心気症:Googleに頼りすぎていませんか?
多かれ少なかれ、誰でもインターネット上で自分の健康状態を確認したことがあるはずです。しかし、その行為が心気症の原因になっているかもしれません。
確かに病気になったかもしれないという恐怖心は計り知れないものです。一度疑念を抱いてしまうと、様々な形で恐怖心が沸き上がってきます。時にはそのことしか考えられなくなったり、頭の中が病気への恐怖心でいっぱいになってしまうこともあります。心気症とはこのような恐怖心を常に感じてしまう病気であり、多くの患者がそれに苦しめられてます。
そのため医学生の70%が、今まで自分の勉強してきた病気に自分自身がかかっているのではないかという不安に取りつかれてしまうといいます。彼らは勉強した病気とまったく同じ症状が自分にも表れていると思ってしまうのです。医学生が経験するこのような体験は「一時的心気症」と呼ばれています。
「Google先生」の診断によって、様々な病気にかかっていると思い込んでいる人たちが私たちの周りにはたくさんいるはずです。しかし実際にテレビでみるような大病を患っている人がその中に何人いるでしょうか?彼らは咳をしたときに胸の痛みを感じただけで、自分が重大な病気に陥ってしまったと確信してしまいます。つまり、「気にしすぎ」なのです。
医者は人を切り裂き、燃やし、拷問にかける。彼らが病気のためにしていることが良いことだとは思えない。彼らは本当の評価以上の称賛を求めているのだ。
-ヘラクレイトス-
人は予兆を解釈する専門家である
多くの人々は、自分の身に起こっている全てのことを知りたいと思っています。そして私たちは、自分の身になんらかの予兆が現れたとき、自分の性格や両親からの躾、経験則、知識などをもとにして、それらのことを過度に受けとめます。以下がその例です。
- 同僚のピーターとすれちがったのに、挨拶をされなかった。もしかしたら彼は怒っているのだろうか?
- 自分たちへの嫌がらせとして、幾度も近所の人が大きな物音をたてている。
- 彼からパーティーに誘われなかった。彼から嫌われているのかもしれない。
不確かなことを受け入れることはなかなかできません。だからこそ、私たちはそれらのことから勝手な予測をしてしまうのです。確かに定かではないことに意味を付与することでストレスは軽減しますが、それらが正しいとは限りません。上の例でいえば以下の通りです。
- ピーターは上司に呼び出されて、不安で余裕がなかった
- 近所の家に孫たちが遊びに来ていた。みんなまだ小さな子なので走り回って遊んでいた。
- パーティーの招待状をメールで送ったが、そのメールアドレスが間違っていた。
このように一度、家族や友達、同僚に疑念を抱いてしまうととても不安な気持ちになります。しかし通常は、相手に直接聞くことで不安の種を解消することができます。一方で、その恐怖心が病気にまで発展すると、ほんのちょっとしたことに対しても非常に強い不信感を抱くようになってしまうのです。
「あるアイディアの本当の強みは、それ自体にどれだけの価値があるかではなく、どれだけの注意をそれに注げるかによって決まる。」
-コンセプション・アレナル-
周りから心気症だと言われるけど、本当にそうなのか?
痛みや熱や咳など、私たちは自分の容態を自分で把握できないとき恐怖心や不安感を覚えます。そしてそれを自分の知識だけで判断したり、自分がおかれた状況を悪い方向に考えることでその気持ちを増長させます。だからこそ、検査を待っているときや他の医師を紹介されたときや人に何かを言われたとき、不安な気持ちになるのです。
しかし、そのような気持ちになったからといって心気症だとは限りません。基本的にその恐怖心が仕事や家族との時間などの日常生活を阻害していないかぎり、問題ないといってよいでしょう。
心気症と呼ばれる病気は現在、「病気不安障害」として知られています。病気の名称が変わったことにより、以前の名称に付きまとっていた誤解はなくなりましたが、それでも依然として問題があります。
この障害の主な特徴は以下の通りです。
- 自分の体に起きた症状を自分だけで解釈することによって、大病を患っているのではないかという不安や恐怖、信念に取りつかれる。
- 病院で検査や診察を受けたのにも関わらず、不安な気持ちになる。
- 仕事などにおいて、不安感が不快感を与え、社会的生活に支障をきたしている。
- 不安な気持ちが6ヵ月以上続いている。
- 神経障害や躁うつ、せん妄などが原因の症状。
理由や論理がない
心気症の患者は合理性に気を払わない傾向があり、合理的な対話を行おうとしても困難なことが多いです。いくら証拠を示しても、患者たちは自分の思い込みを払拭させることができないのです。また彼らには、自分の都合の良い診断を下してくれる医師を選びながら、診察をうける傾向があります。そして、自分の体に異変が起きると、それを悪い方向しか考えらえなくなってしまい、医師がなにを言おうともそれを信頼しなくなります。さらに不安感から、常に自分の症状を気にするようになり、それに関する情報を探し求めるようになります。
「モナリザは、病気にかかっているか病気になる手前のように見える。」
-ノエル・カワード-
このように人は自分が病気だと思い込んでしまいがちです。しかし「心気症」にならないために、そのような気持ちをコントロールする術はあります。まず、自分自身について考えすぎたり、自分の身に起きていることを勝手に解釈していたり、医者にかかる前にGoogleで情報を集めてはいけません。それらの行為は不安を増長させ、根拠なく悪い方向に考えてしまいます。そのため、先走らずしっかりと時間を確保しましょう。そうすることで、健康に対する不安感を落ち着かせて、良いバランスをとることができるようになります。