代謝ストレスとは?その特徴と原因について
代謝ストレスという概念についてご存知ですか?この概念は生物の成長に伴うプロセスであるのと同時に、人の筋肉量を増やす(筋肉を成長させる)ある要因に関わってもいます。したがって、これは筋肥大に繋がるプロセスだということです。
筋肥大とは筋肉の成長のことを言います。つまり、筋肉のサイズか、筋肉を構成している筋原繊維(アクチンフィラメントとミオシンフィラメントから成る繊維)の数、あるいはその両方が増大することです。では、代謝ストレスに関してそのほかに何を知っておくべきなのでしょうか?なぜそのようなストレスが生じ、どのような影響があるのでしょうか?、また、筋肉量を増やすだけで十分なのでしょうか?それ以外にも私たちが取り入れられる手段はあるのでしょうか?
“私は食べ物が大好きなので、代謝がもっと早く進めば良いのになぁと思う”
-マイケル・マッキンタイア-
代謝ストレスと筋肥大
冒頭でお伝えしたように、代謝ストレスとは筋肥大を容易にする成長プロセスです。筋肥大というのは、ボディビルダーや日々筋トレをしているような人々が追求しているものだと言うことができるでしょう。簡単に言えば、以下の過程を通して筋肥大を実現することができます。
- 筋損傷
- 代謝ストレス
- 機械的ストレス
機械的ストレスは筋損傷と炎症反応を引き起こします。これにより筋肉成長因子の放出が高められて、筋肉が大きくなるのです。
さらに、少なくともいくつかの研究により、機械的緊張状態を失わずに代謝ストレスを起こすことで、最大限に筋肉量を増やせるということがわかっています。
代謝ストレスはどのように生じる?
代謝ストレスは、筋肉や特定の筋群への負荷が高まった時に生じ、漸進的な筋成長を増大させます。
化学レベルで起こること
筋肉に負荷がかかると、嫌気性解糖というプロセスが始まり、これによりアデノシン三リン酸(ATP)というトレーニングに必要なエネルギーが作り出されます。このプロセスが、嫌気状態(酸素が十分な量存在していない状態)でもグルコース分子から筋収縮に必要なエネルギーを獲得することを可能にしているのです。
なぜこのようなことが起きるのでしょう?それは、人がこのエネルギーを欲するスピードが、グルコースが酸素によって酸化するスピードよりも速いからです。したがって、このような嫌気性プロセスは欠かすことができません。
代謝ストレスと代謝産物の蓄積
具体的には、エクササイズによって引き起こすことのできる代謝ストレスは、代謝産物が蓄積した結果生じるものだと言えます。代謝産物とは、栄養素の分解によって合成される化合物のことです。
これらの化合物には、特にトレーニング中に必要なタイプのエネルギーを身体に提供するという役割があります。そしてこの全てが、筋肥大反応を引き起こすのです。
代謝ストレスというプロセスを通して蓄積される主な代謝産物としては、乳酸が挙げられます。これは、酸素供給が不十分な条件下で体内組織によって合成されるグルコース代謝物です。このプロセスで生成される代謝産物には、そのほかにリン酸塩や水素、グルコース代謝物(嫌気性解糖)などがあります。
影響
では、これらの生成物が体内に蓄積されると何が起きるのでしょうか?Takaradaらによる2000年の研究によれば、この蓄積によって複数のタンパク同化ホルモンの、つまりテストステロンとソマトトロピン(STHまたはGHとも呼ばれる成長ホルモン)とインスリンの分泌が増大し得るのだそうです。
また、Ebbelingらによる1989年の研究では、老廃物が増えるとエネルギー基質(ATP)の欠乏を伴う筋損傷が引き起こされる可能性があることがわかりました。
反復の重要性
動作の反復は、アスリートが、特にボディビルダーたちがトレーニングセッションの間繰り返し行うものの一つです。さらに、彼らはそれをかなり強いレベルで行います。そのような過酷なトレーニングをすると体内で何が起きるのか、気になりませんか?実は、必要な酸素量が供給される量を超過してしまうのです。
事実、低酸素状態、つまり特定の筋細胞で酸素が不足している状態こそ、一定の間隔でエクササイズを反復することが筋成長あるいは筋肥大に繋がるという事実を説明する中心的要因である、という意見もあります。
このような理由から、代謝産物の蓄積を増やしてそれに対する同化反応を得たいのであれば、エクササイズ中は休憩時間を数分間に減らすなどして動作の反復を実現するのが良いでしょう。そうすれば、達成される筋肥大もより大きなものとなります。
最終考察
ご覧のように、筋肉量を増やしたい、あるいは筋肥大を実現させたいのであれば、代謝ストレスだけでなくそのほかのプロセスにも頼ることができます。その中でも、筋肉の緊張状態を作り、筋成長を促すのに十分な度合いの筋損傷を引き起こすといった手段が有効でしょう。
代謝ストレスは、筋肉サイズの増大がなぜ起きるのかを部分的に説明してくれるような成長プロセスです。今回は、このプロセスの仕組みのほんの一部を学んでいただきました。しかし、最も健康的かつ効率的なやり方でトレーニングがしたいのであれば、このテーマを専門に扱うプロの元を訪ねるのが一番でしょう。
引用された全ての情報源は、品質、信頼性、時代性、および妥当性を確保するために、私たちのチームによって綿密に審査されました。この記事の参考文献は、学術的または科学的に正確で信頼性があると考えられています。
- Ebbeling CB, Clarkson PM. Exercise-induced muscle damage and adaptation. Sports medicine (Auckland, NZ). 1989 Apr;7(4):207-34. PubMed PMID: 2657962. Epub 1989/04/01. Eng.
- Takarada Y, Nakamura Y, Aruga S, Onda T, Miyazaki S, Ishii N. (2000). Rapid increase in plasma growth hormone after low-intensity resistance exercise with vascular occlusion. Journal of applied physiology (Bethesda, Md: 1985). Jan;88(1): 61-5. PubMed PMID: 10642363. Epub 2000/01/21. Eng.