アーロン・ベックと鬱の新しい統合モデル

2017年11月21日 in 心理学 0 シェア済み
アーロン・ベック

鬱とその治療について革命的な理解をすることで知られる有名な認知心理学者のアーロン・ベックは最近、「クリニカル・サイコロジカル・サイエンス」にて記事を発表し、「A Unified Model of Depression: Integrating Clinical, Cognitive, Biological, and Evolutionary Perspectives(鬱の統一モデル:臨床的、認知的、生物的、進化的観点の統合)」と呼ばれる彼の理論を更新しました。この記事で、彼は臨床的、認知的、生物学的、進化的観点に基づいた鬱の統合的モデルを提案しています。

ペンシルベニア大学の教授であるベックと彼の同僚であるキース・ブレドマイヤーは、この新しいモデルを通してより包括的で一貫した鬱の説明をするために臨床心理学、認知心理学、生物心理学、そして進化心理学の全ての分野における発見を取り入れようとしてきました。

これらをもって、ベックらは鬱の症状と自然な成り行きに焦点を当てた新しいモデルを確立しました。何よりも、この理論は鬱から回復する人の生まれつきの傾向性を強調しています。この記事では、この鬱の新たな統合モデルが何を意味し、どういうことであるのかということを説明したいと思います。

「鬱に関する全ての発見は、一緒にすることでその複雑な特徴を説明する包括的なモデルを生むことができる。」
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 脳の神経反応

鬱の統合モデルは何を意味するのか

この鬱の統合モデルは、人的資質を喪失する感覚への反応を鬱が象徴している、という仮説に基づいています。

これらは全て、家族の一員、パートナー、または友人の喪失(死とは限りません)が特に鬱のリスクを上げることを意味しています。つまり、この喪失が、破滅的で乗り越えられない喪失として見られる可能性が高くなるのです。

こうした喪失の後、高められた生理反応と認知的傾向が、こうした一般的に鬱のリスクがある人に、自分自身や世界、未来について「負の認知三元」をするように導きます。これは、昔からネガティブな思考として認識されてきた心の働きです。

こうした考えは、悲しみ、無快感症、罪悪感といった感情を解き放ちます。これら全ては鬱の特徴であると共に、引きこもりや無活動状態といった生理的また行動的反応の特徴でもあります。

こうした無活動状態が喪失によって引き起こされることは理にかなっています。それは、人が資質を喪失した感覚で苦しんでいる時にエネルギーを温存しようとする結果なのです。言い換えれば、無活動状態は防御目的があり、エネルギーを節約し、他の必要性が脅かされる可能性を避けるという役割を担っているのです。

時と共に、エネルギーを温存することを含む「鬱のプロセス」はこうしたネガティブな考えを強化させていきます。鬱病患者が孤立していくにつれ患者は日々における反応が弱まっていきます。

しかし、新しい情報がわいてネガティブな傾向性を「修正」したり状況自体が変わり、活力に必要な資質を再度確保する時、このプロセスが止まるというのは重要な事実です。友人や家族によるサポート、臨床心理士による手ほどき、そして生物的治療(例えば抗うつ剤)などの外的要因は、鬱のサイクルをつぼみの段階で摘み取る助けとなります。

手のひらいっぱいの飲み薬

この論文の最後で、ベックとブレドマイヤーは「このモデルが鬱の治療や予防への新たな(かつ、より統合的な)アプローチの更なる発展を促すことになる」ことを望むと述べています。つまり、彼らの統合モデルが、新たな発見と共に発展していくかもしれない、ということです。

統合モデルは鬱の認知理論とどう違うのか?

もしあなたがアーロン・ベックによる鬱の認知理論にあまり馴染みがないのであれば、「統合モデル」と「認知理論」の2つを区別する明確な点が少なくとも2つあることを知っておくとよいでしょう。

その一つは、エネルギー保存の形として鬱病患者に特有の、「無活動」と「孤立」に戻るという「鬱のプロセス」です。この「保存政策」は感情の喪失という世界に溺れていると感じた結果であり、そのため、新たな状況に適応しています。

こうした進歩が認知行動療法の偉大な成功を新たに説明しています。治療の要として行動を活性化させることに基づいた療法の成功については特にそうです。こうした療法は、鬱によって引き起こされた無活動状態のプロセスを止める手助けとなります。

第二の点は、鬱の実験参加者の生物学的反応と関係しています。つまり、こうした人達が体験する喪失によって引き起こされた生理反応です。従って、鬱の効果的な治療として抗うつ剤の投薬の機能を説明しているのです。

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