生物心理学における研究方法

2020年1月4日
生物心理学における様々な研究方法は、脳研究の大きな進歩を物語るものです。これらのおかげで、私たちの体の中で最も神秘的なこの臓器の機能の理解を深めることが出来ます。では、これらの研究方法とは実際にはどんなものなのでしょう?

生物心理学の研究方法は、この数十年で大きく進歩してきました。その研究方法には様々なものがありますが、この記事の中では特定の状況下で脳に何が起こるのかを研究するメソッドに焦点を当てていきます。

デューズベリーのような専門家は、生物心理学を「振る舞いの生態の科学的研究」と定義しています(1991年)。また、この学問分野は精神生物学と呼ばれることもありますが、その他の研究者は「生物心理学」の方を好みます。それは、「生物心理学」の方が「生物学に対する心理学的アプローチではなく、心理学に対する生物学的アプローチを示している」からです。

生物心理学

人間の脳の刺激と視覚化を使った研究

脳の活動をリアルタイムで観察・記録できることは、20世紀に発達した様々な技術が可能にした重要な節目です。生物心理学のこれらの研究技術は、脳と言う興味深い臓器の研究における突破口として疑いのないものである、と言えるでしょう。

造影X線検査

これは、X線を通さない造影剤を投入して行うX線撮影法です。こうすることで、ターゲットである部分とその周りの組織のコントラストをはっきりと見ることが出来ます。

脳血管造影検査は造影X線検査の一種です。このために、脳血管に造影剤が注入されます。脳の循環系をX線で撮影することが目的です。この技術は、脳血管の損傷や腫瘍を発見するのに非常に有効です。

コンピューター断層撮影(CTスキャン)

CTスキャンを通して、専門家は脳構造の全体を観察することが出来ます。この検査では、被験者は大きな円柱の真ん中に横たわります。被験者がじっとしている間に、X線源と検出器が被験者の頭の周りを回転し、複数のレントゲン写真を撮ります。

これらのデーターがコンピューターに送られることで、医師は脳の断面図を観察することが出来ます。一般的に8から9の断面図に分けられますが、これらを組み合わせることで脳の立体図を作り上げることも可能です。

核磁気共鳴(NMR)

核磁気共鳴とは、磁場上で高周波によって活性化された水素原子が発する様々な周波数を使って、高画質な映像を取ることを可能にするものです。高い空間分解能を持ち、立体図を作り上げることが可能です。

ポジトロン断層法(PET)

PETは脳構造を可視化するというよりも、脳の活動を画像にすることが出来ます。研究者は、放射性トレーサーを患者の頸動脈に注入します。活発化しているニューロンは放射線トレーサーを素早く吸収しますが、分解されないために一時ニューロンに蓄積され、その後少しずつ減少していきます。このおかげで、様々な活動の特定の瞬間に、どのニューロンが活発化しているのかを観察することができるのです。

fMRI

一方、脳の血液の中の酸素量の増加を映像でとらえることが出来るのがMRIです。このため、脳の活動を効果的に測ることが出来ます。また、PETと比較すると4つの点で優れています。

  • 患者に何も注入しなくても良い。
  • 脳の機能・構造の両面での情報を得ることが出来る。
  • 空間分解能がより優れている。
  • 脳全体の立体図を捉えることが出来る。
生物心理学

脳磁図(MEG)

これは頭皮の表面にあらわれる脳磁場の変化を捉えることが出来る技術です。これらの変化は、神経活動のパターンが変化することで生じます。

経頭蓋磁気刺激法(TMS)

ウォルシュとロスウェルはTMSについて、「頭上に設置されたコイル状の検出器下に磁場を作り上げることで、大脳皮質の一部の活動を変化させる技術による」ものであると説明しています(2000年)。TMSは要するに脳の一部を「オフ」にすることが出来るのです。そうして、その部分がオフになることで、被験者の振る舞いや認識にどのような影響が出るかを調べます。

脳組織の破壊の研究

これは、脳の一部にダメージを与えることで、その部分が行動にどのような影響を及ぼすかを研究する方法です。

  • 脳組織の吸引除去。この方法では、皮質の表面や簡単に届く部分の組織を破壊します。先端が細いガラス製のピペットを使って脳組織が取り除かれます。
  • 高周波破壊。皮質下に小さな損傷部を作ることで実施されます。電極によって対象部に高周波が流されます。その損傷部の大きさと形は、三つの要因に左右されます。
    • 施術時間の長さ
    • 電流の強さ
    • 電極の配置の仕方
  • 脳局所切除。脳組織の研究対象部を切り離します。
  • 脳局所冷却。この研究方法は破壊による手法の一部ではありますが、その損傷は一時的なもので回復可能です。組織を破壊するのではなく、一部を氷点下を少し下回る温度にまで冷却します。するとニューロンがシグナルを送るのを止めるため、冷却された部分がブロックされた状態になります。このおかげで、冷却された脳部位が行動にどのように影響しているのかを確認することが出来るのです。脳の温度が正常に戻ると、機能は回復します。

電気刺激

生物心理学で使われる別の研究方法が電気刺激です。神経システムに電気刺激を与えて、その機能に関わるデータを収集します。一般的に双極電極が使われます。

この刺激が神経を走ると、神経の働きに変化が起こります。この場合、脳組織破壊とは逆の効果が現れるのが一般的です。例えば、脳破壊によって睡眠時間が極端に減るとすると、電気刺激では睡眠がコントロールしにくくなるといった可能性があります。

脳の破壊の研究の電気記録

  • 細胞内記録。この手法は、微小電極をニューロン内に挿入して実施されます。膜電位の変動が記録できます。
  • 細胞外記録。微小電極がニューロンをとりまく細胞外組織に付けられます。膜電位のデータは取れません。
  • マルチユニット記録。ここで使われる電極は微小電極よりも大きく、そのために複数のニューロンの信号を感知することが出来ます。感知された電位は、そのまま電気回路へと流れていきます。
  • 侵略式脳波観察。ステンレス性の電極が頭蓋骨内部に挿入されます。皮質下の信号については、ケーブル状の電極が外科手術によって埋め込まれます。

「人類学、生物学、生理学そして心理学は、体と心を発達させて完璧にするという目標を掲げる人類の目の前に、大きな課題の山を積み上げた。」

―レフ・トロツキー―

生物心理学

生物心理学研究:長い道のり

この記事では、生物心理学上で最も重要な研究方法についてご紹介してきました。しかし他にも、筋緊張検査、眼球運動記録、皮膚コンダクタンス、心臓血管系の活動など、体の別の部分を使った研究方法は様々あります。

この分野で革新的な研究がなされてきたことは間違いありませんが、決して完結するものではありません。おそらく数年後には、科学者たちがまた新たな研究技術を生み出していることでしょう。こうして神経科学の進歩に貢献し、神経障害に苦しむ多くの人々の生活を改善することに繋がるのです。