アプリシエイティブ・インテリジェンス―価値を認める

15 6月, 2020
アプリシエイティブ・インテリジェンスは、とても有効な精神的スキルです。自らの強さと価値を認識する助けになってくれます。また、私たちの周りに存在する様々な機会と繋がる助けにもなるのです。

「アプリシエイティブ(真価の分かる、価値を認める)・インテリジェンス(知能)」というコンセプトは、ヴィクトール・フランクルが著書『夜と霧』の中で説いた考えに似ています。これは一般的に、逆境の中でも機会を見つけることが出来る能力を意味します。またその能力を使うために、人間の価値を認めることが出来ることでもあります。困難や逆境の中で、自らの道しるべとしてその能力を使うのです。

このコンセプトは、テキサス大学アーリントン校のトージョー・J・タッチェンケリー教授が執筆した『Appreciative Intelligence: Seeing the Mighty Oak in the Acorn』(未訳。「アプリシエイティブ・インテリジェンス:ドングリの中に力強い楢の木を見出す」の意味)の出版を受けて、2006年に台頭し始めた考えです。革新を推し進め、成功もしくは仕事で必要な打たれ強い姿勢を作り出すためのツールです。

近年、「ブラックスワン(英語でコクチョウを指す言葉。あり得ないと思われいた危機的状況が現実になることを指す表現)」と呼べるような出来事が次々と起こっています。哲学者のナシム・タレブが「人間の安定性を揺るがす予期しなかった出来事」であると定義するこのような状況が、どんどん当たり前になってきています。これは私たちに試練を課して不安感をあおっていくような状況です。

それまで当たり前だと思っていたことが一瞬で変わってしまうような出来事ですが、私たちはそのような状況に対する準備が出来ていません。いかなる試練であっても、やみくもに戦略を見つけようとしたのでは、それに直面するための第一歩になりません。自分がコントロールできないことから逃げてしまってもダメです。自らの問題に直面し、むしろそれを逆手に取るための第一歩は、自分の姿勢を変えることなのです

それは、私たちの姿勢次第で、自分のベストの部分を引き出すことが出来るからです。これは自分の最高の部分をしっかりと見つめ、自らの最も価値がある部分と繋がることができる眼差し、つまりアプリシエイション(自らの真価を認める、感謝すること)を通してのみ達成可能なのです。

アプリシエイティブ・インテリジェンス

アプリシエイティブ・インテリジェンスの3つの要素

アプリシエイティブ・インテリジェンスは、理論上は誰もが持っている能力です。人はどんな時にでも応用することが出来る可能性を持っています。上述した通り、この考えはトージョー・タッチェンケリー教授によって2000年代前半に提唱されています。それは、成功した人々や企業に共通するものは何かを理解しようとして行われた、徹底的な調査を通してたどり着いた結論でした。

変化と発展のプロセスのエキスパートであるトージョー教授は、アプリシエイティブ・インテリジェンスは3つの要素からなっていると言います。

  • 「今」に集中する。チャンスを見つけるためには、直感が良く澄んでいることが基本であり必要不可欠です。複雑な現実の中で何に注目し、何を利用し強化していくべきかを見極めるためです。過去に何が起こったとしても、本当の機会とは今ここであり、それを大切にするべきなのです。
  • 一つ一つの状況のポジティブな面を見る努力をする。これは、幻想的で単純な楽観主義のことを言っているのではありません。困難や逆境を無視したり目を背けるのではなく、それらを認識し、受け入れ、理解しようとします。そして最高の自分を引き出すために、自分の価値と勇敢さを知り、それを使って戦うための武器、大きく跳ね上がるためのトランポリンを作り出すのです。
  • 現実的に将来を見据える(ただし、希望を与えてくれるようなゴールを常に持つ)。個人であれ企業であれ、前進したいのであれば目標を設定することが必要です。これらの目標は日々のエンジンとなるべきもので、そこにモチベーション、献身、希望を注ぎ込むことで、前に進む助けとなります。

個人の価値としてのアプリシエイション

2000年代初めにアプリシエイティブ・インテリジェンスが提唱されてからというもの、新しい理論が次々と生まれ続け、ビジネストレーニングとして利用されてきました。組織を改革して新しくし、市場の中に売り込んでいくことを特に重視した書籍も存在します。

このように、ビジネスや組織のレベルにとどまらず、全ての人が興味深くて癒しをもたらしてくれるこの理論について知っておくといいでしょう。これを自らの価値観として取り入れれば、大きな助けとなってくれます。次に、そのキーポイントを見ていきます。

アプリシエイティブ・インテリジェンス

アプリシエイティブ・インテリジェンスの育て方

  • アプリシエイティブ・インテリジェンスは意識的な精神活動です。自分自身と自分を取り巻くものと感情的につながることで、眠っている性質、つまり自尊心や自信を呼び覚ますのが目的です。
  • 一つ一つの物事、人、経験、状況のなかの価値を認識するために、無関心や恐怖と言った感情を、いったん脇にやることです。
  • ネガティブさ、逆境、時には悲劇的な状況も受け入れなければなりません。しかし、それらに服従するのではありません。そんな中にでも現れる機会やポジティブなことを選ぶ(またはその真価を認める)ようにしなければなりません。
  • 毎日の繰り返しの中に、幸せやウェルビーイングのために変えられることは沢山あります。

最後に、アレクサンドル・デュマ・ペールは次の言葉を残しました。「人生とはあまりに不確定なものであるから、たとえどんなに小さなものでも、幸せのいかなる瞬間も最大限に利用するべきだ。」人生の中のこのような一つ一つの感情、可能性、機会の瞬間を認識して活用できれば、どんな時にでも大きな違いを生むことが出来ます。

あなたも、この興味深いアプローチを取り入れて利用してみてください。ぜひその変化を経験してみてくださいね。

  • Verma, N., & Pathak, A. A. (2011). Using appreciative intelligence for ice-breaking: A new design. Journal of Workplace Learning23(4), 276–285. https://doi.org/10.1108/13665621111128682