腸内細菌は感情に影響を与える?

· 2019年2月10日

Mens sana in corpore sano」(健康な体にある健康な心)という言葉は、何世紀にも渡り使われています。ここで私達が与える意味は、元のものとは大きく異なりますが、多くの様々な状況で、健康な体は健康な心の「住まい」になるという研究結果があります。この理論を後押しする証拠の中でも、ここ数年重要なものになっている研究があります。この研究では、腸内細菌、脳、感情の関係を見ています。

研究者が感情と腸内細菌の驚くべき関係を発見したのは、それほど前ではありません。実際、腸内細菌が、研究者の間で大きなな話題になったのは、ここ数年です。

 

腸と脳の密な関係

お腹の中で蝶々が舞っているような感覚、という表現が欧米ではよく使われます。最新の研究で、この表現にまつわる真実が明らかになりました。21世紀始めから、科学者が腸にある細菌と心の健康の関係を調べていた結果です。

これは、新たな分野の研究というわけではありません。20世紀はじめ、この繋がりに関して、医者や科学者が多くを記しました。腸の中、特に、そこにある害を及ぼす細菌が疲労やうつ病、神経症に関わっている可能性があることに関し、議論が行われていました

腸内細菌が脳に与える影響に関する初期の仮説や研究は、疑似科学として科学者から否定されていました。ところが、15年程前、腸と脳の繋がりに立ち戻り始めたのです。研究者がこれに関し調査を続けると、脳と内臓間の伝達は双方向であることが分かってきました。

脳は、免疫だけでなく腸内機能にも影響を与えます。この機能は、腸のマイクロバイオームの構成を変化させます。また、腸にある細胞は、神経活性化合物、神経伝達物質、その他脳に働きかける化合物を生成します。

マウスを使った実験では、これらの化合物の一部が血液脳関門の浸透性に影響しうることを研究者は発見しました。血液脳関門は、血中の害を及ぼす物質の脳への侵入を防ぐためにあります。

 

腸内細菌と気分

数年前、科学の世界で、腸内細菌がもつ感情への具体的な効果に関する研究が始まりました。そして、腸内の微生物が、多量の化学物質を分泌していることが分かったのです。

それには、神経が伝達する際や気分を調整する際に使うのと同じ物質があります。ドーパミン、セロトニン、γアミノ酪酸(GABA)などです。重篤なうつや不安と同時に発生する腸疾患に、大きく関係する物質であることが分かりました。

さらに、多くの神経化学物質の供給が、腸に由来していることも分かっています。化学信号が食欲や満腹感、消化を調節するのが腸なのです。ところが、この特殊な化学物質の放出における微生物の役割に関する研究が始まったのは、つい数年前になってからです。

 

脳と腸内微生物叢の相互作用の役割

最近、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者たちは、気分や行動と関係する脳の部分に働きかける、腸内の微生物叢を発見しました。微生物叢の組成と関係する行動学的、神経生物学的違いが健康な人で明らかになったのは、おそらくこれが初めてでしょう。以前、これらの研究は、動物の分野ですべて行われていました。

腸内細菌と感情

脳と腸内微生物叢の相互関係は私達の健康と行動において重要な役割を果たすことが、研究により確認されました。先の研究は、微生物叢(腸内のマイクロバイオームの集団)が行動や感情に影響を及ぼしうることを提示しています。

しかし、腸から脳、または脳から腸への影響はあるのでしょうか?腸が脳やその発達に影響を及ぼすのか、また、その反対も明らかにはなっていません。これはまだ新しい分野のため、因果関係の結論を出すことは簡単ではないと、研究者は警告します。これに関する大規模な研究は、まだ途中なのです。

 

腸内細菌の重要性

腸内細菌の脳への影響の研究は、今も続いています。新たな発見や明らかになっていないことが、まだたくさんあります。これまでの様々な調査の結果、次のように説明されています。

  • 腸内の微生物叢は多く、健康的な代謝や脳の機能にとって重要である
  • 腸と脳の伝達には神経的なつながりも含まれている
  • 腸内細菌叢は、早期発達において重要であり、脳のストレス回路の「配線」に影響を及ぼすことがある
  • プロバイオティクスや「良い細菌」は、気分に関わる症状に有益な影響をもつ

微生物叢が、健康や気分において重要な役を果たしていることは間違いありません。複雑で、多面的な伝達系の一部であると考えましょう。脳の健康的なバランスを保つことが欠かせません。研究結果を待つ間、体を大切にし、体から送られてくるメッセージに耳を傾けましょう。

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