適応性サイコパス:共感と暗闇

犯罪に手を染めない「適応性サイコパス」と呼ばれる人の感情についての研究が進んでいます。その結果は、驚くべきものです。
適応性サイコパス:共感と暗闇

最後の更新: 15 1月, 2021

アメリカ心理学会(APA)が行った研究では、適応性サイコパスの中には共感する力を持っている人もいるということが示されました。精神病質性を持つとされつつ、犯罪活動に関わっていない人には、社会に適応する能力が高いこともあるということが認められたのです。

「サイコパス」という言葉がいまだに生む論争についてここでは触れません。そうではなく、サイコパスの人が持つ相反する特性に焦点を当てたいと思います。

サイコパスの分野の研究は二つに分けられます。一つは、基本的にサイコパスにはいかなる形の適応特性もありえないという考えを支持しています。そしてもう一つは、サイコパスの人もある程度の適応性があるという考えです。

これらの二つの観点を基礎とし、精神病質性の特性を調査するツールが作られました。実施された研究の中で最も包括的なものが Guillaume Durandの『 The effects of psychopathic traits on fear of pain, anxiety, and stress(痛みの恐怖、不安、ストレスにおける精神病質性の影響)』です。これは、適応性サイコパスがどのように感情を処理しているかを説明づける革新的観点です。

適応性サイコパス:定義の拡大と改良

529人を対象とした一連の心理テストが行われました。精神病質性、痛みへの恐怖、不安、ストレスを測定したのです。

支配性と衝動的反社会性という二つの精神病質性を測るテストが使用されました。支配性とは、大胆さや勇気に関係し、衝動的反社会性とは自己中心性、責任、衝動性と関連するものです。

その結果、支配性の点数が高い人は、痛みへの恐怖、不安、ストレスが少ない傾向にあることが分かりました。反対に、衝動的反社会性の高い人は、不安やストレスレベルが高いことが示されました

研究結果

メディアが表すサイコパスの定義(道徳心のない大量虐殺)は、真実とは幾分かけはなれているということが、この研究からわかります。このような人が存在するのは間違いありませんが、不適応性より適応性を備えている人もいるのです。そのため、こういった人は社会でうまく生活することができます。

精神病質性や恐怖、ストレス、不安との関係性は、使用するモデル(適応性を認めるか認めないか)に依存します。専門家によるサイコパスの診断には、ヘアのPCL-Rチェックリストがよく使用されます。ですが、このテストは不適応行動パターンや特徴に焦点を当てたものです。

サイコパスの研究に適応性や不適応性を含めることの重要性

この研究は、サイコパスの分野の研究結果の不一致を探る目的で行われました。主な不一致は、テストにおける適応性が、痛みへの恐怖、不安、ストレスと負の相関があり、不適応性においては反対であった時に見られました。

この問題を解決するため、Guillaume Durandは、適応精神病質性を限定的に測る「Durand Adaptive Psychopathic Traits Questionnaire (Durand, 2017; Journal of Personality Assessment)」を作りました。サイコパスとみられる人にこれを用いることで、適応性サイコパスと不適応性の人を分けることができるのです。

適応性サイコパスと共感

共感は利他的に有用ですが、 マキャベリズムの考えにも使われます。人を評価し、利用するためには良い「情報」が必要とされるためです。

サイコパスは人の役に立つ可能性も持っています。例えば、ライフガード、保健従事者、軍隊などハイリスクな状況と向き合う人など、高いパフォーマンスが要求される場などに向いています。このような状況で感情を背景に押しやり、ある意味「冷たく」シンプルな判断することができるのです。

Mihailides、Galligan、Bates(2017)はこれを「適応性精神病質」と呼びます。これは、共感的情報が有益な精神病質メンタルプロセスと合わさった「隔離ベクトル」のことです。これは例えば、人の価値観や信念が対立するような脅威に対応する際などに役立ちます。

共感には認知的共感と情緒的感があります。この二つは独立していますが、一緒に機能する傾向があります。

認知的共感は、別の観点から物事を見る力です。一方で情緒的共感は、人の気持ちを汲み取る力です。ナルシシストには認知的共感が多く見られます。

適応性サイコパスは社会で役立つ

適応性サイコパスが持つ特性には進化的利点があります。そうでなければ、これほど多くはみられないでしょう。

精神病質的思考を持つ人の中には、それがアドバンテージになる人もいます。抑制せず人より攻撃的な視点を提供することで、コミュニティの存続にとって重要な存在になりえるです。さらに、何かを果たすためにより効率的に集中することができます。ですが、それには非常に繊細なバランスが必要になります。

適応的サイコパスの人は他人のモチベーションを理解するのに優れています。そこで、自分が関与すべきかそうでないかを判断する力を維持しつつ、人の決断を助ける必要があります。多様で適応性のあるコミュニティを育てるために、様々な集団の個人がバランスを保つことに貢献できるのです。

より強い共感力とより暗い特徴が合わさることで、人間関係の質が高まることもあります。ですが、適応性サイコパスの人がある程度の共感を示すのを見ると、その疑問の残る特性を見過ごしてしまう可能性もあるのです。しかし、彼らにそのような力がないのであれば、歓迎することはできません。

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  • Hall, JR y Benning, SD (2006). El psicópata “exitoso”: manifestaciones adaptativas y subclínicas de la psicopatía en la población general. En CJ Patrick (Ed.), Manual de psicopatía (p. 459–478). La prensa de Guilford