ポジティブ思考が常に役立つわけではないのはなぜ?

ポジティブな思考態度を保つことは有益です。そうは言っても、状況によっては別のタイプの精神的アプローチを取り入れる余地を残しておく方が良い可能性があるのです。
ポジティブ思考が常に役立つわけではないのはなぜ?
Valeria Sabater

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Valeria Sabater.

最後の更新: 21 12月, 2022

ポジティブ思考が常に役立つわけではないこと、そして希望に満ちた思考態度が成功を保証してくれるとは限らないことに、多くの人々が気づいています。人間にはある種の「穏健な悲観主義」を取り入れる時期が訪れる傾向がある、と指摘している専門家もいます。これにより私たちは、人生がいつも思い通りに進んでくれるわけではないことを理解するのです。

ただ、これは必ずしも悪いことだとは限りません。人間の頭脳は0か100かの決め付けに慣れきっているため、誰もが物事を「良い」か「悪い」に分類したい気持ちになってしまいます。しかし、全てのことを白か黒かで判断できるわけではないと理解すべき時が来ているのかもしれません。

何十年間もの間、「ポジティブに考えよ」というアドバイスは繰り返し用いられてきました。要するに私たちは、困難に直面した時にはいかなる場合であれポジティブ思考を頼みの綱にしがちなのです。確かに、何とかして脳を楽観的な状態に保てば無力感に苛まれずに済む、という事実はよく知られています。

しかし、現在この瞬間というのは不確実性に溢れています。どんな形にせよ私たちは、今抱いている恐怖心と向き合わなければなりません。それがいかに難しいことかは問題ではないのです。

また、今こそ私たちは別の観点から、つまりポジティブさと希望は保ちつつ、しかしもっと現実的な観点から物事を眺めるべきです。こうすることで、全員がもっと効率的に試練を乗り越えて行きやすくなるのは間違いありません。

ポジティブ思考が常に役立つとは限らないのはなぜ?

ポジティブ思考の支持者はたくさんいる一方で、これに反対する人々も多いのです。このテーマに関しては中立な意見は存在しないと言えるでしょう。マーティン・セリグマンやミハイ・チクセントミハイといった学者たちによって90年代に広められたポジティブ心理学的アプローチに対しては、ウェルズリー大学の心理学教授ジュリー・K・ノレムなどから批判の声が浴びせられています。驚くべきことに、彼女は私たちにある非常に具体的な警告を伝えようと努めてきました。

2001年の著作『ネガティブだからうまくいく』の中で彼女は、私たちの文明のポジティビティに対する幼稚な見方について語っています。セリグマンの教えは、人々が「流行りのもの」かのように見なしてしまうほどにポジティビティを縮小してしまいました。事実、人生の明るい面だけに集中することで全てを修正できるはずだ、と思い込んでいる人はかなり多く存在します。

しかし現実的になりましょう。時には、輝かしい側面だけに目を向けるのが不可能な場合もありますよね。この事実は頭で理解できるだけでなく、予想することも可能なはずです。ヴィクトール・フランクルが指摘したように、特殊な状況に対しては通常とは異なる反応を取ってしまうことが当たり前です。したがって、ポジティブ思考が常に効果的なわけではない理由が多様であることを理解しなくてはなりません。それでは、それらを分析していきましょう。

ポジティブ思考 常に役立つわけではない

ポジティブな考え方では、ネガティブな結果に立ち向かうための準備ができない

「何もかもうまくいくはずだから大丈夫」などという言葉を何度も繰り返していると、狙いとは真逆の効果が生まれてしまう恐れがあります。成功する結果にだけ向けられた、その他の可能性を無視するようなアプローチには危険が伴うのです。このような思考態度でいると、思い描いた通りに物事が進まなかった場合に情緒的にも心理的にも丸腰状態になってしまいます。

そういったシチュエーションで望ましいのは、現実的なアプローチを採用することです。「全て順調に行くよう願っているけれど、もしそうならなかったとしてもきちんとその結果と向き合おう。それを受け入れ、適切に対処しよう」という態度でいましょう。

ポジティブ思考は、受動的な姿勢に繋がりかねない

ジュリー・K・ノレムは自著の中で、現実についての少しばかり悲観的な観点を取り入れるよう推奨しています。つまり、全ての可能性を混ぜ合わせて考え、欲していることや願っていることが実現することもあり得るとは言え、反対に物事が悪い方向に向かう可能性もあるのだということを自分自身に思い出させる必要があるのです。そしてそういった望ましくない状況に陥った場合にどう行動すべきか考えておくことが大切だと言えるでしょう。

その上で、そういったネガティブな結果が結果が起きてしまわないよう全力で懸命に努力しなければなりません。単に「全てうまく行くはず」と決めつけていると、ほとんどの場合受動的な姿勢を取り入れる羽目になってしまいます。そうなると危険なのです。

不安に直面している時、ポジティブ思考が役立つとは限らない

不安でいっぱいの心には、人生の良い面を見ることができないという特異な点があります。その意味では、心配事がある時やストレスを感じている時、そして精神的に厳しい状態にいる時にポジティブ思考に頼ろうとしても失敗に終わる場合があるのです。そういった状況では、他人からどんなに励まされようとも、シンプルに彼らの言葉を信じられないがために気分は落ち込み続けます。

このような文脈においては、アクセプタンス&コミットメントセラピーが提案するアプローチについて考えてみると面白いでしょう。信じ難いかもしれませんが、それらのアプローチを取り入れると人生が常に楽な道ばかりではないということや、時には失敗したり過ちを犯したり、絶望することがあっても構わないのだということを理解しやすくなるのです。ただし、だからと言って自分のための努力ができなくなるかもしれないという意味ではありません。ちょうどいいバランスを見つけましょう。

ポジティブ思考が常に役立つわけではないのはなぜ?

極端な態度はNG:考えなしのポジティブ主義や慢性的な悲観主義は排除しよう

ポジティブ思考が常に役立つとは限らないのは、人生が予測不能なものだからです。また、苦難やフラストレーション、恐怖心、苦痛などに対するコーピングストラテジーが不適切であることも理由の一つかもしれません。

人生は、様々な経験の集まった万華鏡のようなものです。綺麗な模様が見える時もあれば悲惨な景色しか見えない時もあり、また良いとも悪いとも言えないような風景が続く時期もあります。したがって、穏やかな日々にも嵐のような日々にもそういった大海原を上手に航海する術を学ばなくてはなりません。

では、要するに悲観的でいる方が望ましいということなのでしょうか?いいえ、決してそうではないのです。しかし、考えなしの根拠のない自信に満ちたポジティブ性を取り入れることはお勧めできません。強く願うだけで望みを実現できるはずだ、などと信じ込んではいけないのです今この瞬間自体がかなり複雑であるため、おそらくこの方程式が成り立たないことにすでにお気づきかもしれません。極端な態度は絶対に取るべきではないのです。

現実的にならなければなりません。日々の試練に対応できるよう自身を鍛え、予測不能で痛みを伴うような出来事に耐え抜く術を学びましょう。ただし、何においてもバランスが最も重要であり、希望を育み続けるべきでもあることも覚えておいてください。結局は、そうすることが実存的に必要なことなのです。


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  • K. Norem Julie K. (2001) El poder positivo del pensamiento negativo. Paidós.


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