ブローカ野と言語産出

11 6月, 2020
この記事では、言語に関わるブローカ野の役割を理解するために知っておくべき2つの基本についてお話します。ひとつ目は、解剖学的・機能的側面に関してです。そしてふたつ目は、ブローカ野の損傷により起こるブローカ失語についてです。

言語産出とは、言語と呼ばれる記号のようなシステムを使い、コミュニケーションをとる能力です。この能力は人類としての進化に役立ってきました。私達は、有効なコミュニケーションをとることが可能なので、共に働き、複雑な社会を作ることができています。また社会自体も、非常に敵対的な世界での生存において重要な役割を担っています。脳内にあり、この能力の生物学的基礎となっているのが、ブローカ野です。

言語を産出する神経学的能力の主要なポイントは、これが片側にのみあることです。言語に関する脳の構造の多くが左脳にあるのです。

しかし、一部の研究によると、ジョークや実用的考え、皮肉は右脳から来ているそうです。とはいえ、言語産出に関わるブローカ野が左脳にあることは変わりません。具体的には、ブロードマンの理論における44野に位置します

この記事では、言語に関わるブローカ野の役割を理解するために知っておくべき2つの基本についてお話します。ひとつ目は、解剖学的・機能的側面に関してです。そしてふたつ目は、ブローカ野の損傷により起こるブローカ失語についてです。

ブローカ野の解剖学と機能

研究が進むにつれ、言語産出に関わるのはブローカ野のみではないことが分かってきました。ブロードマンの44野に加え、45野、47野、そして、6野の大部分も重要な役割を果たしています。そのため、ブローカシステムと呼んだ方が正しいかもしれません。

ブローカ野 言語

ブローカシステムはさらに、三角部と弁蓋部にという2つの大きな構造に分けられます。三角部はブローカ野の前部にあり、弁蓋部は後部に位置します。

解剖学的にいうと、このシステムはウェルニッケ野と密接に関係しています。ウェルニッケ野は、主に言語の理解を司ります。そして、ウェルニッケ野とブローカ野の2つの領域は、弓状束と呼ばれる神経の束により繋がっています。

次に、ブローカ野の機能をご紹介します。

  • 話す・書くという言語行動の産出
  • 書記素、音素、単語を使い、文法や形態を組立てる
  • 発声器官を統制し、発音を調節する
  • 韻律、声のトーン、話のリズムを調整する

これらの機能は言語産出の柱になっています。コミュニケーションをとるのに十分な言語の使用ができるのは、これらがあるためなのです。そのためブローカ野に問題が生じると、言語や伝達に深刻な影響がでます。次に、ブローカ野の損傷によって起こる独特な症状についてお話します。

ブローカ失語

ブローカ失語は、ブローカ野の損傷により起こる言語産出障害です。話し方がゆっくりになり流暢ではなく、強制されたような話し方が特徴です。ブローカ失語の患者の発音は聞き取りにくいものですが、メッセージとしては意味を成します。そのため、ブローカ失語の人には意味論的な問題はないと結論づけられています。

ブローカ野 言語

ブローカ失語を患う人には、比較的言いやすいタイプの単語があります。例えば、意味のある単語より、機能的な単語(an, the, some, above, ofなど)が難しいなどです

なぜこのようなことが起こるかと言うと、基本的に機能的な単語は文法のためにあるのであり、ブローカ野がこれに関係しています。一方で、本人に意味論的な問題はないため、意味のある単語の方が発言しやすいのです。

ブローカ失語を理解するためのもうひとつのカギは、言語理解能力は変わらないという点です。ブローカ失語を抱える人は、字を読んだり誰かの話を聞く上では、何も問題ありません。この神経学的プロセスに対応しているのはウェルニッケ野だからです。

ブローカ野は主に言語産出を司るということを知っておくと良いでしょう。この部位は他の領域とも繋がっていますが、他は正常に機能しているようです。

さいごに、幼い頃に脳の言語中枢を損傷した場合、変わったことが起こります。私達の脳は非常に柔軟です。そのため、左脳を損傷した場合、言語が右脳で発達することがあるのです。

言い換えると、言語が完全に発達する前に脳の損傷を受けたからといって、もうどうしようもないということではありません。脳が変化を起こし、正常あるいはほぼ正常に成長することが可能なのです。

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