだと言われています。また、彼女はかのトロイア戦争の主要な扇動者の一人でもありました。

さらにある時、彼女はオリュンポス山でクーデターを起こそうともしました。彼女は秘密裏にポセイドーン、アポローン、アテーナーと会ってゼウスへの反乱を企てます。ゼウスはこれに全く気づいていませんでした。そんな彼が幸せそうに眠っている間にこの四名は彼をベッドに鎖で縛り付けて力の源である雷を盗み、誰がオリュンポス山の新たな支配神になるべきか話し合いを始めます。

議論が白熱する中、100本の腕を持つ巨人ブリアレオースが気づかれぬまま忍び込み、ゼウスを解放します。ゼウスはオリュンポス山での支配力を取り戻すと、陰謀を図った者たちを重く罰しました。彼らは許しを請い、ゼウスへ永遠の忠誠を誓います。ゼウスの数々の不貞行為や互いへの背信行為があったにも関わらず、へーラーとゼウスの婚姻関係が終わることは永遠にありませんでした。

Barrera, J. C. B. (1989). Zeus, Hera y el matrimonio sagrado. Polis: revista de ideas y formas políticas de la Antigüedad, (1), 7-24.