シナプス間隙とは?
シナプスとは、2つの神経が、情報を伝達するためにつながる部分です。しかし神経が直接他の神経に触れるわけではありません。そこには、(シナプス間隙とも呼ばれる)スペース、つまりシナプスの隙間があります。ここで、情報交換が行われるのです。シナプス間隙では、実際何が行われるのでしょうか?なぜ、そのような働きがあるのでしょう?ここでは、これらの質問に答えます。
化学シナプス間では、情報を伝える神経(シナプス前)が物質を放出します。この場合、神経伝達物質がシナプス前軸索末端を通して、シナプスの隙間にそれを放出します。そして、情報を受け取る神経(シナプス後)は、それぞれの神経伝達物質に対する特定の受容体をもち、樹状突起を通し、その情報を受け取ります。
電子顕微鏡で、神経管の伝達が確認できますが、これは互いに触れあっているのではなく、神経伝達物質を放出するものの間にはスペースがあります。各神経伝達物質が、神経系の機能に影響を与えます。
化学シナプス
シナプスには、大きく2つのタイプがあります。それは電気と化学です。シナプス前とシナプス後の間にある隙間は、電気シナプスより化学シナプスの方がはるかに大きく、シナプス間隙と名付けられています。この隙間は、シナプス前軸索末端にシナプス小胞と呼ばれる、膜に囲まれた細胞器官があることが特徴です。
化学物質(神経伝達物質)がシナプス間隙に放出される時、化学シナプスが生じます。これがシナプス後膜に働きかけ、分極または脱分極が行われます。電気シナプスと比べ、化学シナプスは、私達が経験する出来事への反応に関わるシグナルを変えることができます。
軸索末端にある小胞に神経伝達物質が蓄えられます。作用する電位が軸索末端に到達すると、脱分極し、カルシウムイオンチャンネルが開きます。これが細胞質に浸透し、小胞が神経伝達物質を放出するよう化学反応を起こします。
この小胞は、神経伝達物質で満たされており、ニューロンの伝達におけるメッセンジャーの役割をします。例として、神経系で、最も重要な神経伝達物質のひとつに、アセチルコリンがあります。心臓の機能を調整し、中枢神経そして末梢神経系の様々なシナプス後に働きかけます。
神経伝達物質の性質
これまで、各ニューロンは、1つの特定の神経伝達物質のみ放出や統合が可能だと考えられていました。しかし、すべてのニューロンが2つ以上の神経伝達物質を放出できることが分かっています。その物質が神経伝達物質だとされるには、次の条件を満たしている必要があります。
- その物質は、小胞を含む、軸索末端、シナプス前ニューロンに存在する
- その物質を統合するシナプス前細胞に十分な酵素がある
- 特定の神経インパルスが軸索末端に到達した時、神経伝達物質が放出される
- シナプス後膜に、それに対する親和性をもつ受容体がある
- 物質の生成により、シナプス後電位に変化が生じる
- シナプスまたはその周りで、失活機構がある
- 神経伝達物質がシナプス模倣の原則を満たす。物質の外因性適用で、神経伝達物質の作用を再現する
神経伝達物質は、受容体と相互作用し、その標的に影響を与えます。リガンドとは、受容体と物質を結び付けるもので、3つの作用があります:
- アゴニスト:受容体の通常の作用を開始する
- アンタゴニスト:活性化しないよう受容体と結びつけるリガンドである。他のリガンドが活性化するのを妨げる
- リバースアゴニスト:受容体と結びつき、通常の機能と反対の作用を開始する
神経伝達物質には、どのような種類がある?
脳内で、シナプス伝達の多くが2つの伝達物質を使って行われます。ひとつは、興奮作用をもつグルタミン酸で、もうひとつは、抑制作用をもつGABAです。その他の神経伝達物質は、通常、変調器として作用します。それは、その物質が放出されると、脳の特定の機能にある回路が活性化または抑制されることを意味します。
各神経伝達物質が、シナプス間隙に放出されると、複数でない限り、ひとつの機能をもちます。特定の受容体と結びつき、他の神経伝達物質に影響を与えることもでき、その作用を抑制したり、促進したりします。100以上の異なる神経伝達物質が発見されています。次に、有名なものをご紹介します。
- アセチルコリン:夢をみる睡眠周期(レム)を調整し、学ぶことと関係します。
- セロトニン:睡眠、気分、感情、食物摂取、痛みと関係します。
- ドーパミン:運動、注意、感情の学習に関わります。また、運動制御も調整します。
- エピネフリン・アドレナリン:副腎で生成されると、ホルモンになります。
- ノルエピネフリン・ノルアドレナリン:その放出により、注意や警戒が高まります。脳内では、精神的反応に関わります。
シナプスと薬
神経伝達物質のシナプスの隙間への放出による、ニューロン受容体への影響に加え、同じまたは似た反応を起こす外因性化学物質があります。
「外因性物質」とは、薬など私達の体の外から生じる物質を意味します。これらも、アゴニスト、アンタゴニスト作用を作り出します。化学シナプスの様々な面に影響を与えることが可能です。
- 物質の伝達や合成に影響するものがあります。その物質の合成の最初のステージで、生産率を高めるために、前駆体を加えることも可能です。そのひとつが、ドーパミンアゴニストのレボドパです。
- 伝達物質の放出や貯蔵に作用するものもあります。例えば、レセルピンは、シナプス小胞のモノアミンの貯蔵を妨げます。言い換えると、モノアミン性アンタゴニストとして働きます。
- 受容体にも働きかけます。活性化したり遮るのに、受容体と結びつく物質があります。
- 物質の伝達の再取り込みや分解に関わるものがあります。コカインなど外因性の物質は、伝達物質のシナプス間隙の滞在を延ばします。これにより、ノルアドレナリンの再取り込みが遅くなります。
特定の薬による治療を繰り返すと、その作用が軽減することがあります。これが、耐性と呼ばれるものです。薬物に関し、耐性は、摂取量の増加につながり、過剰摂取のリスクを高めることになりかねません。薬に関しては、望む効果が得られなくなり、薬の服用を止めることにつながりかねません。
お分かりいただけたように、シナプス間隙では、神経伝達物質の放出を通してシナプス前とシナプス後の間でやり取りが行われ、これにより体に様々な影響が出ます。さらに、様々な薬は、この複雑なメカニズムを修正したり、変えることもあります。
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